第012話 金! 金! 金! 金が欲しい
「さーて、行くかー」
私は準備を終えたので、ギルドに向けて、出発することにした。
「あれはどうするんじゃ?」
あれとは当然、吸血鬼ニュースのことだ。
「大丈夫よ。顔を見られてないし」
「うーむ。まあ、人間なんかどうでもいいか……最悪、妾のデスフィナーレを使えば、それで終わる」
「デスフィナーレって、半径数百メートルを消滅させる魔法でしょ? 止めてよ」
ロリが死んじゃうじゃん。
「おぬしがドジを踏むからじゃろ」
「止めよう! そういう悪者探しをすると、悪いのはいっつも私になっちゃうから!」
良くない!
イジメ、カッコ悪い!
「そらな」
「よし! 切り替えていこう!」
私は颯爽と家を出て、ギルドに向かった。
電車を使い、ギルドに着くと、自動ドアからギルドに入る。
「ほら見ろよ……」
「うわっ、ホントだ……」
「あの子、またあの格好で来たの?」
「まだ子供じゃない?」
「しかも猫まで抱えて……」
「キャラを仕上げてるなー」……
私はギルドに入ると、皆がひそひそ話をしながら私を注目する。
「有象無象の人間ども、高貴なる我に用でもあるのか?」
私はうるさいハエ共を睨む。
「な、ないでーす」
「いいと思いまーす」
「がんばってくださーい」
「人間どもだって……じゃあ、お前はなんやねん…………いえ、何でもないでーす」
ハエ共は口角を上げながら、そっぽを向く。
ふん。
たかるしか能のないハエ共め!
『その場合はおぬしが…………いや、なんでもない…………ぷぷ』
おだまり!
高貴なる私は有象無象のハエ共とウィズを無視し、受付に向かう。
「高貴なるハルカさん、こんにちはー」
受付に向かうと、キミドリちゃんが挨拶をしてくる。
「うむ。こんにちはー」
挨拶は大事。
「今日もお金稼ぎですか?」
挨拶の次に聞くのがそれ?
「言い方に棘があるわね。社会に用いられる素材を持ち帰り、社会に貢献する大切なお仕事よ」
「じゃあ、お金はいらないですねー」
「え? 死にたいの?」
社会に貢献?
ぺっ!
「いや、冗談です。今日も800円収集ですか?」
「うーん、今日は1000円かなー」
「3階層ですかー。まあ、コボルトはゴブリンとたいして変わらないので問題はないと思います」
名前も似てるしねー。
「4階層以降は?」
「4階層はスケルトンですね。ドロップ品は骨です。1500円です」
ふむ。
骨って、まんまだな。
しかも人骨。
何に使うの?
「ふーん。まあいいや」
「というか、その辺の情報はネットに載ってますよ。あと、骨は価格が変動しやすいのでご注意です」
「なんで?」
「だって、骨ですよ? 強度があるので色んな材料に使われているんですが、嫌ですよ。ハルカさんは人骨でできた家に住みたいです?」
絶対に嫌。
「人気ないんだね」
「ですです。武器とか人が使わない施設とかには使われますけど、基本的に人気がないので、大量にはいらないんです。逆にスライムゼリーは人気です。かわいいですし」
かわいいかな?
私は昔、フルボッコにされたことがあるから嫌いなんだけど……
「じゃあ、もっと高く買い取りなさいよ」
「いやー、1階層の雑魚ですからねー。下手したら小学生でも倒せますもん。需要は多い素材ですが、供給も多いんです。素材を大量に仕入れる時はその辺も知らべてみるといいですよ」
めんどい。
というか、スライムって、小学生でも勝てるんだ…………
いや、余計なことを考えるのはやめよう。
「私、そういうのは得意じゃないんだよねー」
「でしょうね。ハルカさん、頭が悪そうですし」
おい!
「言っておくけど、私は小学生の時に100点を取ったことがあるのよ」
フフン!
「それを自慢するだけで、お察しです…………あ、それと、今日はいつ頃に戻ってこられます?」
「さあ? 夕方ぐらいじゃない?」
今は昼の1時だ。
夕方の6時くらいには帰りたいな。
「実はハルカさんにお会いしたいという人がいまして…………」
「パス! 私にそんなことを言う人って、大抵がロリコンのゴミなのよね」
昔からそういうのは多かった。
なーにが純粋な君に惹かれるー、だ!
小っちゃい君が好きだよ、ぐふふ、と素直に言え!
そしたら、警察に連れていってやるのに。
「いえ、そういうのじゃなくて、私の上司です」
「上司ー? 何の用よ? 言っておくけど、私は悪いことなんかしてないわよ」
『いや、昨日、しとったろ』
悪くない!
あの子も最後は求めてたし!
「うーん、ほら、ハルカさんって優秀じゃないですか? きっと、唾でもつけたいんじゃないですかね?」
「キモ……唾って……」
何、その性癖?
