第2話 ギルド長、ちゃんと飯食ってるか?

 話し合いはとりあえず決着し、パーティーは解散することと相成った。

 まぁ、俺としては勿体ない思いもあるが十分に恩恵を受けていた訳だから文句はない。

 正式に解散するのは明日ギルドに報告するときに、ということにし俺はパーティーで借りてる自分の部屋に戻った。


 あ、この部屋も引き払わないといけないな。装備やら貴重なアイテムは自分で倉庫を借りてるから良いが、家具は良い物を買ってあるから次の部屋を見つけて移さないと。

 あゝめんどくさい。

 しかしカスガルとレナティシアが結婚か。全く気が付かなかったな……。

 恋愛の機微とか分らんし。


 娼館で女を買うくらいはするが、冒険者でくそ忙しいのもあってあんまり興味もなかったんだよな。

 カスガル達はそれがしんどくなったのかもしれない。

 まぁいい。今日はもう寝てしまおう。


 次の日、俺達はギルドにて正式にパーティを解散した。

 帝国最強とまで言われたのに、呆気なくあっさりとしたものだ。

 ギルドを通さないと解散できないパーティーというだけでも大したもの



 カスガルとレナティシアはほっとした様子で、これからの生活が忙しいとさっさと帰ってしまった。

 俺もそれに乗っかっていこうとしたらギルド長に止められてしまった。

 俺も話したいことがあったし、留まることにした。


「悪いな」

「いいですよ、別に」


 帝国のギルドのトップ。ギルド長マーフス。

 長身の痩せぎすの男。見た目の眼光には強い力がある。

 このパーティーが伸び始めたあたりからの付き合いだ。


「……この仕事をしていると才能と向き不向きというものをまざまざと見ることになる」

「でしょうね。向いてるのに才能がなくて足踏みする奴はたくさんいる」

「そして今回のように比類なき才能が有りながら、長く続けることを望まない者もな」

「そう言うなら止めればよかったじゃないか」

「無理に止めて姿をくらまされても困る」

「それはそうだが……ああ、そう判断するぐらい本気だったから止めなかったか」

「そうだ。天騎士、お前はこの先どうする?」

「俺はまだ冒険者を上がるつもりはないよ。まだ金を稼ぎたいし、冒険者をやめた後を考えればもっと名声があってもいい」


 聞きたいのはそこだったようで、マーフスは少しだけ姿勢を楽にした。

 ギルド長なんてたいそうな立場でもやる事はただの管理職だからな。

 全く大変だ。苦労を掛けたのはパーティーメンバーだからわざわざ言わないが。


「……ならいい。皇女殿下よりお褒めの言葉を授かるのにそのパーティーがもう冒険者じゃありませんでは困る」

「ま、最悪それは俺一人出れば十分だからな」

「お前は二人と違って貴族の方々との交流も積極的にしていたんだったな」

「当たり前だろ。まぁあいつ等みたいなそれなりの店を出す程度なら商人と仲良くするくらいでいいけど帝国の中心を見据えると、付き合う相手はそりゃ貴族になる」


 話は終わりだ。俺も席を立つ。


「これから更なる活躍を期待している」

「ああ。ありがとよ」


 ギルド長の部屋から出る。

 ギルドの中はいつも通り騒がしい。

 今日はもう用事はない。仕事の後は必ず三日の休みを取ると決めている。

 ギルドから出ようとすると、より騒がしい声が聞こえた。


「天騎士! 天騎士様~~」


 よく通る声が耳につんざく。

 この奇麗だがバカでかい声を出すのは一人しかいない。


 駆け寄ってきたのは軽装備をした女、というよりまだ少女だ。

 露出した太ももがまぶしい。そして頭には猫の耳が生えている。


「パーティー抜けたんですよね! うち入りましょう。歓迎しますよ!?」

「うるせぇよニア」


 獣人のニア・ノアだ。

 うっとうしいのが来たな。なんせ勧誘がしつこい。

 こいつのパーティーは優秀だし、勧誘自体はよい条件だが……


「お前らのパーティー前衛しかいないじゃないか」


 そう、バランスもくそもないのだ。こいつらのパーティーは。










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