第5話「お持ち帰りしちゃったぁ」


「お久しぶりですね、せーんぱい」


 綺麗な黒い瞳。

 長く伸びた綺麗なまつ毛。

 肩まで下ろした光沢のある黒髪。

 肩と胸元に穴の空いた真っ黒なスタイリッシュなTシャツに、足にピッタリとくっついたジーンズ。露出とぴちぴち具合から容易に身体のラインが分かる。


 そんな大人の色気を出しまくるコーデに身を纏いながら、俺の肩を叩いて微笑む彼女。


 あまりにも唐突な再会に声が出なかった。


「…………」


「あれ、大丈夫ですか、せんぱい?」


 見開いていた目の近くで手を振り、意識があるか確認しようとしている彼女を見て俺はハッとなった。


「……あ、あの時の」


「覚えてましたかっ? 私、5年前に先輩に助けてもらった三笘です! 三笘涼音です!」


 あの時の女の子は元気そうに笑っていた。

 

「お、覚えてるよ! もちろん! ……で、でも、どうしてこんなところに……」


 それにしても、まさかこんなところで再会するとは思ってもいなかった。もう俺のことなんて忘れて他の誰かと幸せにしている立とうと心のどこかで思っていたのに。


 この世界には偶然っていうのが本当にあるんだな。


「もちろん、先輩に会いに来るためですよ?」


「え、俺に?」


 ん、俺に会いに?

 その言葉に引っかかった。


「はい……だって、約束しましたし」


「……約束?」

 

「あれ、先輩約束したじゃないですか? あの時に」


「あ、あの時?」


 三笘さんが言っていたあの時が分からず、俺は昔の記憶を手繰り寄せる。彼女と会ったのは5年前。それも何日とあっていたわけじゃない。たったの1日のことだ。加えて、まともに話したのは別れ際だけ……。


 すると、電撃のように一言が頭に浮かんだ。






『はい……その、私はこれで。また、どこかで会えたら……絶対に』






 警察署から手を振って帰っていく三笘さんの姿と一緒にそんな言葉が思い浮かんだ。


 まさか、その言葉をまだ覚えていたというのか? それで、俺に絶対に会うためだけにきたと?


 おいおい、まじか。偶然ではなかったというわけか。


「思い出しましたか?」


「え、あぁ……でも、あんなの真に受けなくても」


「……え。その、迷惑でしたか?」


 ボソッと余計な一言を出してしまって三笘さんは少し悲しそうに顔を覗く。その顔を見て慌てて俺は言い返した。


「いやいや! 別にそんなことないよ! 久々に会えて、俺もその、嬉しいっていうかなんていうか……」


「えへへ……私も、嬉しいです。先輩と会えて」


「え、あぁ、そ、そうかっ」


「先輩は私と会えて、嬉しくないんですか?」


「もちろんっ。嬉しいよ」


「ありがとうございます」


 そう言うと三笘さんは嬉しそうに微笑んだ。

 心なしか頬が赤く染まっているようだった・


 まぁでも、確かに久々に顔を見れたのは嬉しかった。なんせ、俺が動かなければ死んでしまったかもしれない命だ。こうして笑っているのを見ると心の底からホッとする。自分はやるべきことをやれたんだなと、救ってよかったと思える。


 確かにあの時は色々とあったし、一瞬だったし、なんてたってテレビとかネットニュースとかに取り沙汰されて落ち着けなかった。だからこそ、今こうやって話していられるのは良いことなんだろう。


