第19話「先輩と二人きりは楽しみですっ!」
三苫さんのお姉さんが帰った日の次の日から深雪のオーキャン最終日が始まり、俺と三苫さんもご飯以外はそれぞれの家でお互いのやることをするようになった。
ゴールデンウィーク後に始まる個別教師バイトのレジュメやシフト表を組んだり、実験レポートとプログラミングの課題をこなしてあっという間に時間が経って時計の針は18時の方向を指していた。
「あぁ……そろそろ深雪帰ってくるかなぁ」
手を止めて伸びをする。
これは工学部の情報学科あるあるだがパソコンと睨めっこしまくっていると首と肩が凝ってくる。
体の構造にはまったく精通していないので分からないが、何か溜まってそうなくらい硬くなっている気がする。普通に痛いまであるな。
伸びを終えて、席を立ち台所へ。数時間飲み物を飲んでいなかったので作っていた麦茶をコップに入れて、一口で飲み干す。
「あぁ……これはきまるなぁ」
作業後の麦茶ほど美味しいものはない。仕事後の一服じゃなくて、仕事後の一茶のほうがいいまであるな。
「ふぅ……とりま、あとはまとめて教授のメアドに提出するだけだな。楽ちんだっ」
振り返ってみれば高校の時に比べて課題の提出がかなり楽になった気がする。あの時は朝早く来て先生に直接出さないといけなかったし、忘れたらわざわざ学校まで行かなくちゃいけなかったからな。
自由な校風が売りのうちの高校なのだが、締め切りは絶対だったし、出さなくても怒られないが単位がもらえない。
そんな懐かしい思い出に比べたら――大学は何時でも出せれちゃうし、スマホさえあればどこでも出せてしまう。
とまぁ、そんな大学の良さの話なんてどうでもよくて、深雪が帰ってくる前に色々と支度をしなくちゃいけないな。今日くらいは三苫さんの料理の手伝いもしたいし、それにあの件も落ち着いてきたし。
なんて思っていると——噂をすれば何とやら、深雪からラインが入っていた。
『今日は友達が出来たので外食してきます! ご飯いらないよ!』
と頭の中がすっからかんな馬鹿スタンプと共にそんなメッセージが送られてきた。どうやら楽しんでいるらしい。深雪らしいが俺と違ってコミュ力が桁違いだ。
でもまぁ、楽しんでいるのなら嬉しい限りだ。
このままここの大学に来る理由になれば、親としても俺と一緒に二人暮らしすれば金銭的に楽だし。確かここのアパートの何個かの部屋は広めで二人で住んでもいい仕様になっている。
んじゃ、とにかく三苫さんに連絡しておくか。
そして、30分後。
俺が今一人でいることを聞いた三苫さんが一瞬でやって来た。
時間は30秒。
距離的には500mはあるはずなのに……100mあたり6秒。ウサインボルトもガトリンもびっくりだ。
台所の冷蔵庫を開けて相談する俺たち二人。
「じゃあ、今日は久々の二人だけでのご飯ですねっ——」
「そんなにかな?」
「えーと、一昨日? いや二日ぶりですね」
「それは久々って言わないんじゃないのか?」
「——私にとっては二日ぶりでも久々ですよ?」
「そ、そうか……まぁ人によってそこは違うか」
「(だって、先輩と二人で食べるの楽しみなんですもん……こういう時に限って時間って長くなっちゃうし)」
「何? 長くなる?」
「あぁ~~先輩の髭が長くなってるっていう話です」
「え、まじ?」
「はい、少しだけ伸びてますよ?」
「うわっ……早いなぁ伸びるの。あれか、脱毛しなきゃダメなのかなぁ」
「別にしなくていいですよ。私はひげ生えている先輩も好きなので?」
「え、ほんと? 女子って髭嫌いってよく聞くけどさ……」
「ほんとです! だって、髭さわさわしたいですし」
「え?」
「なんでもないですっ。とにかく、早くスーパー行ってきましょ! 外が暗くなっちゃうので!」
「ちょ、ま——剃らせt」
洗面台に向かおうと頑張ったが背中を押されて外にほっぽり出された俺だったのである。
<あとがき>
先輩の髭も凄くかっこいいのに。
大人っぽくて、色っぽくて……なにより血管が浮き出た腕とカッコいい顔に凄く似合うしっ。
だいたい、これを似合わないとかいう女なんてどうせゴミなんですから。やっぱり、先輩には私しかいないです!
えへへ、もっともっと先輩の事なら何でも受け入れちゃいますっ!
それに……先輩のお髭さわさわしちゃいたいです。
あ、もう剃ったやつ集めちゃうとかも? えへへ、他の人なら絶対嫌ですがなんか先輩のだけはすごく特別な気がして……ドキドキしますね。
妄想捗っちゃうなぁ。
先輩のお髭であそこいじめられちゃう……へんな性癖出来ちゃいそうです。
この責任は本人に取ってもらわないとねぇ。
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