わたしがあなたに出来ること。
【Start playing】
『――おーい、お兄ちゃん。今、何をしてるの。おうちにいるのかな? それとも出かけているのかな?』
『萌衣は今日も変わらない朝だよ。学校に行く前に、挨拶がわりのVRレターです。
届くかわからないけど
『お父さんの書斎に入り浸りでお気に入りの音楽を聴きながら。すっごく幸せな時間なんだ!! そうそう普段は読まないようなジャンルも読んだよ。お兄ちゃんと会えなくなってから恋愛小説はなんとなく敬遠してたから、推理小説や、古い名作小説、それに作家さんのエッセイ。いままで食わず嫌いだったのがすっごく損だな、って思ったの。萌衣の知らない世界がまだまだいっぱいあるって!!』
『私、本を読むって大好き!! おうちに居ながらいろんな場所に旅行してるみたいだから……』
『お兄ちゃんのいる場所に旅行させてくれる本があったらいいな!! そんなことを考えてたら萌衣ね、すごく元気をもらえたの……』
『子供みたいでしょ? 自分でも馬鹿みたいだと思うけど』
『……きっとお兄ちゃんは、ここで笑うよね。萌衣はいつまでたってもお子ちゃまだって』
『でもね、私、決めたことがあるの。会えないことを悲しんでばかりじゃ駄目だって。お兄ちゃんが好きになってくれた私が可哀そうな女の子のままじゃいけないって……』
『だからしっかりと前を向くの。未来の自分をがっかりさせないような女の子になる!!』
『今はまだ内緒だけど、お兄ちゃんに会えたら嬉しい報告が出来るように萌衣、頑張っているよ。いつになるかは分からないけど応援してくれると嬉しいな』
『そうだ、いちばん大事なことを言い忘れてた!! お兄ちゃん聞いてよ。なんとあの音楽プレーヤーが直ったの!! そうだよ、私が階層間旅行でそっちの世界で忘れた物だよ。お兄ちゃんが送ってくれてから検閲期間も含めて萌衣の手元に届くのもかなり遅れたし、故障して聞けなかったけど。亡くなったお父さんの担当だった編集者さんがオールドタイプな機械に詳しくて修理してくれたの!!』
『……消えたメモリー部分も復活してバッテリーも新品にしてくれた』
『……お兄ちゃん、ずっと保管してくれてありがとう。萌衣の思い出の宝物、なくしたと思って本当に悲しかっんだ。亡くなったお父さんに無理を言って誕生日に買ってもらった物だから……』
『青色のミュージックプレーヤー。これ、小学生の女の子向けで、着せ替えが出来るんだよ!! 透明なケースに本体が入っていて可愛い紙ジャケットに変えたり、好きな写真を内側に入れられるの』
『当時、小学生の私にとっては値段も高くてすいぶん背伸びした物だから。買ってもらうために萌衣おうちのお手伝いを何でもやったよ。お父さんの小説の資料集めのお手伝いでしょ。お母さんの家事のお手伝いも。でも全然、大変だと思わなかった。反対に楽しかったよ、お父さんやお母さんにもよろこんで貰えるし、萌衣もいろんなことが覚えられたから……』
『……音楽プレーヤーは直って今すぐにでも聴けるんだけど』
『……』
『だけど萌衣、聴かないで我慢してるんだ』
『だって、これを再生しちゃうとお兄ちゃんとの思い出まで消えちゃいそうだし、何だか会えなくなるような気がするから……』
『――このまま箱に入れて大切にしまっておくよ。お兄ちゃんとまた会える、その日を信じて』
『お兄ちゃん、大好きだよ……』
【End of playback】
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