 せっかくなんだ。俺も色々と聞きたいことがある。どうしてあそこにいたのかとか、どこの中学校に通ってたのか。


 思い出話ほど面白いことはない。


 店長に適当にジュースを頼み、三笘さんに渡す。すると、彼女はちゅーちゅーと桃色の色っぽい唇で飲み込んだ。


 それに、どうしてこんなエッチなんだよ。と心の言葉が漏れそうになるが頭を振った。


 ひとまずは何学部なのか、聞こうか。


「そういえば、三笘さんってどこの学部なの?」


「私ですか?」


「あぁ、俺は工学部だけど。嫌だったか?」


「嫌だなんて、まさか! えと、私はですね、人文学部外国語学科です」


「人文か、それならあれか? さっきの椎名さんと一緒だな」


「あぁ、椎名さん……」


 すると、少し三笘さんの目がキリッとした。


 え、俺何か悪いこと言ったかな。


「あ、だ、大丈夫?」


「ん、あぁ! ごめんなさいっ! 私ったら……もう」


「は、はぁ」


「そうですね、学部は一緒ですね。椎名さんと」


「そうか……結構仲良さそうな感じだったから、それなら納得だな」


「(別に、あんなの仲良くありませんけどね。私たちにとっては毒ですし)」


「え、なんか言った?」


「いえ、言ってません。歴史学科とは海外の学会とかで共同で発表したりすることがあるので、仲良くならないとですっ」


 一瞬、何か言っていたようだが後輩が仲良くしてくれるのはいいことだ。うちの大学は結構、学科間のつながりが厚いし。


「それじゃあ、先輩は何学科ですか?」


「俺は電子情報学科だな」


「わぁ、すごいですね。私、パソコンとかちんぷんかんぷんですし」


「え、いやまぁ、俺も入るまでは詳しくなかったぞ?」


「でもすごいですよ? 理系科目ができる人って憧れますっ!」


「あはは……それを言うなら文系科目ができる三笘さんもすごいけどなぁ」


「英語だけは得意なので!」


「それじゃあ、俺が学会で発表する時には英語を教わろうかな」


「じゃあ、私も数学教わっちゃいます!」


「使わないでしょ」


「いいんです! 見返りですよ?」


「まぁ、そう言うならいいけど」


「はい!」


 久々の会話。


 あの時の出会いがこんなふうに繋がるとは思ってもいなかった。にこやかに、感情豊かに笑う彼女を見て本当に嬉しく思う。


 それから昔の話をしたり、あの日は何をしていたのかを話したりを続けて盛り盛り上がった。

 

 少し落ち着いて、飲み物をゴクリの飲み込むと三笘さんはこんなことを言ってきた。


「そういえば、先輩?」


「ん?」


「私には大学生活のことを教えてくれないんですか?」


「え」


 そういえば、確かに昔の話ばっかりしてしまった。

 すると、三笘さんはむぅっと頬を膨らませて俺を見つめる。


 どうやら、椎名さんに嫉妬していたらしい。なんか、可愛いいな。


「ご、ごめん、ついな。昔のこと色々聞きたくて……」


「むぅ」


「あはは……すまんすまん」


「わ、私だって……先輩のバイト先行きたいですよぉ」


「生徒としてか?」


「先生ですっ。私もバイト先なくて困ってるんですから!」


「ははっ。そうだな、今度紹介しておくよ」


「もぅ!」


「ごめんって!」


 上目遣いで怒りながら迫ってくる三苫さんに笑みが漏れた。



 そんなこんなで、歓迎会も終わり、時間は23時過ぎ。酔っ払っている先輩方は二次会をしようと話している。


「先輩は行くんですか?」


「俺はいいかな。酔っ払ってる先輩たち面倒そうだし」


「そうですか……じゃあ、私も帰ります」


「そうか、送ってくか?」


「え、そんなこと……あ、いや。その、先輩?」


「ん?」


「そういえば、その……パソコンとか詳しいですよね?」


「まぁ、そうだけど……なんか困ってることあるのか?」


「はい……ワードとか操作がわからなくて」


「あぁ、それか。確かに最初はわからないよな。いいよ、ついでだし」


「ありがとうございます!」


 にしても、女の子の家か。

 少しだけ、緊張するな。







<三笘涼音>


 えへへ、先輩が私の家に来てくれる。

 ちょっとパンツ、濡れてきちゃった……。


 あ、そういえばゴムとか準備しておいたよね、私。やっぱり初めては先輩に捧げないと。


 ……って、ダメダメ。私。

 早まるのは良くないわ。ひとまず今日からはちゃんと仲良くならないと。


 でも、わざと干しておいた下着に興奮して襲ってくれないかなぁ。



 それにしても、先輩……やっぱりかっこいいなぁ。








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