第10話「のーぶらとのーぱん」



 三笘さんが帰った後、俺はシャワーで体を洗っていた。


「……なんか、むずむずするな」


 1日分の疲れを洗い流す場所だというのに何か胸元がむず痒い。試しにかいてみるがそのむず痒さは治らなかった。


 自分の家、自分のテリトリーで本来は落ち着くべきところなのにどうしてかムズムズする。


 不思議な感覚で、恥ずかしいとか緊張するとかそういう時に感じるものとはまた違う。


 痒いというか、なんというか、でも理由は明白で考えれば考えるほど意識してしまうものだった。


「さっきまで、ここで……」


 想像する。


 シャワーを浴びる裸体の三笘さん。スレンダーで、それでいて胸の大きな可愛くて美しい体が瞼の裏に浮かび上がる。


 綺麗な黒髪が水で滴り、あそこも胸もお尻も、お腹だって艶があって輝くように見えてくる。


 したいわけじゃないのに、後輩の裸が脳裏に過ぎる。


 自分でも思うが、後輩の裸体想像して何してるんだか。


「ってやべ……たってきやがった」


 やめだやめだ。考えるのはやめよう。ここには俺一人しかいなかった。そう思う。


 さすがに後輩の裸考えて、勃起なんて……バカかよ、変態すぎる。


 ただ、一端の大学生ならむしろ普通で、なんならその一線も越えていくのかもしれない。さっそく夜の運動会、なんて話が普通かも知れないけど、生憎と俺はそんな普通に染まりたいとは思っていない。


 せっかく、あの時助けた三笘さんを傷つけるのが俺であってはいけないからな。



 なんとか平然を装って風呂を出て、髪を乾かす。着替えはと考えたところで、そういえば三笘さんがジャージを着て帰ったことを思い出した。


「あれ、臭くなかったかな」


 今思えば、あれは先週あたりに寝巻きに使ってから洗っていなかった。パジャマみたいなものだし、別に一度しか着ていないからいいかな、なんて思っていたのだが運悪く三笘さんに着させてしまったのがそれだった。


 まぁ、特段臭いとは言ってなかったし大丈夫なのかな。ならいいんだけど本当は臭くて、めっちゃ嫌がっていたらどうしよう。

 こんなんで嫌われるのも嫌だ。


 適当に引っ張り出した部活指定のジャージを着て、ひと段落する。


 タオルを入れて、洗濯機を回し、30分ほど待ってから取り出した。


「……あ、そういえば三笘さんの服も洗濯してたんだっけ」


 女性の服を一緒に洗ってよかったのか、そんな疑念に駆られるがきっと三笘さんのことだ。嫌だとは言わないだろう。


 それに、選択したとはいえ普段から女性が着ている服を触るのは緊張する。


「って……はいはい、こういうのはダメって考えただろ」


 再び襲い掛かる邪な思いを潰し続けながら洗濯物を干し始めたのだった。








 のだが……その途中、唐突な事実が俺に突き刺さる。


「こ、これって… …」


 見たことがある形状のものが二つ。

 そのうちの一つは男は絶対につけることがない種類のものだ。


 水色の花柄に可愛らしいリボンがついた下半身に着けるであろうソレに、水色の花の刺繍が入っている湾曲がなされている大きめなサイズの上半身につけるであろうソレ。


 パンツとブラジャー。


 彼女たちが俺の目に挨拶していた。


「……おいおい、まじかよ」


 三笘さんの下着だったのだ。

 紛れもない可愛らしい後輩の下着が俺の洗濯機がから出てきたのだ。


 やばい、これはさすがにやばい案件だ。


 何より、やばいのは下着が入っていることじゃない。


 ここに三笘さんの下着があるということは……三笘さんはずっとノーパンでノーブラだったことになる!!!!


 あたふたが止まらない。

 衝撃の事実。


 スーツを着ていたときも、家に帰らせらた時も。

 なんならご飯を作っていた時も!


 ずっと、服の下は裸だったということだ。


 いや、そんなのは当たり前か? 

 ってそういう話じゃない!


 いやでももしかしたら三笘さんが部屋着はノーブラノーパンっていう可能性もあるし、一概には言えないのでは?


 いやいや待て待てノーブラはわかるけど、ノーパンはないだろうて! 女子だぞ? 色々あると思うけど!? だってほら、拭かないといけないもんな女子はな。


 ……何真剣に考えてんだよ俺は。


 とにかくだ。こんなのはさっさと干しとけばいいんだ。別に普通だ。下着は洗濯するためにあるもんな!


 はは!!





 またしても横暴理論に任せた俺は、忘れたころに押し寄せてくるパンツとブラジャーの存在に度々悶々とした時間を過ごし続けたのだった。





 童貞を卒業すれば、こんなこともなくなるのだろうか。

 まったく、これだから童貞は。







<三笘涼音>


 先輩のジャージがここにある。

 私の洋服は先輩のおうちにある。


 一緒だ。

 私も先輩もおんなじ状況だ。


「いい匂い……」


 嗅げば嗅ぐほど先輩の匂いがして、お腹の奥がキュンキュンする。

 いけないことをしているのに、なぜだか心が満たされていく。


 ぎゅっとジャージを包み込み、ベットの中に入った。


「せんぱい……はぁ……好きです」


 止まらない止まらない止まらない。

 好きって溢れ出てしまって、体が全然止まらない。


 先輩も私の服と一緒に寝てたりするのかな……真面目なあの人だから、傷つけまいと焦って考えて、結局気にしないようにするんだろうけど。


 先輩も男。


 何か間違えて、使ってくれたりしないかなぁ……。


「……私って、異常なのかな?」


 これって恋してる、だけだよね。







<あとがき>

 お久しぶりです、ふぁなおです。

 まずは第10話突破しました! ここまで読んでくれた方には最大限の感謝を。本当にありがとうございました。コメントをくださる方々にも色々と助けられている部分はあるので、改めてありがとうございます。ネタコメでもアンチコメでもなんでもいいのでしてくださるとうれしいです!

 

 まだまだ序盤で新キャラや新ヒロインを投入させていこうかなとか、二人の家族との絡み、夏休み編でのお泊り会など色々と考えているのでそれまで読んでいただければ幸いです。


 まだまだ多くの方々に読んでもらいたいのでフォロー、応援マーク、加えて☆評価をポチポチっとお願いします!

 

 ヤンデレ彼女って結構欲しいって思うのは僕だけですかね?





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る