【Start playing】

『――ねえ、お兄ちゃん』

『これで何回目の呼びかけかな？』

『萌衣、数えるのも疲れた……』

『……』

『指折り数えるのも、カレンダーに印（しるし）をつけることも……』

『お兄ちゃんは別れ際に言ってくれたよね。萌衣は大丈夫だって……』

『……私を助けてくれたあの日、あの場所で』

『その言葉に、今まで支えられてきたけど……』

『そろそろ限界かな』

『やっぱり私はさびしいの……』

『ＶＲレターの返信欄を見るたびに思うんだ。ああ、今日も空っぽだって……』

『せめて私が送った物が、既読かどうか分かればいいのに』

『眠る前に、いつも神様にお願いするんだ。夢の中だけでもお兄ちゃんと会いたい、って……』

『……本当に馬鹿みたいだよね。あんなに強がりを言ったのに』

『お兄ちゃんと一緒に撮った写真や、通信記録を見返すたびに現実を突きつけられる気がするの……』

『……絶対に色褪せないはずの思い出なのに』

『タイムスタンプに記（しる）された数字に、会えない時間の長さを感じる……』

『今日の私はおかしいね。やっぱりお兄ちゃんへのＶＲレターは元気なときに撮らないと駄目だ……』

『だから今日はもう寝ます。お兄ちゃんと交わした約束を守れそうにないから』

『これがブンツウだったらいいのにな。手紙なら顔が見えないから』

『萌衣の悲しい顔も見られなくて済むのに』

『……』

『ねえ、お兄ちゃん。せめてものお願いがあるの』

『夢の中では萌衣のこと。しっかりと抱きしめてほしい……』

『お兄ちゃん、逢いたいよ』

【End of playback】

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