こわー。
「ああ……やっぱりバカなのか…………えーっと、ハルカさんが優秀だから、この北千住のギルドで活躍してほしいんですよ。他所に移られたら困りますし」
「何それ? どこで活動しようと、どうでもよくない?」
「ランカーになると、有名になるじゃないですか? そうなると、所属しているギルドの株も上がるんですよ。昔は不人気だったギルドが有名なランカーを輩出したことで人が集まり、一気に人気ギルドになって売り上げが上がるっていうのはよくあることなんです」
あー、なるほど。
ミーハーが集まるのね。
「ここ人気ないんだ?」
「まあ、中堅って感じですかね? 下から数えた方が早いですけど」
不人気なのね。
まあ、確かに、私もここが家から近くなかったら渋谷に行ってるわ。
でかいらしいし。
「なるほどねー」
「基本、皆さん、ある程度、活躍されると、渋谷とか新宿に行っちゃうんですよねー」
「あれは? ロビンソン」
Bランク何位のヤツ。
『Bランク4位の≪早打ち≫のロビンソンじゃ。その代名詞とも呼べる高速の早打ちは何者にも捉えられないという…………』
どんどん詳しくなってるし……
「ロビンソンさんはこの近くに家があるんです。めんどくさがりの人なんで」
私と一緒だ……
「ふーん、まあ、会うだけならいいわよ。私は賄賂に応じる準備もあるって言っておいて」
「ルーキーのくせに、厚かましいですねー」
「誠意。わかる? 誠意。人にものを頼む時は相応のモノが必要なの」
一般常識だよ。
「あなたのどのへんが高貴なんですか? 銭ゲバじゃないですか……」
「高貴でもお金がなければ意味ないの。貧乏でも心は高貴なの。でも、お金はいるの。わかる?」
どぅー、ゆー、あんだすたーんど?
「まあ、伝えてはおきます。じゃあ、夕方には帰ってきてくださいね」
「はいはい。じゃあ、行ってくるわ」
私はキミドリちゃんに手を振り、受付を離れる。
いざ、出陣じゃ!
皆の者、ついてまいれー!
『ははー』
ノリのいい子だねー。
◆◇◆
私とウィズは武器を取りに行った後、ダンジョンに行き、ワープを使う。
そして、2階層にやってきた。
携帯で3階層への階段の位置を確認し、階段に向かう。
道中のゴブリンどもを偉大な魔法で一掃しながら進んでいき、階段に着いた頃には6匹のゴブリンを倒していた。
3階層に着いた私達はコボルトを探す。
コボルトは二足歩行の犬のモンスターだ。
ちなみに、まったく可愛くない。
ブサイクな顔で二足歩行する犬は気持ち悪いだけである。
「ウィズー、どっちー?」
分かれ道になったのでウィズに聞く。
「あっちじゃな。獣臭いし」
いや、あんたも獣じゃん。
「あっちかー。じゃあ、行くかなー」
私はウィズが前足で教えてくれた方に進んだ。
すると、前方からはっはっは、という息遣いが聞こえてくる。
「来たぞ」
「うーん、ゆっくり来れないのかねー」
詠唱できないじゃん。
「まあいいかー。ダークバタフライ!!」
私は無詠唱で魔法を使う。
すると、私の影から無数の黒い蝶が現れ、走ってやってくるコボルトに向かって飛んでいった。
黒い蝶がコボルトに当たると、当たった場所から血が噴き出る。
それが手、肩、足、胴体と次々と当たり、コボルトは血と蝶で真っ黒になり、見えなくなった。
「闇に沈むがいい……」
コボルトは完全に見えなくなると、煙となって消えていった。
その場に残っているのは無数の黒い蝶とドロップ品であるコボルトの牙だけである。
「憐れなコボルトじゃのう……」
ウィズがコボルトに同情している。
「急に走ってくるんだもん。詠唱が出来ないなら余韻がかっこいい魔法を使うしかないじゃん」
「かっこいいか? いや、そもそも魔法が強すぎじゃろ。あんなもん、ドラゴンでも死ぬわ」
「そりゃあ、不死である吸血鬼を殺すための魔法だからねー」
いくら不死の吸血鬼でも血がすべてなくなれば活動できなくなる。
まあ、真祖である私は大丈夫だけどね!
「憐れなコボルトじゃのう……」
何を使っても死ぬんだからどうでもいいじゃん。
ってか、この猫はさっき、デスフィナーレを使うとか言ってたのに、何を言ってんだろう?
「次よ、次。数を稼がないといけないんだから」
「まあ、そうじゃのう」
私達はその後もコボルトを一撃で仕留めながら進んでいく。
そして、14匹を仕留めたところで4階層の階段に到着した。
「あー、階段かー。どうしよっか?」
まだ、14匹しか倒せていないのに、階段に来てしまった。
「うーん、別にここも次の階層もたいして変わらんじゃろ。妾達は別に鍛える必要もないし。だったら、500円高いスケルトンにしようぞ」
なるほど。
確かに、王級である私達にとって、こいつらの経験値は何の足しにもならない。
奥に進んだ方がいいな。
「しかし、スケルトンかー。うーん」
「おぬしの仲間じゃなー」
まあ、不死系の生き物という共通点はある。
蛇とトカゲくらいは似ているだろう。
「あー、不死友達じゃん。どうしよっかなー」
スケルトンやグール、ゾンビなんかは吸血鬼を襲わない。
もちろん、逆も然り。
というか、ゾンビの血を吸う吸血鬼なんかいない。
スケルトンに至っては、血すらない。
「普通に襲ってくると思うぞ。ダンジョンが生んだモンスターじゃからな」
あー、ゴブリンの時にそんなことを言ってたね。
「じゃあ、おかまいなしに魔法で倒すかなー」
親愛なる隣人を倒すのは心苦しいが、1500円のためなので仕方がない。
「1500円を稼ごうぞ。というか、奥に進むことを優先した方が良くないか? このまま小銭を稼いでいたらいつまで経っても引っ越しできんぞ」
確かに、1日数万円を稼ぐのは大きいが、それでは家を買うのに…………えーっと、どんくらいかはわかんないけど、時間がかかる。
「そうしよっかー」
「うんうん」
私達は4階層に向かうことにした。
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