第1章 私と彼女の話

 幼い頃、私はしょっちゅう『彼女』と同じ洋服を着させられていた。 



 まだ少女だった私は、なんだかそれがとても『特別』なことのように思え、母たちに彼女とお揃いの服を着させられるたび、それを得意気にみんなに見せびらかすようにして、2人で並んで歩いたりしてみせた。



 「双子みたい」そう言われると、まるで褒められたような気分になって彼女と顔を見合わせて笑い合った。



 やがて少女たちは思春期を迎える。



 彼女はいつも明るく、おしゃれに興味を持ってティーン向けのファッション雑誌を読み、アイドルのレコードを買い、好きな男の子の話をした。



 私はいつも大人しく、音楽や文学に興味を持ち、好きなロックバンドの曲を聴いて、本や漫画を読み漁り、ノートに自作の小説を書き綴った。



 私の母にとっては『彼女』こそが、理想とする娘像であり、おしゃれにも無頓着でいつも部屋に籠もって虚構の世界に浸っている私は「なんとか『彼女と同じ』に変えなければいけない存在」となっていった。幼い頃のようにお揃いにしなければ、と。



 『彼女』というのは、私と同い年の従姉妹であり、私の母と彼女の母は、『一卵性の双子』だった。

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