本編
第1話 事の始まり
……………………………………………… ……………………………………
……あの事件が起きる2ヶ月前…
あの頃の私は生きる為に
必死に坊っちゃまの機嫌を
損なわない様に身の粉にして働いていた。
坊っちゃま「オーロラ!早くジュース
持ってこい!!」
「はーい、坊っちゃま 少々お待ちください」
坊っちゃまの機嫌を損ねるとまずい…
部屋が荒らされて業務の負担が増える
急いで飲み物の準備をする。
ここは魔法や呪術が栄える【シラトス】王国。
私、オーロラ・オリベはメイドとして、
ダジュナール伯爵のお屋敷に仕えていた。
「…ジュースって…言っても
どうしよう、どれを選べば……」
魔獣の生き血ジュース…
緑色の謎の液体…と数十種類もの
飲み物がズラーと棚に並んでいて、
迷っていた。
このままずっと迷っていると坊っちゃまに、
叱られる…それに……
「さっ…寒い…早く選ばなきゃ…」
今いる場所は食料室…
魔法でキンキン部屋が冷えている。
ずっといたら、凍え死ぬ…
もう…ジュースなんて
当てずっぽうで決めてしまおう。
どーれにしようかな?
神様の言う通り!これ!!
決めたジュースを手に取り、
グラスに注ぎ、坊っちゃまのいる部屋へと
急いで駆け出した。
「坊っちゃま!お待たせ致しました
ジュースでございます」
ゼェ…ハァ…と息を切らし、
坊っちゃまの手前のテーブルに
コトリと音を立て置く。
…これで、気分は害されないかな
変な事が起きる前に
さっさと撤収しよう
「では、わたくしはこれにて…」
失礼しますと言おうとした瞬間…
ザッパァ!!
坊っちゃまが私めがけて、
ジュースを掛けてきた。
顔、上半身がびしょ濡れになって、
液体の多くが私の口めがけて、
だったから、思わず飲み込んでしまった。
「………っ……にっ苦…」
口の中は苦さで広まり
思わず顔を歪めてしまう。
魔族の坊っちゃまにとっては
美味しいだろうけど
人間の私じゃ たまったもんじゃない
不味い不味すぎる…
坊っちゃま「可哀想に 下級民のお前じゃ
この美味しさは分かるまい
もう飲みきった グラスを戻せ」
ニヤニヤしながら、
私に向かってポイっとグラスが投げられる。
「…………っ」
…悔しい…何か言い返したい……
だけど…っ
「けほっ…はい…承知致しました
坊っちゃま お飲み物ご馳走様でした」
魔族と人間の力の差なんて、
一目瞭然…
圧倒的に魔族が上…
魔族なんかに歯向かってしまえば、
下級生物の人間なんてすぐ殺される。
それを分かっているからこそ、
自分自身を守るには
ぐっと堪えるしかなかった。
………………………………
…………………………
……………………
「はぁ…なんで坊っちゃまは
私の事を毛嫌いしているんだろう…」
私はため息をつきながら、
グラスを片手に持ち
食料室前の洗い場へ向かう。
坊っちゃま以外にも、
領主様も奥様も、
私の事を毛嫌いしている。
救いなのは、ここの屋敷の働き手の
人達の仲が良好な事…
なんで?私が人間だから?
魔族より役に立たないから?
魔法なんてこれっぽっちも使えないし…
力もない……
だから私を毛嫌いするの?
「…………ぅぅ……」
なんだか悲しくなって、
涙がポロポロと溢れた。
いけない、こんな姿誰かに見られたら、
気を使わせてしまう
泣きやまないと…
涙を手を拭おうとした時、
料理長「このクソ餓鬼!
食材を勝手に食いやがって!!」
「…………?!」
あまりにも大音量の罵声が
聞こえたので涙が引っ込んでしまった。
この声…料理長?
普段は温厚で荒げた声なんて出さないのに…
なっ何事なの?!
急いで食料室を向かい、
着いて目にしたものは…
「!!」
顔を真っ赤にして、
包丁を片手に持つ料理長と…
???「……ごめんなさい お腹が空いてて…
許して……」
ボロボロの服を着た
青みかかった黒髪の少年が蹲っていた。
料理長が怒るのも無理がない。
せっかく領主様達に用意した食事が、
跡形もなくなり、皿だけになっていたから
領主様達の食事は高級食材を扱っているから、
無駄にできない。
新しく食事を作っても、その分の経費がかかり、
金にうるさい領主様は、
経費を無駄にしたと、
料理長にペナルティを与えるだろう
でも……
私は料理長より、少年の方がなんだか
可哀想だなって思ってしまった。
「…………」
私と同じ人間かな…
何か訳ありって感じだよね…
よく見ると少年の頬には殴られた跡がある
赤く腫れて痛そうだ…
……この少年を見ていると…
昔、奴隷だった私の様で…
「すみません 料理長…その子、
私の従兄弟なんです ご迷惑お掛けしました
食材については…
1週間ぐらい私の食事抜きという形で
お許しいただけないでしょうか…
私の1週間の食事分の経費を
今夜の領主様達の食事分にすれば
きっと領主様にバレない筈です」
???「………?!…(驚愕)」
…なんだかほっとけないな…
料理長「……オーロラの従兄弟か…
なら仕方ねーな…ちっ!
わかった1週間食事抜きでチャラにしてやるよ
餓鬼!オーロラに感謝しろよ」
「ありがとうございます!料理長」
ふんっ!!と言いながら、
ドタドタと足音を立てて
料理長は部屋を出て行った。
「…………………」
料理長の足音が遠ざかったのを
見計らって……
「…頬大丈夫?痛いよね
ごめんね 料理長が殴ったんだよね
怖かったよね… 」
少年に声をかけて腫れた頬を
ハンカチでやさしく抑えた。
???「………だいしょうぶ 怖くない……」
この少年よく見ると
顔が異様に整い過ぎていて
宝石の様な深緑色の瞳…
身なりに反して
あまりにもその姿は美しくて…
なんだか…人間じゃないみたい……
なんて気にしすぎだよね
???「………ありがとう……おねえちゃん…」
「気にしないで、まずはその頬を手当てしなきゃね 君、お名前は?」
ルクシ「……シ……ルクシ……」
「そっかルクシ君か
あっ私はオーロラよ!よろしくね
じゃあ、さっそく頬の手当てをしよっか!
ついてきて」
ルクシ「……!……う…うん」
……少年の小さい手を引き、
手当ての為、自分の部屋へと向かった。
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