消したい記憶
いつでもボーッとしているときに思い出すのは彼のこと。
私の記憶の中で彼は微笑みかけてくれる。
だからこそ辛い。
最初の方は、毎日毎日泣いて、彼にもう1度振り向いてほしいと願った。
でもその願いが叶うことはなかった。
だから、いつしかその願いは別のものに変わっていた。
―――彼のことを嫌いになりたい、忘れたい。
しかしそれも叶うことはなかった。
いつまでも彼に縛られ続けた。
さらに辛かったのは、私は彼との思い出の"モノ"は何ひとつ残っていなかった。
LINEも送ろうとした。
でも、送れなかった。
…拒絶されるのが怖くて。
LINEの会話も見返そうとした。
でもできなかった。
…消えてなくなってしまったから。
ただ、最後に一つだけ彼との思い出の物があった。
私は『それ』を大切に保管した。
…大切に、大切に。
あの人との思い出を見ても辛くなるのは分かってる。
泣いてしまうのは分かっている。
頭では分かっているのに…。
それでもそれ以上の幸せが待ってるような気がする。
私は毎日のように『それ』を見た。
過去の彼からの愛に浸り続けた。
『それ』を見るのは辛いこと。
だから『それ』に何度も傷つけられ、何度も自分を消そうとした。
そして…
ついに『それ』も消えてなくなってしまった。
私はその時にどんな反応をしたのか分からない。
泣いたのかもしれないし、無気力になったのかもしれないし、それ以外かもしれない。
ただ、一つだけ分かっていることがある。
私の心に大きな穴が空いてしまったことだ。
その穴はどんどん大きくなり、もう取り返しのつかないものになった。
どんどん私の心を蝕み、思考をおかしくしてしまった。
私は彼に想いを伝えてしまいそうになった。
でも直前で止めることができたのが唯一の救いだった。
私は彼と友達でも良い、と思い込もうとした。
彼とは、たまに話した。
だけど話すたびに震えが止まらなくなっった。
他の誰と話すときにもならない『震え』。
私はそれを必死に隠した。
もう彼を心のなかから、記憶から消してしまいたい。
それには1つしか手はないことを私は悟った。
それから私は決心した。
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