第101話 俺って、特異種と縁があるなー


 俺達はついにスタンピードが起きている25階層へとやってきた。


 俺達は25階層に着くと、25階層の光景を見て、足が止まった。


「何これ?」

「蜘蛛の糸じゃない?」


 俺達の目の前には白い糸が張り巡らせてある。

 キルスパイダーだし、蜘蛛の糸だろう。


「キルスパイダーの糸は粘着性があるから、触ったらダメだよ」


 糸に触ろうとした俺をちーちゃんが注意をしてくれる。

 

「燃やさないと進めないか…………」

「燃やしたらキルスパイダーに感知されると思う」

「だろうな」


 とはいえ、ここでグズグズしていられない。


「準備はいいな? やるぞ…………ラブラブファイヤー!!」


 俺は両手でハートマークを作ると、火魔法を放った。

 すると、俺のハートマークから出た火は前方の蜘蛛の巣を簡単に焼き払い、あっという間に蜘蛛の巣はなくなった。


「本当に火に弱いみたいね……って来たわ!」


 俺の索敵にも反応がある。

 かなりの数が来ている。

 

「カナタ、やるぞ!!」

「はい!!」


 俺がカナタに指示を出すと、カナタは詠唱を始める。

 そして、前方から体長40センチ程度の黒い蜘蛛が現れた。

 それも地面を埋め尽くすほどの数である。


「ラブラブファイヤー!!」

「ファイヤー!!」


 俺とカナタは火魔法を放ち、わしゃわしゃと近づいてくる蜘蛛達を焼き払う。

 蜘蛛の糸もだが、キルスパイダー自身も火に弱いらしく、俺とカナタの火魔法で次々と倒れていった。

 しかし、それでも奥からキルスパイダーが次々とやってくる。


「チッ! キリがない! 倒しながら進むぞ! シズル、蜘蛛が多い方を案内しろ!!」

「わかった!」


 俺はシズルに指示を出すと、連続で火魔法を放つ。

 カナタも詠唱しつつ、火魔法を放っていった。

 

 俺達は敵がいなくなると、進む、敵が来たら燃やすを繰り返しながら、クイーンスパイダーの元を目指していく。


「クソ! たいして強くねーくせに、本当に数だけはいるな!」


 一度に襲ってくるキルスパイダーは軽く20はいる。

 それらを倒すと、いなくなるのだが、ちょっと進むと、また出てくる。


「ファイヤー! ハァハァ……」


 カナタが詠唱を終え、火魔法を放つ。

 

 しかし、カナタは辛そうだ。

 何しろ、カナタは詠唱をしないといけない。

 そりゃあ、疲れる。


「カナタ、ある程度、息を整えろ。酸欠になるぞ!」

「ハァハァ……はい!」


 カナタが潰れたらマズい。

 休ませながら進むしかない。


「ラブラブ、ファイヤー!!」


 俺は休んでいるカナタの分も火魔法を放つ。

 そして、精神力が切れそうになると、マナポーションを飲む。

 さすがに俺も辛い。


「ルミナ君、次を右!!」


 ついに分かれ道に到達し、俺達は右に曲がった。


「ここからは後ろを警戒しろ! さっきの分かれ道から来る可能性がある! カナタは後ろから来る蜘蛛を殺れ! 瀬能、頼んだぞ!」

「はい!」

「了解!」


 俺達は打ち合わせ通り、前方からのキルスパイダーを俺とシズルが対処し、後方からのバックアタックを瀬能とカナタが対処することにした。


 俺は前方のキルスパイダーを焼き払い、シズルの指示に従い、進んでいく。

 さすがに、俺一人では燃やし損ねることもあったが、そういったキルスパイダーはシズルが対処してくれた。


 後ろも、ちーちゃんとアカネちゃんが援護をしつつ、カナタと瀬能が上手くキルスパイダーを倒している。


 そして、再び、分かれ道に到達した。


「ルミナ君、次を右! その先に大きな反応がある!」

「俺も感知した。多分、クイーンスパイダーだ。行くぞ!」


 俺達は分かれ道を右に曲がり、進んでいく。

 すると、明らかに先ほどまでより、キルスパイダーの数が増えてきた。


「チッ! ラブラブファイヤー!!」


 俺の火魔法は威力が高く、一度に多くのキルスパイダーを焼くことが出来るが、焼ききれなくなってきている。

 キルスパイダーの数が多すぎるのだ。


 このままではマズい!


