あなたの特別になりたい……。

『――お兄ちゃんから先に話してくれるかな』




『……何か言って』




『いつもは良くしゃべる萌衣がどうしたのって。ベ、別に意味はないよ、そういう気分なだけだから。そんなに心配そうな顔をしないで……』



『お互いに黙ったままだと、時間がもったいないから話すね。だからお兄ちゃんも顔を上げて、萌衣のことをよく見て。私ね、こうやってお兄ちゃんと話せる時間が、何よりも楽しみなの。今度、顔をみたら何を話そうか、学校の話、友だちの話、私が書いている小説の話もしよう!! そう思うんだけど、こうして面と向かうと頭がごちゃごちゃになっちゃうの。それにおしゃべりな女の子って嫌がられるかなと思ったんだ……』



『……お友達の真奈ちゃんは、いつも萌衣の聞き役になってくれるの。おっとりして、とても可愛い女の子。萌衣もあんなふうになれたらいいと思ったんだ。きっとお兄ちゃんも、そういう子のほうが好きなんでしょ?』



『……』



『お兄ちゃん、ありがとう。気休めでも嬉しいよ……。でも誉め言葉になってない気がする!! おしゃべりじゃない萌衣は別人みたいで気持ち悪い!? 僕は良くしゃべる君が好きだ、って』



『……地味に傷つくかも、私は本気で悩んでるのに』





『……』





『なんて、嘘だよ!! ありがとうお兄ちゃん、その言葉を聞いて安心した。萌衣は萌衣でいいんだ。それに真奈ちゃんみたいになって女子力アップして、他の男の子から好かれる必要もないし。私には大好きなお兄ちゃんがいるからこのままのおしゃべりキャラでいくね!! でも家事やお裁縫とかの腕前はもっと磨きたいけど……』



『えっ、真奈ちゃんのこと。そうだよ、萌衣の中学校は共学じゃないけど他校の男の子からも告白されるくらい、モテるんだよ!! だけど真奈ちゃんは全部を断ってるんだ。まだ怖いんだって、男の子と付き合うのが。それに言い寄って来る男の子のタイプが、チャラい人が多いらしいの、そういう人って何だかギラギラしてるっていうか、女の子を物みたいに考えてるっぽいよね』



『真奈ちゃんとも同じ意見だけど、外見は恰好良かったりしてもそんな人は嫌だな。たしかに最初は外見から入るけど向こうからグイグイ来られると引くよね。私は控えめな人が好きだな。普段は何も言わないけど私のことを見ていてくれて。そして萌衣が本当に困ったときにそっと手を差し伸べてくれる。そんな人が芽衣の理想のタイプ!!』



『……』




『……お兄ちゃん』




『……嬉しいよ、難聴系男子の話をおぼえていてくれて。今回はちゃんと私の告白が聞こえてるね。あんなに前の話題なのに』



『大丈夫!! 立候補しなくても。お兄ちゃんは出会ったときから私のタイプの男の子だから……』



『……萌衣も同じ気持ちだから』



『うん、大好きだよ。私もお兄ちゃんの特別になりたい!!』



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