第3話 お洋服を探しましょう
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(ルクシside)
チチチッ
朝になった。
鳥のさえずりに
窓から差し込む太陽の光、
「ん……朝……そろそろ起きなきゃ…
ジンジャーに怒られる……」
眠たいまなこを手でさすり
パチッと目を開けたら
「………っ///!!」
声が出そうになった。
なぜなら、
オーロラの可愛らしい寝顔が目の前にあり、
すーすーと寝息を立てているから。
しかも、寝着ははだけていて、
胸元が見えてしまっている。
思わずバッと顔を背け、
胸元を隠すように毛布をかけ直した。
そうだった…
ここはダジュナールのお屋敷だっけ…
…3日前、訳があり森に彷徨って…
飢えを凌ぐため、ダジュナール家の屋敷に、
勝手に侵入して従事者に殴られていた所、
彼女…オーロラ・オリベに助けられた。
僕の言った内容を疑わない心優しい彼女は、
「住処が見つかるまで私も協力する」と
言ってくれて、
事がうまく進み、
現在、彼女の部屋に居候して貰っている。
「……心臓止まるかと思った…
こんなの慣れない…
無防備すぎるよオーロラ…」
本当の7歳の子供だったら、
今の光景なんて、
なんとも思わないんだろうな
だけど僕はーーーだから、
意識してしまう
オーロラの方は僕の事は、
何とも思っていなくて…
…当たり前だ、彼女にとって僕は
7歳のか弱い子供だと認識しているから…
……でもちょっとは……
僕を意識してほしいな…
オーロラ「ふぁぁ……頬になんか、…感触が……」
「おねえちゃん おはよ」
意識させたくて、
彼女の頬にキスを落とし、
大人の笑みを浮かべて見た。
オーロラ「…………」
「おねえちゃん?」
オーロラは急に黙り込み、
キスを落とし頬を手で押さえ、
肩をブルブル震わせた
もしかして僕の事、意識し……
オーロラ「可愛い…癒される
じゃなくて!おはようルクシ君!」
「……………………」
分かってたつもりだけど、
…ぜんぜん意識してくれなかった
心が折れそう
だけど、オーロラ、これだけは言わせて
「可愛い」って言われるの
どんな年齢でも男は全く嬉しくないよ
(ルクシside終わり)
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朝、ルクシ君と2人で朝食を取った後、
メイド服に着替え、
ルクシ君に「行ってきます」と言って
いざお仕事へ!
まずは掃除から取り掛かろう
それから、お洗濯に………
そう言えば、ルクシ君…
朝食後から なんだか顔が赤かったような…
もしかして風邪?大丈夫かな…
休憩時間になったら、様子を見に行こう…
ルクシ君の事を気になりつつ、
掃除器具を取りに廊下を歩いていた所、
領主「オーロラ・オリベ!」
「!りょ領主様?! 奥様?!」
普段あまり関わらない、
領主様と奥様に呼び止められた。
「なななんでしょうか!(震え声)」
……緊張して声が裏返った。
何故なら、領主様達が私を呼ぶのは、
必ず私が何かやらかした場合だから!
…思い当たる事がいっぱいある…
ここ1ヶ月間では…
・間違えて坊っちゃまの服と領主様の服を一緒に洗ってしまった事。
・奥様に出すお気に入りの紅茶を切らし、
代わりにグリーンティーを出してしまった事。
・坊っちゃまを怒らせた回数10回。
・私の判断でルクシ君をこの屋敷に住まわせた事
……他にも色々…とやらかした
領主「オーロラよ お前が助けた人間の子なんだが…」
!!ルクシ君の事…
坊っちゃまには許可をいただいた筈なのに
もしかして、領主様と奥様は納得されていない…?
「領主様! 私の勝手な判断で
申し訳ございません
ルクシ君の住処が見つかるまで…
どうかっ……!」
領主「いや、私達は反対していない
息子から許可を貰っているだろ
私達が言いたいのは、あの子供の服装だ
あれはなんだ?形が不恰好だし、
女物の服装だろ」
「服装…あの…私の服を再利用して
裁縫した物でして……
申し訳ございません…
…不恰好ですよね…」
…家事の中でダントツに
裁縫が不得意な私…
自分では、上手くできたと思っていたけど、
他の人から見たら、全然駄目だったのね…
そう言えば、ルクシ君も
私のお手製の服を渡した時、
顔を引き攣っていたよね…
「ありがとう」って言って着てくれたけど…
うぅ…子供に気を使わせてしまった…
あとでちゃんと謝ろう
領主「オーロラ…なんて事を!
おおお主大丈夫か?!
