第30話「白色のワンピース」


 あっという間にその日が来た。

 朝から行くということで三苫さんの家に迎えに行くか? と尋ねてみたのだがなぜだか駅前の公園で待ち合わせしたいとのこと。俺と行くのが嫌なのか、まぁ彼女にいたってはそんなことないだろうけど、少し不安だった。


 とはいえ、女子との二人きりのデートだ。あまり下手なことはできない。

 いつものように大学から一緒に帰るのとは少し違うため、しっかりと髪もセットして、服装もアイロンがけした綺麗な白Tシャツに黒色のスキニー、今まで使いどころが分からなかったネックレスも着けていた。


「……これ、似合ってるかな」


 着けてみたものの俺なんかに似合っているのか、また不安になる。まぁ、そこまで派手じゃないから大丈夫だろう。とにかく今日は大学祭を回る時に着る浴衣を買いに行くだけだ。それ以上なことはしないのだからもっと気楽に、だな。


 数分ほどスマホをいじりながら待っていると奥の方から彼女がやってきた。


「お待たせしました……先輩っ!」

 

 いつも通りの何か企んだ笑顔、今日も可愛らしい声で彼女はそう言った。

 服は大学によく着てくるパンクな服装ではなく、今日は白いワンピースに黒いベルト、そして少しだけ透けているキャミソールで胸の大きさがいつも以上に強調されるものだった。


 さすがにエッチすぎないかと思っていると。


「どうかしましたか、私の胸の方を見て?」

「んっ……いや、そういうわけじゃなくて」

「そういうわけ……何ですかぁ? 私、そんな想像してなかったんですけどぉ? なんで見てるんだろう~~って見てただけなんですけどねぇ」


 これもまたいつも通り、唇に指をあててにひっと笑みを浮かべる。


「だ、だからそういうわけじゃなくて……ただ目立っちゃうなぁと」

「私に似合ってないから目立っちゃうってことですか? ひどいです……」

「そんなこと言ってないだろ……ただ、そのいつもは着ない服だし、街中でその服はなんだかなって思っただけだ」

「——えっちだと」

「……」

「あぁ、そういうことなんですね、せーんぱい?」

「ち、違う」

「あれれ~~、顔が赤いですよぉ」


 近い……俺が顔を動かしたらほっぺに唇が当たるって……。

 ほんと、何考えてるんだよ……この後輩は。


「い、いいからっ……早くいくぞっ」

「えっあ、っちょ、待ってください~~!」


 結局、このままでは丸め込まれてしまいそうな気がして俺は彼女の手を引いて駅の方へ向かった。




「もう、先輩っ、悪かったですよぉ~~機嫌直してくださいよぉ~~」

「別に怒ってないって」

「嘘つきですよぉ……だって私が何か言う度そっぽ向くじゃないですかぁ」

「そ、それは——」


 それはもちろん。

 今の三苫さんの格好が俺の性癖に刺さるからだ。よく、昔見ていたアニメのキャラに似てるし、いつかこういう女の子と海に行きたいと思っていた。それがこうも間近に、なにより俺を慕ってくれる可愛い後輩が着ているとなると少し変な気が起きそうだから。


 無論、そんな理由で手を出すわけにもいかないためなんとか自制している所なわけだ。だいたい、目立つ胸が腕を組んでくるせいで俺の右手にジャストフィットしてるし、なんて言っても周りからの視線が辛い。


「周りを見てくれって……む、胸当たってるし」

「え、あぁ、これが嫌だったんですか?」

「……色々と目立って恥ずかしかっただけだよ」

「あははっ……可愛いですね、先輩」

「うるせぇ、そっくりそのまま返すよ」

「……私、可愛いですか?」

「そ、そうだ」


 少し恥ずかしかったので言い返してやると三苫さんは足を止めて少しだけ頬を赤らめさせた。


 にまっと嬉しそうに笑うと、すぐさま止めた足を動かして俺の元へ駆け寄ってくると——


「先輩っ‼‼‼ 好きですぅ~~っ‼‼‼」

「うっ⁉」


 大きな胸を揺らして飛び掛かってくる三苫さん。

 たゆんと揺れたそれが俺の懐に潜り込んで、周りの、特に男からの視線が痛く感じた。


「お、おいっ……」

「せんぱぁい……かっこいいですぅ」

「こ、ここでやるなって!」

「やっぱり好きですぅ……かっこいいし、ずるいですぅ」

「お、おいっ……」


 すりすりと顔を胸に埋められて、動けなくなる俺に通行人たちはヤバい視線を送られる。こっちとしてもどうすればいいか分からなくなった。







<あとがき>


 お久しぶりです、ふぁなおです。

 近況ノートでもお伝えしている通り、今秋来週は大学の期末試験がありそちらのほうを集中してやっていたので中々書くことができませんでした。楽しみにしている方々には本当に申し訳ございませんがもう少しだけお待ちください。来週の火曜日に最後の試験が終わるので今週中も投稿再開とはいえ不定期投稿になります。研究室の配属に関しても色々とやることがありますのでもう少しだけよろしくお願いします。


 本作も今のところ完結までの道のりが見えていて、おそらくあと20話以内で完結するのではないかなと思っております。ちゃっかりスニーカー大賞にも応募しているので応援よろしくお願いします!


 よろしければ近況ノートをご覧ください。僕の事をフォローしてくださると通知が来るのでもしよければしてみてください。


 近況ノート↓

https://kakuyomu.jp/users/fanao44131406/news/16817139557141851733

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る