夏希
第44話 弱気なヒーロー
私は強くなりたかった。
私が守りたいものを守れるくらいに。
***
うちのクラスに美人がいる。
そう認識したのは高校に入学した初日だった。
入学式で整然と並べられたパイプ椅子の中でその人だけが別の世界の住人のように輝いて見えた。
はー、高校にはこんな美人な子がいるのかー、私は思わず関心してしまった。
入学式の終わった後、教室での自己紹介。
黒板の前に一人一人が立って一言ずつ喋る。
自慢じゃないが、私は人前で喋るのが苦手じゃない。
それなのに。
「初めまして。ささや、mっつ」
盛大に噛んでしまった。
だって、しょうがないじゃないか。
例の美人が、黒板の目の前に座っていたのだから。
なんだか急に緊張してしまう。
ええい、落ち着け、落ち着け!
「初めまして、篠山夏希です!坂下中学から来ました……」
気合いで乗り切ったけれど、正直自分が何話していたのか覚えてない。
自己紹介の終わりに中学からの友達のみっちょんが、「夏希、めっちゃ緊張してんじゃん」とニヤニヤ笑っていた。
「うるさい、しょうがないでしょ!」
と、私がわざと嫌そうな顔をして手を振ると、クラスのみんなが笑った
例の美人も手で口元を隠してクスクスと笑っていた。
ひゃー、これが「楚々とした振る舞い」というやつか〜。
私は自分が笑われているのも忘れて思わず彼女の仕草に見入ってしまった。
彼女の名前は氷川美冬という。
チキンラーメンを茹でる3分と少しの時間 下谷ゆう @U-ske
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