帝国最強の冒険者パーティー、突然の解散。結婚するから冒険者隠居する?店も出したい?安くするから遊びに来い?それなら仕方ない。幸せにな!
HATI
アリエーズ帝国編
第1話 結婚おめでとう! 今日からソロかよ!
七日間かけて、俺達は国境近くの山脈地帯を根城にした竜の群れを掃討した。今までの依頼の中でもあらゆる意味で1番危険な依頼だったが帝国最強と言われている俺達は成し遂げた。
火の支配者、パーティーリーダーのカスガル・ノアロード
癒しの聖女、レナティシア・グレメンド
天騎士の俺、アハバイン・オルブスト
僅か三人ながら、帝国全土の冒険者の中で最も高い貢献度を持つパーティーだ。
この三人で組んで四年。当時まだ若輩で伸び悩んでいた俺達は一気に飛躍しこのポジションに辿り着いた。
富、名声、地位。ここまで来ればなんでも手に入る。勝ち組だ。
ここまで来るのに決して順調だった訳じゃない。
しかし、やり遂げたのだ。
今回の依頼である竜の群れ退治だって、ギルドからの指名依頼だ。
依頼元は皇女殿下の名前が記載されていて、報奨金も並外れている。
帝都の一等地に立派な家が建つだろう。
ほぼ何も無かった時代から、良くやったと褒めてやりたい。
俺達は帝国軍に竜の群れ退治の確認させ、依頼を完了させた。
恐らく後日依頼人である皇女殿下から直々に招待される筈だ。
俺は興味ないが、もし仕官する際にも箔がつくだろう。
そう考えていると、パーティーリーダーのカスガルに部屋に招かれた。早く休みたかったが、それは向こうも同じはず。
部屋にはレナティシアも居た。
一体何の話なのか。
分け前の相談ではない。このパーティーは基本的に頭割りだ。
三人+消耗品やパーティーとしての出費などで一人。計四等分。
今回はダンジョン捜索じゃないし、竜の巣には金銀財宝はあったが特別な装備はなかった。(ちなみに金銀財宝は帝国が買い上げる形になった)
気になっていると、カスガルが右手を額に当て、大きく息を吐く。
彼が疲れた時によくやる癖だ。
「なぁ、アハバイン。俺達は十分貢献したと思わないか。この帝国に。今回なんて国の為皇女の依頼で竜退治だ。10は超える群れのな」
「あぁ、あそこは軍だって手を長く出せなかった場所だ。パレードだって開かれてもおかしくない位だよ。新しく開発も始まるだろうし、道も整備されるだろう。皇女殿下の名も上がる」
「だろうな。……もう十分だとは思わないか?」
「何がだ?」
「冒険者が、だ。アハバイン。相談もなくいきなりで悪いが、俺達は終わりだ」
いきなりの言葉に俺は驚いた。危うく顔に出るところだった。
「俺達は良いパーティーだと思ってだんだけどな」
「ああ、良いパーティーだったよ。良過ぎたんだ。あっという間にここまで来ちまった。天辺の景色は良いもんだったが、これから先もこうやって進まなきゃいけないのか? 俺はそうじゃない事に気付いたんだ」
カスガルはレナティシアを抱き寄せる。
レナティシアはカスガルに身を任せた。
「俺とレナは結婚する事にした。冒険者も隠居する。これはギルド長も了承した」
「知らなかったのは俺だけか。いやお前らが結婚するのはめでたいし、お似合いだと思う。祝福するよ」
情報が多過ぎる。とりあえず祝っておくか。
このパーティーでそういう関係になるならこの二人しかないと思っていたし。レナティシアは美人だが、俺は髪の長い女が好きだからな。
「ありがとう。アハバイン、お前は上昇志向が強い。俺達は実力こそ並んでいるが、その部分だけは足並みが揃わないと感じていたんだ。金は十分ある。市民権もある。後はもう俺はレナが居ればいい」
今まで喋らなかったレナティシアが姿勢を正す。
「アハバイン。あなたは誰よりも頼りになる前衛だったわ。天騎士の名にふさわしいほど。どんな時だって前に立ってくれた。でも、私はもう危険をおかしたくないの。この子のためにも」
そう言ってレナティシアはお腹を撫でた。
なんてこった!
「子供が出来てたなら……今回の依頼だって断っても良かったんだぞ」
流石に俺はこう言うしかなかった。
皇女殿下からの依頼だが……決して断れない訳では。
「アハバイン、ありがとう。今回の依頼は色んな節目になると思ったの。何より、これからがずっと楽になるわ。アナタも、私達も」
「それはそうだが……これからどうするんだ?」
「店を出そうと思う。目処もついてるんだ。商人の知り合いにも事欠かなかったからな」
「お前のメシはそりゃ野宿の度に美味いと思ったが」
「食いに来てくれよ。安くするから」
今まで疲れた顔だったが、店の話となると随分元気になった。
そうか。本気なんだな。
帝国最強のパーティー。あっさり俺の居場所は無くなってしまった。
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