第17話 なるほど、女には金がかかるというのは本当だな
朝からカーガン商会に出向く。
直ぐに応接間に通され、少しばかり待たされた。
出されたお茶に口をつける。この香りは……皇女様と会ったときに飲んだものだな。随分羽振りが良いようだ。
俺が飲み切る前に部屋のドアが開く。
カーガン会長が二人の少女を連れてきた。
二人の少女は俺が購入した奴隷だ。
ノエルとアーネラ。種族は二人とも俺と同じ人間だ。
別に俺は亜人獣人に偏見はない。獣人のニアとも仲がいいしな。
だが、一緒に暮らすとなると種族に違いがあると面倒なのだ。
食べ物の好みも違うし、習慣もある。同居するならやはり同じ種族が一番という訳だ。
ノエルとアーネラは揃ってスカートを摘まみ、俺に頭を下げる。
花の香水の匂いが鼻腔をくすぐった。
「お待たせ致しました。オルブスト様。ご購入いただいた奴隷をお連れいたしました。ご依頼通り、お預かりしている間に家事や魔道家具について教育しております」
「ああ、助かる。家を新しく買ったはいいが、俺がいない間は無人になるからな。無人の家は傷むのが早いと聞くし、管理者が欲しかった」
「左様でございますか。この二人ならば十分にお役に立てると自負しております」
「ああ、教育されているのが良く分かるよ。俺よりも教養があるかもしれないなぁ」
俺はそう茶化してみる。実際相当な教育をされているに違いない。
ノエルは俺の呟きに頭を下げる。
アーネラは僅かに遅れて続いた。
ノエルの方が少し行動が早いようだ。
「お役立て下さいませ、ご主人様」
「期待している。カーガン会長。このまま連れて帰ってよいのか」
「ええ、勿論です。登録は済んでおりますので。奴隷法には十分ご留意くださいませ」
「目は通してある。冒険者は案外ルールで雁字搦めだからな。心配するな」
そう、自由人だと思われているが冒険者は守らなければいけないルールが多い。
帝国法もだが領地によっても一部の法が変わる。
カーガン会長はいかにも大げさに恐縮する。
握手を交わし俺は立ち上がる。
少女二人はすぐに俺の後ろに回った。まるで部下のようだ。
「また何かありましたらご利用ください」
「ああ、頼む」
カーガン会長に見送られ俺たちは商会から出る。
とはいえすぐにはそんな機会はないだろう。
なんせこの二人だけでちょっとした財宝並みの価格なのだ。
本来気軽に買えるような奴隷ではない。俺は買える。
後ろを見ると行儀よく二人が着いてきている。
見た目だけでは奴隷には見えない。今着ている服は年頃の子が着るものだが仕立てが良い。ドレスでも着せてやれば貴族の令嬢でもいける気品がある。
着せ替え人形にするのも楽しいかもな。
俺は冒険者の例に漏れずコレクター気質がある。
不思議なものでダンジョンからは様々な道具が発生し回収できるが、売れ筋ではない道具は安かったり売れるのに時間がかかる。だから割とため込む。
金銀財宝は割と国が買い取ってくれるし、処分も容易いので収入はそっちが主だ。魔剣ならすぐ高く売れる。
その中にはこの二人に似合う衣装も混ざっていたはずだ。
ドレス型の道具もあっただろう。着飾ってやるのも面白そうだ。
機嫌をよくする俺に二人は黙ってついてくる。
大方俺が変なことを考えているのだろうと察したのか。
ま、奴隷とはいえ本心からの忠誠は期待していない。
二人は待遇をよくするために俺に尽くせばいいし、俺はこの二人を便利に使えればいい。目の保養になるしな。
俺は長い髪の女が好きだ。
その点この二人は共に美しい。亜麻色の長髪と銀色の長髪。
少女達の見目麗しさと合わさり、可憐という言葉がよく似合う。
俺は良く利用する商会に入り、少女たちの日用品を買い込む。
俺には流石に分からない。だが主人として不便をさせるわけにはいかない。奴隷が舐められるのは俺が舐められることだからな。
女の店員を呼び、少女達に必要なものを任せる。少女達にも遠慮くなく必要なものを言わせる。金で買えるものに遠慮はいらない。
下着に着替えに、肌や髪の手入れ用の美容品など、あっという間に山となった。
女には男よりも身支度に手間がかかると聞いたが凄いな。
俺の好みの服も大量に買う。この二人には俺の目を楽しませる役目もあるのだ。
奴隷の二人はいちいち俺に構わないか聞いてくるが、これはまぁ仕方ないだろう。
確認せずに不興を買うリスクは負いたくないのは分かる。奴隷ならなおさらだ。
山となった荷物を俺の家に届けさせる。明日には届く手筈になった。
女の店員は満面の笑顔で会計をしてくれた。
これだけ買えば中々の値段になるからな。さぞ嬉しいだろう。
沢山儲けて良い品を仕入れてくれ。
帝国金貨で支払う。二人の消耗品は定期的に届けさせるため釣りはそのまま預けた。
やれやれ、女は確かに金がかかる。
二人は初日から自分たちの為にこれだけ買い物をするとは思わなかったらしく、顔に動揺を出しながら俺に礼を言う。
俺はお前らが思っているよりもずっと金がある。
冒険者の頂点とはそういうものだ。
あ、金といえば金貸しから利子を受け取らなければいけない。
俺は家を空けることが多いからこっちから出向く必要がある。
銀行は手数料はともかく、一度金を入れると出すのが大変だから利用したくない。
これからはこの二人が居る。家に届けさせればいい。
家に奴隷がいるというのは便利だな。早速価値を感じる。
「もう一つ寄るところがある。ついてこい」
「はい」
文句も言わずについてくる。
余り長々と連れまわすのも疲れさせてしまうか。これが終わったら帰宅しよう。
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