第24話「アフタートーク(7/11編集済み)」

<三苫涼音>


 先輩の胸があったかいです……。

 ふわふわするし……、なんかすごくいい匂いがします。

 

「すぅ……」

「お、おまっ……嗅ぐなよ、臭いから」


 スンスンと鼻を揺らすと先輩は少しビクついて、胸が揺れる。

 すると、


「いい匂いなんですよぉ」

「汗とかかいてるって……」

「汗? それは、むしろ良いかもしれませんね~~」

「っぐ……さ、さすがにやめてくれって」


 追い打ちをかけると、男らしからぬ喘ぎ声をあげる先輩に居てもたってもいられなくなります。


 ぎゅっと抱きしめて、鼻から先輩成分を注入していきます。


 やっぱりいい匂いでした。

 汗のにおいに、柔軟剤の匂いが重なって先輩と抱きしめ合うことでしか感じられない匂いで凄く胸がポカポカします。


 あぁ、先輩。

 先輩、大好きです。

 すごく、すごく大好きです。


 一生、こんな風に抱きしめて寝ていたいです。

 このベット、いっそのこと私の家に持って帰ってもいいでしょうか。そうしたら、きっと先輩と寝れるし……残り香を嗅ぎまくれます。


 あ、でも、枕なら譲ってくれますかね……。

 先輩の枕で寝たらきっと先輩の夢見れますし……。


「せんぱい」

「……な、なんだよ」

「すごく、あったかいですね」

「え、まぁ……そうだな」


 気が気ではなさそうな姿にやられそうになる。きっと、今もドキドキして心臓が飛び出そう――なんて考えていますよね。


 そんな先輩が凄く愛おしくてたまらない。

 こんなことして、言わなくても先輩に好意は伝わっているはずなのに。


 どうして、何も返してくれないのでしょうか。


 ほんとに、手のかかるヘタレさんです。

 ほんと、もっと激しくてもいいっていうのにです。


「————あ、あったかいな」

「はい……おやすみなさい」


 私は当初の目的を忘れて、寝顔を拝むことなく寝てしまいました。










※視点変更


 朝、目が覚めると————というか元々目が覚めていたのだが。

とにかく、窓から差し込める夏の陽気を感じる日差しを肌に感じて手で影を作りながら俺は起き上がった。


 すると、横には寝息を漏らしながら気持ちよさそうに寝ている三苫さんがいた。


「まったく……昨日はほんと色々やってくれたよな」


 泊まると言ってくるし、一緒に寝ないとダメって言ってくるし、挙句の果てには抱きしめてほしいだなんて——普通に俺に好意があるのかと思ったぞ。


 いやまぁ、あるかもしれないけどさ。

 でも、大学生と言うのは割とノリでこんなことをする生き物なのだ。後輩だ。変に手を出したくはない。それに、俺も好きか嫌いか――聞かれたらまだよく分かっていない。


 俺はムラとは違うし、なんとなくで付き合ったりしようとは思えない。そう言う関係になるなら覚悟を決めて付き合っていきたい。


 まぁ、大学生としてこんな考え方だと凄くおかしいやつだって言われるけどな。


 そんなことを考えていると、三苫さんが「うぅ」と半目になりながら体を起こした。


「お、起きたのか?」

「……んん」

 

 ふらりと頭をくねらせて、目を擦る彼女。ポリポリと頭を掻くと見ている俺の方を見て、とろんと溶け切った声で呟いた。


「ぁ……しぇんぱい」

「あぁ、大丈夫か?」

「うへへぇ……しぇんぱい、ここにいます……家なのにどうしてでしょう……うっく」


 すると、ニヤニヤ寝起きの顔で俺に飛びついてきた。

 昨日から今日の朝までずっと当たっていた胸がもにゅっと沈んだ。


「——うぐっ」

「あはは……めっちゃリアルですねぇ」

「ち、違うって——」

「あ、あれ? どうしてここにぃ……さっきのお人形さんは」

「俺はお人形じゃないって……」

「もしかして……本物ですか?」

「あぁ」


 しかし、そう言ったところで三苫さんは何も変わらない。

 こんどはより一層嬉しそうな笑顔を浮かべながら、今度は飛び跳ねながら抱きしめようとしてきたのであった。







 

 


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