あの子供を怒らせ…」
奥様「貴方!それ以上は言ったら駄目!!
私達が危なくなるわ!!!
こほん! いい?オーロラ…
これは私達の命令よ」
「はっ…はい……」
奥様「……お金は私達が払うから
午後はその子供と一緒に
服を買いに行きなさい」
「えっ……宜しいのですか?
午後のお仕事は……」
奥様「他の者に任せるわ
あと…絶対にあの子供を怒らせては
駄目よ!!」
「??……承知致しました………」
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…………………………………………………
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領主様達との話が終え、
現在はお部屋の掃除中、
私は先ほどの出来事の
領主様と奥様の対応に感動していた。
……だってあの2人、
今まで人の為にお金を使うなんて
一度もなかったから…
しかも私にも好きな服を買って良いって…
一体、どうしちゃったの?!
領主様…奥様…
……なんだか、私 嫌われていないのかな
気にかけてくれるのかな
そうだったら嬉しいな…
「………よし!」
…掃除が終わったら、
さっそく、ルクシ君に服を買いに行く事を
報告だ!
ルクシ君にちゃんとした服が買える
ルクシ君…喜ぶといいなぁ…
……………………………………
………………………
さっそく、ルクシ君に
お洋服を買いに行く事を伝えた。
ルクシ「えっ?ほんと お洋服かってくれるの」
話を聞いたルクシ君は
嬉しそうな表情をしたが、
ルクシ「……あっ……でも……」
しょぼんとした悲しそうな表情になった。
一体、どうしたんだろう?
「ルクシ君?」
ルクシ「……お金は…おねえちゃんが払うの?」
そういう事か!それで悲しそうな表情を
していたのね…
なんて優しい子なの!
こんな私の事を心配してくれて…
でもその点は大丈夫!
「大丈夫よ ルクシ君!
お金は領主様が払ってくれるって
だから心配いらないよ」
安心させる為、
にっこりと満面な笑顔を
ルクシ君に向けた。
ルクシ「……////……そっ…そうなんだ!
なら良かった!」
「ふふっ じゃあ、ルクシ君 さっそくだけど
お洋服買いに出かける準備をしよっか」
ルクシ「う…うん!」
頬を桜色に染めて はにかむ、
可愛らしい美少年…
なんだか、こっちまで
幸せをおそ分けした感じで
嬉しくなる。
良かったねルクシ君、
これで私のお手製の不恰好な服から
卒業だよ!
「服が売ってる場所は
【モジュール街】になるから…
ルクシ君はこれに着替えてね」
ルクシ「……この服は?」
「領主様と奥様が出かける際は、
この服に着てだって……
私の作った服はあまりにも不恰好だから
それを着て行ったら ダジュナール家は
面潰れだって…」
…自分で言うのもなんだけど、
結構心にグサっとくる…よ
この言葉…
ルクシ「 この服を着たら
おねえちゃんが作った服は
どおなるの…?」
「そうね…捨てるのは勿体無いから
…拭き布…小物として再利用かな」
ルクシ「…じゃあ!このまま僕が
持つ! おねえちゃんに渡さない」
「えっ…でも…ルクシ君が持ってても…」
ルクシ「…だって…この服…
おねえちゃんから貰った初めての物だもん
…嬉しくて……ダメかな…」
てっきり私の作った服、
嫌がっているかと思ってた
不恰好な服の裾をキュッと手で掴み、
取られまいと潤んだ瞳で私を見つめる
そんなに…気に入ってくれていたなんて…
「ルクシ君……
ありがとう、そう言ってくれると
頑張って作った甲斐が…
いいよ!持ってて」
ルクシ「やった…おねえちゃん…」
「ん?」
ルクシ「ありがとう…大好き!」
「……!ふふっ私もルクシ君が大好きよ
さあて、ルクシ君 準備が整ったら
モジュール街へ行きましょうか」
ルクシ「………うん!」
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………………………………
「ルクシ君ー!準備出来た?」
ルクシ「…準備できたよ」
ガチャ!!(ドアを開ける音)
ドアが開くと、
貴族の服装に身をこなした
ルクシ君が現れた。
あまりにもキラキラしすぎて
……どこかの貴族の坊ちゃんみたいだ
「うんうん…とっても似合ってるよ
じゃあ!モジュール街へ行こうか!」
ルクシ「…うん!」
ルクシ君は
私が差し出した手を掴み取り、
ルクシ「おねえちゃんとのお出かけ
楽しみ…」
私にふっと笑みを向けた。
…なんだか…
笑顔が大人びているような…
なんて…気のせいだよね
今はルクシ君の服探しに集中しなくちゃ!
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