第011話 血を吸いたい
久しぶりに昔の夢を見た気がする。
私がまだ転生したばかりの頃の夢だ。
若いうちの苦労は買ってでもしろと言う。
しかし、絶対にしない方がいいと思う。
怠惰に、自堕落に、そして、淫靡に!
そう生きた方が人は絶対に幸せになれるだろう。
実際、私は向こうの世界の晩年はそう過ごしていた。
寝て、起きて、ウィズとおしゃべりをする。
そして、眷属の子たちや町にいる女の子と遊ぶ。
そうやって楽しんでいた。
こっちの世界に戻っても楽しいとは思う。
眷属の子たちと別れたのは悲しいが、ウィズがいるから寂しくはない。
こっちのご飯もお酒も美味しい。
お金を稼ぐ目途も立った。
何も問題はない。
だが、足りぬものがある。
そう、ロリっ子だ…………
私はロリの血を吸い、ロリを抱き、ロリに生きる吸血鬼なのだ。
だから、≪少女喰らい≫と呼ばれているのだ。
日本、というか、この世界はロリに厳しい。
ここは良い世界だと思うが、それだけは不満である。
その点、向こうの世界はロリに厳しくない。
ロリコンは普通の性癖だし、そういう専門店もあった。
実際、見た目がロリな私はそこに売られそうになったこともあるし、変態さんに襲われそうになったこともある。
いい世界だった。
いや、男は死ぬべきだが……
しかし、この世界で私がロリを抱くにはハードルが高い。
一番確実なのは眷属を作ってしまうことだ。
第一候補はエリちゃんになる。
だが、現代において、眷属になることを同意してくれるだろうか……
眷属になるということは、人間を辞めるということだ。
寿命もほぼなくなる。
永遠に子供の姿のままになる…………
無理だ……
現代社会では、とても同意してくれそうにない……
ならば、フリーで遊ぶしかない。
子供を探し、色んな方法でホテルに誘う。
これしかない!
そう考えた私は今、夜の闇に紛れ、霧となっている。
獲物を狙う狩人なのだ。
なお、ウィズはいない。
ウィズは家でテレビを見るそうだ。
何でも、探索者特集で≪ダークマター≫が出演するらしい。
私は気になったので≪ダークマター≫ジュンとやらを調べてみた。
10代の甘いマスクが特徴の若者だった。
そして、発言がちょっと痛い……
私はテレビに噛り付くウィズを見て、ジャ〇ーズJrにハマるおばさんみたいだと思ってしまった。
私は邪魔をしないでおこうと思い、一人で夜の空を佇んでいる。
うーん、いないなー。
やっぱり夜だからかなー。
と言っても、昼は日光がウザいし……
1時間以上も佇んでいるが、まったく好みのロリが見当たらない。
たまに、お!ってなる子もいるが、そういうのは大抵、親と一緒だ。
「もうこうなったらハードルを下げて高校生も入れようかなー」
熟女は好みじゃないが、まあ、いけないこともないだろう。
高校生で大人っぽい子もいれば、幼い子もいる。
私は年齢より、見た目派なのだ。
私は高校生に狙いを定めると、時間帯的に塾だろうと考え、塾近くで張る。
私は塾から学生らしき人が一斉に出てきたタイミングで精神を集中した。
むーん!
よし! あの子だ!
あの子にしよう!
私は一人の女の子に狙いを定める。
その子は黒髪ショートであり、低身長の子だ。
顔つきもまだ幼い。
まあ、悪くない……
さて、久しぶりに財布作戦といくかな……
財布作戦とは、少女の前を歩く私がわざと財布を落とすのだ。
それを拾った女の子とお近づきになるという作戦である。
財布を拾って、すぐに私に教えてくれた場合はお礼をしたいと言って近づく。
もし、ネコババしようとしたら、すぐに気づいたふりをして、責めに責める。
脅して、抱いてもいいし、許して、大人の余裕さを見せ、お近づきになってもいい。
どう転んでも上手くいく。
前世では、この手を使い、散々、遊んできた。
さーて、そうするためには彼女の前を歩かなければ……
彼女は現在、人通りの少ない道を歩いている。
実に好都合だ……
私は彼女の前を歩くために、霧のまま、地上に近づく。
すると、彼女の後ろから車が近づいてきた。
私はそれを見て、一度、ストップした。
そして、邪魔だなーと思いながら車が通り去るのを待つ。
しかし、車は彼女の前方に止まった。
ん?
親のお迎えかな?
私は彼女の前方に止まった車に違和感を覚えたが、彼女は特に気にした様子もなく、歩いていく。
そのまま彼女が車を通り過ぎようとした時、車のドアが開き、男が半身を出した。
女の子は一瞬、ビクッとし、足が止まる。
そして、男は女の子に手を伸ばし、腕をつかんだ。
女の子はあっという間に車に引きずり込まれる。
んんー?
迎えではなさそうだなー。
誘拐かな?
私は獲物を奪われた事に不満を持ったが、すぐに頭を切り替えた。
これはチャンスではないか?
暴漢に襲われるお姫様を助けた私の好感度はうなぎ上りになる。
「くっくっく。我の邪魔をする愚か者だが、我の踏み台になれるのなら本望であろう」
私は霧のまま車を追跡する。
車はしばらく運転を続け、人気がなさそうな工場の敷地に入っていった。
私は上空からそれを確認すると、地上に降り、霧の魔法を解く。
そして、工場前で車が止まったことを確認すると、歩いて、車に向かった。
車は止まったのだが、ライトはつけっぱなしであり、一向に人が出てくる気配がない。
うーん、車の中で始める気かな?
