第18話「4人でお食事」
家に帰ってから1時間ほど待っていると深雪が帰ってきて、それからすぐに三苫さんも帰ってくる。
ピンポーンと鐘がなり、玄関まで行ってドアを開ける。
しかし、開けてすぐに知らない顔と対面する。
「ふぅん、この子が三好一馬くんかぁ……」
「え⁉」
あまりにも急に知らない人と鉢合わせてしまい、驚きで声が漏れる。
驚く俺にニマニマと笑みを浮かべながら近づき、そのまま後退して部屋に上がられた。
誰だ、この人。
さっき三苫さんからラインが来たから鍵開けにきたら……知らないお姉さん。
黒髪ボブで、ダメージジーンズに露出が多めなTシャツ。体にぴったりと合っているので体のラインがしっかりと分かる。というか、胸がでかすぎる。どこかの誰かさんみたいだ。
「——はいはい、お邪魔しますよぉ~~」
さすがにこれ以上知らない人に入られるわけにはいかないと足を止めると、お姉さんはそのままわざとらしくこけたふりをして俺の胸に飛び込んできた。
「ひゃっ」
「うっ——ちょ!」
むにゅり。
大きな胸が俺の小さな胸にくっついて、そんな擬音が頭の中に流れて顔が一気に熱くなった。
柔らかすぎる。
なんだこの乳⁉
ってそうじゃない!! 誰だこの人! とにかくこんなことしている場合じゃない! それに三苫さんだっていないし、早く何とかしないとっ。
「うわぁ、えっちぃ」
「んなっ——」
「そんなにお姉さんの胸触りたいのぉ?」
しかし、俺の焦りも束の間。
お姉さんの後ろから知っている声が聞こえた。
「お姉ちゃん、何してるの?」
「うげっ……すず」
「ねぇ、私の先輩は奪わないって言ってたよね? どうして?」
「いやぁ、これは一馬君の方からね胸を触りたいんだって――」
「え⁉」
すると、三苫さんの恐怖の瞳の矛先は俺に映る。
「せんぱいっ——どうしたんですかぁ? 私と言う相手がいながら、こんな場所で、お姉ちゃんをはぐらかしてっ?」
スゥ―ッと距離を詰められて問いただされる。
怖い。
目が怖い。
あの笑っていない目で10㎝強の距離から見つめられて、背筋が凍るような気がした。
「あ、いや……えと」
またしても、妹の時と同じように真実を言えず、言葉が詰まる。
そんな俺を見つめて、より一層近づこうとする三苫さん。
さすがにこれ以上は——と思った時、先程のお姉さんが彼女の肩をトントンと叩き「やめなさい」と一言。
「——お姉ちゃん、なんで? 先輩がっ」
「冗談だからっ。ほら、いいから詰めるのはやめなさいっ」
「えっ——冗談って、じゃあお姉ちゃんがっ!」
「——いいの、ほら。結構真面目そうでいい子って分かったから。とにかく中に入るよぉ~~」
俺から三苫さんを引きはがし、グイグイと中に進んでいくお姉さん。
どうやら、彼女は三苫さんのお姉さんだったらしい。
そうか、さっき言っていた見せたい人と言うのはそう言うことなのか……。
いや、ほんとなんなんだよ。
食卓に三苫さんが作ったカレーとおかずにということで北海道料理のザンギが並び、四人で小さなテーブルを囲む。
「「「「いただきます」」」」」
両手を合わせ挨拶をして、カレーを口に運ぶ。
「うまっ」
「美味しいです!」
「えへへぇ……頑張りましたからねぇ。ありがとうございます。おかわりはあるのでいっぱい食べてくださいね!」
「さすが、我が妹。美味しいなぁ」
すいすいと食事が進み、ひたすら食べ続ける俺と深雪。
バクバクと食べ続けていると、いつの間にか鍋の中身もザンギもなくなっていた。
「はぁ……御馳走様でしたぁ」
「ほんと、うまかったよ。三苫さん」
「いえいえ、こちらこそ。お粗末様でしたぁ」
にこっと嬉しそうな笑みを浮かべる彼女。
そんな彼女にお姉さんは肘で突っついて、ニマニマ笑みを浮かべている。
どこかで似ているなとは思っていたが、この笑い方はお姉さん譲りだったのか。
「でも、ほんとに美味しかったのでまた作ってもらいたいかな」
「あら、すずにそんな誉め言葉して……狙ってるのかな?」
「え、いやぁ——」
「お姉ちゃん! 当たり前なんだから、そう言うのいうのはやめてよ!」
「あははぁ~~、そうかそうかぁ。この照れやさんめぇ」
ひたすらに三苫さんをいじり倒し、俺の前ではいつも強気な彼女もやはり姉と言う存在には勝てないようだ。
そんな二人を眺めていると、隣に座る深雪がお腹を抑えながらぽろっと呟いた。
「いやぁ、まさか私だけじゃなくて涼音ちゃんのお姉さんまで来るとは思いませんでした。なんか、こういう騒がしいのもいいですね!」
確かに、まさか三苫さんの家族は来るとは思ってもいなかった。実際、日にちまで被るとも思っていなかったしな。用意も何も出来てなかったわけだ。
「もっと早く言ってくれたら色々出来ましたよ?」
「用意? いいのいいの。私は様子見に来ただけだし、このまますぐに帰っちゃうから」
「え、帰るんですか⁉」
「うん。私、明日から仕事あるんだよねぇ……ゴールデンウィークの方が稼ぎ時だしさ」
「お姉ちゃんってバイト居酒屋だっけ?」
「うん。それこそ、来るのよね~~」
そう言えばお姉さんの年齢はいくつなんだろうか。大学生って感じではなさそうだが……。
「あの、そう言えば大学生なんでしたっけ?」
「私?」
「はいっ」
「あぁ、大学院生だね。一応、私も理系だからさ」
「え、ほんとですか?」
「うん。ちなみに一馬くんは何学部?」
「俺はえと工学部で……」
「あぁ、それなら違うね。私は理学部の化学科だからね。今は化学専攻コースかな」
「化学……ちょっと苦手ですね」
「ははっ。私にとっては物理とかの方が無理ゲーだけど?」
「そんなことないですって~~」
と二人の世界を構築していると横やりがぐさりと脇腹を突き刺した。
「ねぇ、お姉ちゃん。私の先輩を取らないでよ」
「え、あぁごめんごめん、ついね? 理系トークが」
「うぅ! どうして私が文系だからってさぁ! ……あ、あれだよね? 深雪ちゃんは文系よね?」
「え、私ですか?」
「私、理系ですね。数学得意ですし」
「ぐはぁ――!!」
生憎と俺たちの家系は理系脳が多い。
女性二人が理系と言う結果に打ちひしがれる三苫さんは声をあげてその場に倒れる。
それを見ながら笑い出す俺たち。
楽しい日々が始まった気がして、一瞬だけ――————あの再会を紛らわすことができた。
そんな気がした。
<あとがき>
シリアス目になってきましたが……二人の関係が崩れることなんてないのでお構いなく、これからの関係を構築していく上で必要かなって思って今書いてます!
あと10話もしないうちに山場が来ると思ってます!
あと少しで☆300、そしてフォロー1000人突破ありがとうございます!!!
皆様の応援が励みになってるのでどしどしコメントや応援マーク、☆評価よろしくお願いします!
アンチコメもヤンデレコメも、なんならふぁなお様コメも待ってます♡
なんか最近、僕の精神に三苫ちゃんが憑依し始めてる……うひゃああああ!
可愛い女の子見つけてヤンデレになろうかな(きも)。
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