第5話 紅い月に照らされるシラトス城①


……………………………………………………………



ルクシ君との共同生活が始まって

2週間が経った…


彼との生活は

なんだか毎日が新鮮で…

充実した日々で楽しい


正直に言うと……

前の生活には戻りたくない位に…


依存しては駄目だと分かっている


でも!!

あの子は私の癒しなんですもの!!


お仕事で疲れきって

自室に戻った時なんて


『おかえり おねえちゃん お疲れ様』って

労りの言葉をかけて、

可愛い笑顔で私に駆け寄り

抱きしめてくれる


今じゃ仕事はルクシ君の為に

働いているもんだ


あとね、今まで一人ぼっちだった

食事や就寝のなんて

今はルクシ君がいて寂しくない


食事では途切れる事のない

楽しい会話に


就寝ではルクシ君の為に

絵本の読み聞かせしたり、

彼を抱きしめて寝る


そういえば…

お風呂は一度っきりだったな


ルクシ『お…おねえちゃん 一緒に

僕とお風呂に入らない?』


『うん いいよ! 』

(私をお母さんがわりにしているのかな

信頼されて嬉しい!)


ルクシ君から誘ってくれたんだけど

案の定、自室の浴槽は狭いので…

2人で一緒に入るには ぎゅうぎゅう だったけ


『ごめんね 浴槽狭くて……って

ルクシ君?! しっかりして!!』


ルクシ『……でかい…////』


その後、ルクシ君は のぼせて倒れて……

熱を出して数日間 寝込んで…


「……………」


思い返してみると

……あんな事が起きれば、

一緒に入りたくなくなるよね


トラウマにならなきゃ

いいんだけど……


…残念だけど一緒にお風呂は諦めよう



少し溜息をつき、

今日の掃除場所に向かおうとした時、



???「オーロラさん 」


誰かに声をかけられた。



振り向くと…


「アッサムさん!」


私の唯一の親友

私と同じメイドの【アッサム・チャイ】さん

だった。


彼女の種族は妖精、

赤みかかった美しい白い羽根に

鮮やかな赤色の髪、

暁色の瞳を持っていて

女の私でも見惚れる美人さん


でも……


アッサム「あっ………」


「アッサムさん危なっ……」


ドンガラガッシャーン!!!


彼女はどこか抜けていて

天然だ


あちゃー…派手に転んじゃったけど

大丈夫かな?


「アッサムさん?……平気?」


アッサム「あはは!平気 平気 大丈夫!」


…と言いつつ

顔面強打したのか彼女の鼻から

鼻血が出ていた


「全然大丈夫じゃないよ!

はいっ私のハンカチで鼻を押さえて」


アッサム「ありがとう オーロラさん

そうだ!急ぎの伝達だった」


「どういたしまして

急ぎの伝達ってアッサムさん?」


アッサム「坊っちゃまと領主様が

ルクシ君の件についてお話があるって!」


「坊っちゃま達が…ルクシ君について…

何だろう?」


アッサム「すぐに領主様達の部屋に来て欲しいって…」


「わかった 教えてくれてありがとう

アッサムさん 行ってきます」


アッサム「行ってらっしゃーい!」



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…………………………………


「はぁ はぁ…遅れたら領主様達に

怒られちゃう」



そうならないよう 出来る限り

急ぎ足で領主様の部屋へ向かう


ルクシ君の事についての話って

何だろう…


…もしかして、新しい住処が

見つかったとか?


それはそれで悲しいけど

ルクシ君の幸せの為だ

喜ばないと!


……………………………………………………


……………………………


………………………



カツ カツ カツ


靴音が響く中、

薄暗い長い廊下を歩き続け

領主様の部屋に着いた。


ドアの目の前に立った時

ふと思った。


「最近、領主様達にお呼ばれする事が多いな…」


私の説教ではなく

主にルクシ君の事で……



ルクシ君も私と同じ人間だし

領主様達が嫌っている事は分かっている


けど…


なんであんなに引き攣った顔に

なるんだろう…


まるで怯えているような…


……そんなに人間の子供が

苦手なのかな?




領主「オーロラ! そこにいるなら

さっさと中に入れ!」


いけない!考え事しすぎて

ぼーとしちゃった

早く中に入らないと


「申し訳ございません!失礼します」


コン コン コンとドアを叩いてから


ドアノブを手で回し、

ガチャと音を立て

領主様の部屋に入った


「遅くなり申し訳ございません

領主様、坊っちゃま…」


頭を一度下げ、お詫びの言葉を述べ

顔上げて2人の顔を見た時、

私の目は点になった。


「………領主様、坊っちゃま

何か良い事でもございましたでしょうか」


大抵、私が呼ばれる時は、

機嫌が悪い顔か怒っている顔に

なっているのに…


今回は珍しく、

嬉しそうにニコニコと笑っている。



領主「聞いて喜べ!オーロラ

お前、やっとあの子供からおさらば

出来るぞ!!」


「……えーと…どう言う事でしょうか」


坊っちゃま「シラトス城の児童相談所に

あの子供の事を手紙で送った所、

すぐに連れて来いだそうだ!」


「シラトス城の児童相談所…

もしかして…ルクシ君の新しい住処が

見つかったのでしょうか…」


領主「わからんが、もしかしたら

そうなのかも知れん!

今回ばかりはお前に同情する

良かったなオーロラ」


坊っちゃま「あの恐ろしい餓鬼と

2週間も殆ど一緒だったもんな

苦労したよ…お前……」


「そんなっ…苦労だなんて…

私がルクシ君を見るのは当たり前です

あの子を最初に見つけたのは私ですし…

助けたなら最後まで責任を持たないと…」


……苦労だなんてしなかった

むしろルクシ君との生活は

楽しかった。


そっか…


シラトス城に呼ばれているなら

ルクシ君のお別れが近いって

言う事なのか……


…良かった、ルクシ君に新しい住処が

見つかって


ダジュナール家に居たまんまじゃ

子供のルクシ君には悪影響だもの


次はちゃんとした心が温まるような

優しい住処でありますように…


ツキン!(心が痛む音)


……でも何でかな

胸が少し痛い…


ルクシ君に新しい住処が見つかって

嬉しいのはずなのに、


お別れが寂しいだなんて…



領主「最後まで頼んだぞ

ちなみにあの子供をシラトス城へ

連れて行くのは明日だ」


「明日?!…畏まりました

オーロラ・オリベ、責任持って

ルクシ君をシラトス城へ連れて行きます」


坊っちゃま「よろしく頼むな!

あー…ようやくあの餓鬼から自由になれる」


そんな…

明日だなんて急すぎる

……もうちょっと居て欲しかったけど


でもそれは無理だと分かっている


これ以上、私のせいで領主様達に

迷惑をかけてしまうから


だから…


今日がルクシ君と一緒に生活するのが

最後なら…


いろんなお話をして、

一緒にご飯を食べて、

一緒に寝て…


今日だけは私なりに大切にに過ごそう。




……………………………………………………



……………………………………




……………………………




3人は気付いていなかった。


この時…



ルクシ「明日シラトス城に

僕を連れて行く…

あの親子…余計な事をしてくれたな…」


部屋の外では

ルクシが立っていた事に…


ルクシ「…まあ いいさ 丁度良いタイミングだ

オーロラの事を伝えられるし…

ダジュナール家の悪事だって…」


何かを企むような不敵な笑みを浮かべ



ルクシ「明日が楽しみだ」


静かに一言呟き、

オーロラの自室へと戻っていた。









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