面倒だな……
私は落ちていた小石を拾うと、それを車に投げる。
すると、小石は車に見事、命中し、音を立てた。
しばらくすると、車のエンジンが止まり、車の中から男が2人ほど出てくる。
男2人はすぐに私に気付いたようで、近づいてきた。
「なんだー? ガキの悪戯かよ…………おい、ガキ、ここは人の所有地だ。さっさと出ていけ」
男は私にそう言うが、私は何も答えず、笑みを浮かべ続けた。
「おい、ガキ! 聞いてんのか!?」
何も答えず、ただ笑っている私にイラついた男は怒鳴る。
「な、なあ、このガキ、変じゃないか? こんな時間に何でこんな所にいるんだ? しかも、変なドレスを着ているし」
変なドレス…………
お気になのに……
シュン……
「何、ビビってんだよ! ただのガキじゃねーか!」
「で、でもよう、この女、裸足だし、変じゃ…………え?」
「あん? どうした?」
「う、浮いてる…………?」
私は家の窓から出てきたから裸足だ。
このまま歩くと、足の裏が汚れてしまうので、ちょっと浮いている。
ド〇えもん理論である。
「…………浮いてるな。チッ、どうせ探索者だよ」
せいかーい。
「で、でも…………」
「てめーはビビりすぎなんだよ!」
男はビビっている仲間を怒鳴るが、そいつ自身も内心はビビっている。
私は人の感情を読み取ることが出来るからわかるのだ。
「くっくっく…………さっき、女の子を攫ったであろう? その子はどこかな?」
私は怯えている男2人に私の獲物の場所を尋ねる。
「あん? チッ! 見てたのか……おい」
男はビビっている男に目くばせをする。
「や、止めた方が…………」
「てめーが小さい子がいいって言ったんだろうが! このガキも小さいぞ!」
どうやらビビっている男の趣味はなかなか良いらしい。
「で、でも…………」
こんなビビりなのに、よく女の子を襲えたな……
「貴様らには選択肢を与えてやろう。女の子を置いて去るか、死ぬかだ」
「ガキが! アニメの見過ぎだよ!」
ふむ。
もう面倒になってきたな。
観客(猫)もいないし、さっさと終わらせよう。
「闇よ……すべての光を飲み込む漆黒の闇よ! 夜の王たる我の呼び声に応え、その姿を現したまえ!! スリープ!!」
私は詠唱し、男達を見た。
男達はその場で崩れ落ちる。
……………………。
ツッコミ(猫)がいないな…………
やっぱ一人は寂しい…………
私は睡眠魔法でおねんねしている2人を放っておき、車の中を覗き込んだ。
そこには足と腕を縛られ、アイマスクをされている女の子が震えていた。
アイマスクからは涙がこぼれており、よほど怖い思いをしたと思われる。
ふむ、すぐに助けてあげるよー。
私は女の子を縛る縄をほどこうと、手を伸ばすが、私の手が女の子に触れた瞬間、女の子がビクッと震えた。
「こ、殺さないでください! お願いします! な、何でもしますし、逆らいませんから!!」
どうやら、車の中でかなり脅されていたようだ。
私は助けだよーって言おうとした。
だが、私の目にはスカートが捲れ、かわいらしい足が見えている。
緊張と恐怖で汗ばむ首筋が見える。
ふむ…………ふむ。
「大丈夫……」
私は優しく、女の子に語り掛ける。
「え? 女の人!?」
女の子は驚いたように顔を上げる。
女性の声を聞いて、ビックリしたのだろう。
「安心して………………痛くはしないから! ただ、身をゆだねればいいの!」
「え!? え!? えー……」
フハハ、我こそは≪少女喰らい≫であーる。
◆◇◆
「ただいまー」
私は家に帰ってきた。
「おかえりー。どうだった?」
ウィズが狩りの成果を聞いてくる。
「まあまあね。身体は悪くなかったんだけど、血が微妙だった。多分、ストレスね。塾なんて行ってたし、勉強疲れじゃないかなー」
血の味はストレスや食生活を崩すと、悪くなるのだ。
まあ、高校生は大学受験や人間関係とかあるからストレスが溜まりやすいのだろう。
そういう意味では、やはりロリが一番である。
「ふーん。ほどほどになー」
「わかってるわよ。ヘマはしてないわ。それよか、テレビはどうだった?」
「うーん、微妙。テレビでは外向きな感じだった。まあ、仕方がない面はあるが、あの演出では魅力の半分も出てないなー。やはり≪ダークマター≫はネット動画向きじゃと思う」
あー、もう評論するレベルになってる。
この子、そのうち、投げ銭とかスパチャとかしそう……
「そう……まあ、向き不向きがあるからねー」
「そうなんだよなー。のう、ハルカ、妾もスマホが欲しいんじゃが……」
えー……
「何で? 使えんの?」
「いや、生配信が見たい。パソコンでもいいが、持ち運びに不便じゃろ」
ウィズのこっちの世界に染まるスピードがやばい。
多分、元々、こっちの住人であった私よりも速い。
「いいけど、お金がねー。明日からはもっと奥に行ってみようか」
「そうしよう。少なくとも、コボルトは1000円じゃったろう」
1000円か…………計算が楽だな。
「じゃあ、明日は3階層に行こー」
「おー!」
翌日、昼に起きた私はご飯を食べながら携帯でネットニュースを見る。
『東京に吸血鬼が現れる!? 女子高校生が襲われ、首元には謎の傷が!?』
ポチ。
私はスマホを切り、机に置いた。
「ヘマしておるではないか…………おもっきし、吸血鬼って書いてあるではないか…………」
携帯を一緒に見ていたウィズが呆れながら言う。
「記憶を消すのを忘れてたわ」
もぐもぐ。
「何してんの!? おぬしはそこまでドジなのか!?」
うーん、やっぱりウィズ(ツッコミ)がいると、いいなー。
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