 俺はアイテムボックスからハルバードを取り出す。

 そして、ハルバードを前方に迫る蜘蛛軍団に向けて、振った。

 

「死ね! デストロイヤー!!」


 俺が振り下ろしたハルバードから5つの斬撃が飛び出し、キルスパイダー達を切り裂いていく。


「よし! 行くぞ!」


 俺の必殺技がキルスパイダー達を一掃したため、俺達はその隙に走り出した。


 そして、ついに前方に大部屋が見えてきた。


 以前、名古屋支部のニュウドウ迷宮でも見た光景だが、部屋の中には蜘蛛が埋め尽くされている。


「うぇー……ひどい光景ね」


 シズルはこの光景に眉をひそめる。


「ニュウドウ迷宮では、これがゾンビだった。あれよりはマシだ」

「それは最悪ね……それにしても、なんで部屋から出ないのかしら? 私達に気づいているよね?」


 俺とシズルが流暢に会話をしているのは、前方の大部屋にいるキルスパイダーがこちらにやってこないからだ。


「キルスパイダーはクイーンスパイダーを守るって、言っただろう。蜘蛛達は籠城戦をする気なんだろ」


 俺達の疑問にシロが答えてくれる。


「よし! 俺がパンプキンボムで入口に固まっているキルスパイダーを倒す。そしたら、俺は大部屋に突っ込むから、お前らは入口でキルスパイダーを引き付けろ」

「任せて!」

「ルミナちゃん、頑張ってね」

「センパイ、なるべく死なないでください!」

「早く倒してくださいね」


 カナタは限界が近いようだ。

 何がとは言わない。

 

「神条、頼むぞ!」


 最後に瀬能が声をかけてくる。


「お前も頼むぞ!」

「ああ!」


 俺はアイテムボックスからマナポーションを取り出し、飲んだ。


「やるぞ! パンプキンボム!」


 俺が前方に出した右手にカボチャ爆弾が落ちてきた。

 俺はそれをキャッチすると、蜘蛛で埋め尽くされた大部屋に向かって投げる。


 俺が投げたカボチャ爆弾は蜘蛛の群れの中に落ち、見えなくなった。


 ドッカーン!!


 俺は爆発が起きたと同時に走り出し、部屋の中に入った。

 そして、爆発の煙に紛れ、宙に浮く。


 天井付近まで浮くと、部屋の全体が見えてきた。

 大部屋は50メートル四方の部屋であり、そこに蜘蛛達が気持ち悪いくらいにいる。


 そして、部屋の一番奥中央に体長3メートル程度の白い大蜘蛛がいた。


「あれがクイーンスパイダーか……」

「相棒、悪いニュースだ。クイーンスパイダーの色は黒なんだ」

「白いぞ」


 お前と一緒。

 …………一緒?

 ……もしかして?

 

「特異種だ」

 

 マジかよ…………


「チッ! どちらにせよ、これで終わらす!」


 俺は空中からの爆撃作戦を開始する。


「パーンプキン、ボム!」


 俺はカボチャ爆弾を取り出し、クイーンスパイダーに向かって投げた。

 俺の抜群のコントロールで投げたカボチャ爆弾は一直線にクイーンスパイダーの元に行く。


 しかし、クイーンスパイダーは複数の目でカボチャ爆弾を見たと思ったら、口から糸を吐き出し、カボチャ爆弾を包んでしまった。


「あれ?」


 そして、俺のカボチャ爆弾はあっという間に白い球体になると、クイーンスパイダーの目の前に落ちた。

 直後、カボチャ爆弾は爆発したのだが、糸が爆発の衝撃を抑えたらしく、たいした爆発にはならなかった。


「マジかよ!」

「相棒、地面に降りろ。空中では、あの糸の餌食になるぞ」


 あんな糸でぐるぐる巻きにはなりたくない。


 俺はシロの助言に従い、マジカルフライを解き、地面に降りる。

 もちろん、下には大量の蜘蛛がいる。


「死ねぇい!!」


 俺はハルバードを取り出し、下に構え、落下する。

 重さ800キロもあるハルバードは落下の勢いにも乗り、下にいた蜘蛛達を突き刺した。


 そして、地面に降りた俺はハルバードをおもいっきり振り回し、周囲にいるキルスパイダーを切り裂いていく。

 俺はその場で一回転すると、ハルバードが届いた範囲のキルスパイダーは煙となって消えていった。

 

 ハルバードが届かなかった所にいたキルスパイダー達は俺を見ると、一斉に俺に襲いかかろうする。

 しかし、直後、キルスパイダーは一斉に俺を無視し、俺の後ろに走っていった。


 瀬能がデコイでキルスパイダーを集めたのだ。


 俺の周囲にいたキルスパイダー達はいなくなり、目の前にはクイーンスパイダーのみが残っている。


「相棒、糸には気を付けろ」

「わかってる」


 俺がハルバードを構えると、クイーンスパイダーの複数の目が俺を見る。


「こいつに知性があるのか?」

「あると思うぞ」

「そうか…………おい、蜘蛛! 今から殺してやるから大人しく死ね!!」

「シャー!!」


 蜘蛛は俺の挑発に切り裂くような鳴き声で答えた。




 

攻略のヒント

 タンク必須のスキルであるデコイはモンスターを引き付ける効果がある。

 デコイでモンスターを引き付ければ、メイジやヒーラーも安全である。

 しかし、デコイは自分より強い敵には効きにくいこともわかっており、メイジやヒーラーはその事を十分に頭に入れておく事が重要である。

 

『ダンジョン指南書 デコイについて』より

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