第7話「ぱんつ見られちゃった」


 家に帰り、服を脱ぎ捨ててそのままシャワーへ。

 歯を磨きながら風呂が沸くのを待ち、1週間ぶりの湯船に浸かった。


「あぁ……」


 待ちに待った週一のお風呂。普段は水道代が高くなってしまうのでシャワーを5分以内に済ませるようにしているが、今日くらいは別にいいだろう。


 今日一日分の疲れと、色々とあった余韻に浸りながら風呂場で悶々と考えていた。


「いやぁ……にしても、三苫さんがねぇ」


 振り返ってみても、ここでこう再会できているのが奇跡だったと思う。


 中学3年生で彼女を救った時は我ながらよく妄想をしていた。三苫さんと付き合ったり、一緒に花火大会や文化祭に行ったり……よく考えたら気持ち悪いけど、若気の至り(?)ってやつだ。


 でも、高校に入って初めての彼女が出来てからというもの頭から抜けていた。昔から飽き性ではあったけど、それにしてもだ。


 それに大学入学と同時に別れてから、女子と仲良くすることなんてバッタリなくなったし、バイト先の先輩やサークルの定例会で話すくらいで脈も何もなかったのだ。


 そんな俺に不意打ちみたいな形で現れた三苫さんには……こう、なんというか。


 本当に何というか。びっくりだ。声に出ない驚きと言うか、ほんと偶然で、一瞬何が起きているのか分からなかったし。


 まぁ、何が言いたいかと言うと俺的には


 だって、可愛かったし……ってそんな下らない理由がないわけでもないけど。


 昔とは変わった感じを知れてよかった。少しあざといところとか、ちょっと何考えているか分からないところも全部含めて、当時の雰囲気とは結構かけ離れている。


 あのときの第一印象は大人しい子だった。

 帰り際に律儀にお礼だってしてくれたし、仕草一つ一つが女の子って感じで言うなれば大和撫子。


 ただ、今は少しヤンチャになっているというか、元気……いやテンションが高いの方が適切だろうか。それに、意地悪なところがいい感じに小悪魔感を醸し出している。


 だいたい、背は変わってないのに胸だけ成長してるし、今日の胸元が空いている格好はなかなか直視できなかった。しかも胸だけじゃない。肩とか、脚とか……顔立ちや声も変わってないようで変わっていて大人びていた。


 まったく、今の俺には眩しすぎる。


「……はぁ、惚れてしまいそうだよ。まったく」


 風呂場に響く深いため息。


 俺は全くもって真面目だ。


 別に面食いってわけじゃないがあそこまでスキンシップをされると……さすがにだ。俺も男だって言うのを理解してほしい。もしかしたら襲っちゃうかもしれないのに。


 まぁ、先輩としてそれは絶対にしないけどな。越えてはいけない一線を越えるつもりはない。


 結局、色々考えながら風呂に浸かっていると1時間ほど経っていて、のぼせ寸前で上がって寝る準備を整えていたのだが……事件はその時起きた。





 リュックを開けて、ひとまず教科書とか参考書とかを整理しよう――なんて思っていたら……。


「——え」


 絶句した。

 唖然も唖然、意味が分からなくて俺は頬を抓って夢なんじゃないかと確認する。


 しかし、どう考えても夢じゃない。感触も痛みも完璧に感じる。


 リュックから引っ張り出し、部屋の空気に晒す。すべすべとした手触りと心なしかいい匂いがするそれ。全国の女性が履いているであろう、絶対領域を守る壁。


 なぜだか、俺のリュックには白色のリボンのついたウォールマリアぱんつが入ってあったのだった。


 綺麗な刺繍が施されて、天井のランプにかざしたら透けて天井が見えそうな……そんなパンツだった。


 えろすぎね。


 と思わず思ってしまった。

 これでも俺は童貞だ。あまりにも刺激が強すぎる。

 女の子ってこんなの履いているのか? こんな、主張が強いっていうか……綺麗で美しくて、少しかわいいえっちなを。


 初めて見るに数秒ほど目が離れない。


「——って、何直視してるんだって!」


 さすがにのぼせてぼーっとした頭も覚めて、俺は思わず目を閉じる。

 すぐさま見ないようにしたが時すでに遅し。脳裏にはその可愛らしい白パンツがびっしりとこびり付いて目を閉じてもまぶたの裏に描かれてしまう。


 やばいやばい、どうしよう。と眠さと驚きから頭がおかしくなりかけて慌てまくっている俺には冷静に判断もできず、結局机の上に無造作に置いてしまい、睨めっこ。


 だいたい、どうして俺のリュックからこんなものが出てきたんだ? 下着泥棒でもしてしまったって言うのか?


 まさか、俺がそんなことするわけがない。

 酒も飲んでいない。まったくのシラフなんだ。


 だが、もしも本当にリュックにパンツが紛れ込むとすれば……あるとするならば、確実に。


「——三苫さんの部屋、だよな」


 いつ紛れ込んだのか、真剣に思い出していくが……俺はリュックをソファー横に置いていただけで、特段触った記憶はない。




『——先輩、洗濯機終わったので干してもいいですかね?』


『え、あぁ、手伝うよ』


『パンツもありますけど……いいんですか?』


『うぐっ……じゃ、じゃあ遠慮しておきます』




 ――洗濯物干してたこのときか?


 それならあり得る。ちょうど、物干しざおの近くにソファーがあるし、間違って入ってしまうことだってある……と思いたい!


 って、とにかくこんなところに広げてたら確実に変態扱いされるから……これはその、一旦保管しておこう。


 もしも、そうならきっと三苫さんも気づいているはずだ。慌てるな。俺はやってない。変態でもないんだ。正直に渡せば大丈夫なはずだっ。


 今はひとまず、ベットに入って寝る準備だな。




 ——結局、寝ることはできず、翌日急いで返しに行くまで生きた心地がしなかった。







<三苫涼音>


 先輩……私のパンツでやってくれたかなぁ。

 まぁ、先輩は良い人だしそんなことないよね。私としては……むしろしてほしいくらいなんだけど。


 汚して、返してほしいな、なーんて。


 ……あぁ、考えたら濡れてきちゃった。

 良くないなぁ、私は。


 もう、先輩の匂い……ソファーに残ってるし。いい匂いすぎだよ……。


 はぁ、先輩に抱かれたい。

 触れたい。

 犯されたいなぁ。


 いっそ私から先輩を犯してあげたいくらい。


 胸が張り裂けそうで、むしろ再会してからのほうがドキドキしちゃう。

 


 でも、好きだからいいよね? 



 このくらい……っ。

 三回目だけど……先輩っ……。



「んぁ……っぁ…………」














<あとがき>


 いいから黙って全員俺に投資しろってTwitterで呟いているエレンイエーガーです。


 ということでお時間あれば、星評価などなどお願いします。



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