彼に、最後に伝える言葉

白城香恋

始まりはダイヤ、終わりは泥水

―――もし俺の好きな人が君だったらどうする?


彼――私の憧れ――はそう言った。

私は嬉しかった。


その場で飛び跳ねてしまいそうなくらいに…。


―――いきなりでごめん、付き合って下さい。


その言葉が私に送られてきたのは、その次の日のことだった。


シンプルでとても短い文章。

それでも、たった1文でも気持ちは伝わってきた。


私はもっと嬉しかった。


けれど…


私はすぐに付き合えなかった。

なぜなら…


私には恋人がいたから。

かつて愛した人。

そして、最近は疎遠になってしまっていた人。


私は少し待って欲しかった。


それが誤解を生んだ。

彼を1度傷つけてしまった。


私は自分の過去についてすべて話した。

本当のことを言うと話したくなかった。


けれど彼には伝えておかなければならなかった。

彼に失礼のないように。


晴れて私は彼と付き合った。


********


私は走る。

親友の元へ。


他の誰とも話したくないし、会いたくなかった。

それでも彼女には話を聞いてほしかった。


―――お願い、聞いて…


私は彼女に抱きつく。


さっきまで我慢できていたのに、泣いてしまった。


彼女が驚くのが分かる。

でもそれを気にしていられなかった。


―――私、捨てられた…


彼女は私の背中を撫でてくれる。


私はいつまでも泣き続けた。


********


これは私が最後にした恋の始まりと結末。


私はひどいことをした。

かつて愛した人にも、彼にも。


そんなやつに恋なんてする資格はなかった。

したくもなかった。


だからそれから私は恋していない。

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