第2話 共同生活が始まりました。

……………………………………………………


前回のあらすじ


綺麗な深緑の瞳をした、

美少年に出会いました。


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そして、今 私は

自分の部屋で彼の頬手当てをしている。


ルクシ「……っ…いたた」


手当てをしている最中、

ルクシ君はポツリ ポツリと

自分自身の事を話してくれた。


その内容は……


ルクシ君は奴隷であり、

主人の目を盗み、脱走に測った。


脱走には成功したが、

何も準備せずに脱走した為、

空腹になってしまい、

食料を探しに森を彷徨っていた所、

ちょうど この屋敷を発見した。


最初は物を盗むなんてと

躊躇していたが、

空腹と飢えに我慢できず、

屋敷に侵入して食料を盗み食いして

しまったと…


ルクシ「……ごめんなさい

おねえちゃんのご飯…抜きになってしまって……」


シュン…と落ち込むルクシ君、

その姿を見てなんだか可愛いなと

母性本能がくすぐった。


「気にしないで、ご飯は外に出て

食べれば済む事だから…


それよりルクシ君、よく頑張ったね

偉いよ…」


こんな小さな子供が…生きる為に

命からがら逃げて…森に彷徨って…

苦労したんだろうな


感情あいまって思わず、

ルクシ君を優しく抱きしめた。


ルクシ「……そっ……そんな事ない

おねえちゃん、僕 汚いから…あの…その…」


「あっ感極まって つい…

ごめんね勝手に抱きしめて

嫌だったよね」


ルクシ「ううん…嫌じゃない…

むしろ……」


「ん?むしろ?」


ルクシ「…なんでもない!!」



…多分触れられるの苦手なのかな


奴隷でもしかしたら暴力振るわれて

触れられるのがトラウマになったとか


もし、そうなら気を付けよう…



ルクシ「……あの…おねえちゃん」


「何かなルクシ君」


今度は

なにか言いにくそうな表情をしている

どうしたんだろう…


ルクシ「…僕、住む場所がなくて…

その……」


なるほど、そう言う事か

そんなの大丈夫よ


「……ルクシ君

住む場所なら私と一緒に探しましょう

たしか…シラトス城にそう言った管轄が

あるはずだから


住処が見つかるまではここのお部屋を使いなよ

食べ物もあるし、お風呂もあるから安心して!」


だから君は気にしなくて良い

こう言う時は…


「こう言う時はおねえさんに任せなさい

もう小さい子がそこまで考えなくて いいの!」


ルクシ「……おねえちゃん…

ありがとう 僕 嬉しい…」


そう言って、ルクシ君は

きゅっと、私の袖を掴んだ。


私を見つめる大きな深緑の瞳…

少し桃色に染めた頬…

私の母性本能はさらにくすぐった。


…可愛い…抱きしめたいっ

……でも…


抱きしめるのをグッと堪え、

彼の頭をそっと撫でた。


……こうして

私とルクシ君の不思議な共同生活が

始まった。




…が、この時の私はまだ知らなかった。


子供だと思って彼を思いっきり、

可愛がった事により、

後々とんでもない事が起きるとは…


……………………………………………………………


ルクシ君の頬の手当て後、

さっそく、ルクシ君を屋敷に住む許可を

もらう為、坊っちゃまの書斎に向った。



そして…


「お願いします!住処が見つかるまで、

ルクシ君に屋敷に住まう許可をください!」


坊っちゃまの機嫌を損ねない様に

恥を捨て、頭を床につけ土下座をした。


ルクシ「……………」


坊っちゃま「はあっ?!人間の分際で

駄目にきまって……ひいぃ!!」


「………? 坊っちゃま?」


どうしたんだろう?坊っちゃまが

悲鳴をあげるなんて珍しい…

いや、聞いたの初めてかも…一体何が…


顔をあげようとした瞬間…


坊っちゃま「やっぱりいいぞ!

許可をする!ダディ(領主)には

今から俺が言っておくから!!

…と言うかオーロラ!

その餓鬼、ちゃんと見張ってくれよ!いいな!!」


坊っちゃまは顔を青ざめ、

早口に事を伝え


坊っちゃま「お前らさっさと部屋に戻れ!」


何故か逃げる様に部屋を出て行った。



ガチャン!バタ バタ バタ……


シーン……



「……………」


何だかよく分からないけど…

初めて坊っちゃまから許可を

いただけた…


よっ…


「よかったー…許可貰えなかったら

どうしようかと思ったけど

ルクシ君 これで一安心だね」


先程までの緊張がとぎれ、

ホッとして

私は思わずへたり込んでしまった。



ルクシ「……う…うん…よかった…

ありがとう………ねぇ…おねえちゃん」


「ん?どうしたの?ルクシ君」


ルクシ「どおして あの人

おねえちゃんにイジワルするの?」


首をこてんと私を見つめる

深緑色の瞳……


……うっ…そんな純粋な眼差しで

見られると…


…嘘つけないな…

本当は怖がってほしくなくて

言いたくなかったけど…

ここは腹を括って…正直に話そう


「……そうだね…私が人間だからかな

鈍臭いし、力もない…から

…えっと大丈夫よ!ルクシ君も人間だけど

あの人達から私、貴方を守るから安心して!」


ルクシ「…………おねえちゃん…」


あれ?なんだか暗い表情…


そうだよね…ルクシ君も人間だし、

人間をよく思ってない人達がいると

誰だって不安がるよ


もしも 坊っちゃま達がルクシ君の事を、

よく思ってなかったら、

暴力振られそうになったら

私が全力で守ろう。


…あまり幼い子に悪い影響を見せない様に

しないとね


「ささっ!坊っちゃまが来る前に

私のお部屋に戻りましょう!

怒られたら大変!」


ルクシ「…うん」


さあて、ルクシ君を元気づける為、

まずは腹ごしらえ!


久しぶりに外での食事

さあ何をご馳走しようかな?



ハンバーグにオムライス…


野菜をふんだんに使った

ミネストローネ…


楽しみだな…



………………………………………………………………




………………………………………………



…………………………



食事の事でルンルン気分となり、

オーロラは気づいていなかった。


部屋へと戻る最中…



ルクシ「安心して……オーロラ

僕がオーロラの脅かす者から

守るから …だから覚悟しててね」


ルクシが子供らしからぬ笑みを浮かべ

ぼそりと呟いていた事に。





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