第24話 美しい冬の日

「え、何があったの?」

 私は興味を惹かれて目を輝かせる。タカナシさんはなぜか照れたように笑った。


「それは、とても寒い日のことでした。

 朝からどんよりと雲が垂れ込めていたのをよく覚えています。夜になって、私は自分の部屋で横たわっていると急にお腹が痛くなりました。思わず呻き声を上げてしまうほどの痛みでした。見かねた父と母が慌てて救急車を呼んでくれました。救急隊の人たちが来てくれて、私を担架で救急車へと運んでくれました。

 その時、ほんの一瞬だけ空が見えました。

 チラリチラリと白い雪が舞っていました。

 病院についてからも痛みは治りませんでした。

 それどころか、どんどん強くなっていきます。『もういっそのこと殺してくれ』と何度も何度も思いました。けれど」


「けれど?」

 私は身を乗り出して聞いていた。ほとんどタカナシさんに寄りかかっている。タカナシさんは少し考えるように間をとると私の髪をそっと撫でた。


「その日の明け方、とっても素敵な贈り物を貰いました。初めて触れた瞬間、私の胸は幸せでいっぱいになりました。その時、病室から見た光景が私の心に焼き付いています。

 一面の銀世界でした。

 家も店も道路も車も電柱も全てが真っ白な雪に覆われて、朝の光を受けてキラキラと輝いていました。私はその景色をいつまでも眺めていました。

 後に聞いたことによりますと、この地方であんなに雪が降るのは滅多にないそうです。

 きっと神様からのお祝いなんだろうな、なんて考えたりもしました。

 まあ、そんなわけで冬が来るたびにその時のことを思い出すのでタカナシは冬が好きなんです。はい、おしまい」


「え〜」

 私は不満の声を上げる。

「結局、タカナシさんは何をもらったの?」

 タカナシさんはいつかみたいに悪戯っぽく笑った。

「お嬢様はなんだと思います?」

 私は考える。タカナシさんの好きなもの……。

「あ、わかった。本だ。とっても面白い本をもらったの?」

「ハズレです。もっと、もーっと素敵なものですよ」


 それから私はいくつか考えたのだが、結果は全てハズレだった。タカナシさんはニコニコするばかりで決して答えは教えてくれなかった。そのかわり、

「がんばったお嬢様には努力賞をあげましょう」

 そう言って、ナップザックから何かを取り出した。

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