第44話「エピローグ」
結局、朝のセックスを済ませた後、俺たちは急いで大学に向かいムラや椎名さんと共に今回の大学祭最後の屋台売りに参加して片付けをした。
結果的には去年よりも商品を売り出すことが出来て、それなりに成功したと言えよう。若干終わりかけのムードの中、片付けが終わった後俺は涼音を連れ出した。
終わり気味ではあるがじっさいのところ、より祭りっぽくなるのはここからなのだ。
「よし、涼音!」
「きゅ、急に引っ張って何ですかぁっ」
「祭りはここからだぞ! ほら、楽しまないと!」
「わ、分かってますってぇ~~、ま、まだ腰がいたので引っ張るのはっ」
「いいからぁ!」
「も、もう~~‼‼」
——と張り切りながら始まった大学祭後半戦もあっという間に幕を閉じたのだった。
そして、最終日もあっという間に終わり、一区切りつけようと行われたお疲れ様会の後の二次会を早々に抜け出した俺と涼音は帰路に立っていた。
「あのぉ、先輩?」
「ん?」
「私に時間使ってくれるのは本当にうれしいんですけど……というか今すぐかえって先輩の棒を入れたいくらいなんですけどね? せっかくの二次会抜け出してきてよかったんですか?」
「……おい、最初の話余計じゃないか?」
「へぇ?」
「……はぁ。まあいいか。別に俺、飲み会とかそう言う席があまり好きじゃないからなぁ。こういうときはささっと抜け出して帰るのが一番だよ」
「せ、先輩――私に時間を作ってくれたんじゃないんですか?」
後頭部で手を組んでだらっと言い返すと返ってきた言葉はどこか虚ろなもので、慌てて隣をむくと光のない目が俺の顔を見つめていた。
「あ、そういうことじゃない! も、もちろん涼音と一緒に帰るっていう意味だよ!」
「ですよね~~! 私ったらいらぬ心配を……まさか、あんな夜を一緒にしたのに今日は何もしないのかと思ってましたぁ~~」
「え、今日するの⁉」
「……しないんですか?」
いや、別にしたくないわけじゃないが……いいのか?
というのも一昨日も昨日も一緒のベッドで寝たからお互いに浸かれていると思ったのだが……まじ?
てか、思えば涼音って一緒に寝るとくっついてくるし、なんなら自分からし様ってせがんでくるし……こういうのって本来男が誘うのが普通じゃなかったか?
もしかして、今はジェンダーレスが流行ってるからそうでもない? 女性も積極的になったのか?
「いや、別にしたいならするけど……」
「——」
少しだけそっぽを向いて頭を掻きながら返すと今度はジトッとした冷たい視線を向けられる。
「あ、あのぉ……?」
「どうして先輩の方から誘ってくれないのかなぁ……私ってもしかして嫌われてるのかなぁ~~」
「んっ!?」
訂正しよう。
確かに彼女は性欲も強くしたいと言ってくるが別にそれだけじゃない。
彼女は彼女なりに一端の女の子だったらしい。
「俺だってしたい」
「っうへぇ……その言葉を待っていたんですよぉ?」
表情を溶けたアイスのようにでろーんと崩す涼音。
うへへとおかしな笑い声と涎を垂らしながら顎に両手を当ててそれはもう嬉しがっていた。
ここまで喜んでくれるのは嬉しいが——正直、俺の体がもつのかは心配だな。
翌朝、目が覚めると隣で一緒に寝ていたはずの涼音はいなかった。ただ、部屋の台所の方から何やら声が聞こえてくる。
初めてをした日の朝と似たような日差しで、カーテンの隙間からリビング照らされている。
そんな間を俺は眠たい瞼を擦り、立ち上がる。台所に向かうとそこにいたのはエプロン姿の涼音だった。
「あ、先輩っ、おはようございます」
「お、おはよう……」
「眠そうですね?」
「まぁな。昨日もその、あれだったし……」
「えへへぇ、昨日はもう求めっちゃいましたからねぇ」
とまぁ、彼女の言う通り誘ったのは俺であるが昨日の涼音は凄かった。
どんな感じなのかはご想像にお任せするとしよう。
というよりも、正直。
今の俺にはもっと気になっていることがあるからだ。
「んで、さっそく質問いいかな?」
「はい?」
みそ汁をすくったお玉で味見をしながら不思議そうな目でこっちを見る。
何も感じていないのか、それとも気にしてすらいないのか――いきなり積極的になり過ぎな気もしなくもないが。
「——どうして上裸でエプロンなんだよ」
そう、彼女はパンツ一丁の生まれたままの艶めかしい肌を晒しながら胸はエプロンで覆い隠している、言わば裸エプロンだったのだ。
「男の人はこれが好きなんですよねぇ?」
「まぁ、好きだけど……ちょっと刺激が強すぎる気がするんだけど?」
「裸も見たのに今更何を言ってるんですか?」
「早すぎだろ……見たって言ってもまだ数回だけで」
「これから毎日見ていくんですよぉ? おばあちゃんになってもずっとみるんですからぁ~~別に恥ずかしがらなくてもいいですよ?」
「……そ、そうか」
これが一途ってやつだろうか。
若干ずれてる気もするけど、多分そうなのだろうな。
とはいえ、ここまで攻められて俺も我慢できる男ではない。
一度緩んだひもはずっと緩むという言葉を涼音に教えないとだな。
「——っ」
「ふぁっ⁉ な、何を⁉」
「涼音が悪いんだよ……こんな格好でうろつくから」
「ふぇぇ……ぁっ」
途端になくなる涼音の覇気。
別に無理しているわけでもないとは思うが、今の俺はこいつのあやし方を知っている。
こいつがしてこないと思っていることを不意にすればいい。
ただそれだけだ。
後ろから露わになった綺麗な背中に覆いかぶさるように俺は手を前に回して涼音に抱き着いた。
耳元で鼻をすするとシャンプーのいい匂いがして、こっちまでやられそうになる。
「可愛いな」
「っ——」
「顔、赤くなってるぞ」
「いじわるですぅ……」
「ははっ。お返しだ」
「うぅ……」
しかし、どこか嬉しそうに微笑む彼女。
「ぁ……あの」
「ん、なんだ?」
「このままずっと抱きしめていてください」
「それじゃあ大学に行けないぞ?」
「……それまででいいので、お願いします」
「あぁ、分かったよ」
そう言うとはにかんできゅっと俺の腕を掴む。
弱弱しい掴みに少しやられそうになりながらも俺は涼音をひとしきり抱きしめていた。
ヤンデレで、そして乙女で、加えて純粋な――俺の後輩。
彼女はこれからも俺の隣にいてくれるのだろうか。
ただ、今の俺はこれだけは知っている。
俺はそんな涼音が大好きなのだと……。
FIN
PS:次で最後です。SSを書こうかなと思っているので!
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