手紙

ピンポーン


インターホンの音で、僕は目が覚めた。


時刻は、7時を回ったところだった。


「誰?」


「わからんけど、でるね」


僕は、はちの腕から離れた。


昨日、あのままシャワーを浴びて八に抱き締められながら眠ったのだった。


パジャマを整えて、玄関を開けた。


ガチャ…


「おはよう、きゅう


さん、おはよう」


「ちょっと話せる?」


「うん、ちょっと待って」


僕は、扉を閉めて部屋に戻る。


「八、ちょっとだけ話してくるわ」


「うん」


僕は、八に水を渡す。


僕も、水を飲んで服を着替えた。


玄関を開けて、外に出る。


「なんか、三にしてはかっこいい服やな」


僕は、三の服を見つめて言った。


「ちょっとだけ、裾みじかない?」


「竹君の服やから…。」


「あっ、そうなん。それは、ちょっと身長ちゃうか」


「うん」


四人の中で、三が一番高い。


「三は、178やったよな?」


「うん。」


「竹君は、176センチやったっけ。僕が一番チビすけやな」


僕は、気まずくならないように話した。


「そこで、話そう」


三に言われて、家の近くの自販機の近くに行った。


「昨日は、ごめんな。」


三は、そう言うと財布から紙を取り出して僕に渡した。


「これは、九にも読んでもらいたい。」


そう言われて、僕は手紙を広げる。


【三へ】


あの日、三が八を好きかと聞いたけど、俺は八を愛してるよ。確かに、三が言ったみたいに、もし取られるなら嫌だな。俺は、死んでいなくなるけど…。愛まで、奪われるのは嫌だな。俺だって八に愛されたいよ。だから、九にとられたくない。だから俺は、そうなったら九を絶対許さない。三には、ちゃんと伝えときたかったよ。俺の本心。

スッキリしたよ。ありがとう


【たつ】


僕は、その紙を握りしめて泣いた。


「最後の言葉は、嘘やって。昨日、竹君に聞いた。ごめんな。俺、知らんかった。本心やって、思ってたから。」


「そっか、三は知らんかったんやな。兄ちゃんが、嘘つく時とお願いする時だけ僕を九と呼ぶの」


「だから、九に酷いことゆうてごめんな」


「ええよ。別に…。気にしてへんから」


「八さんと幸せになるんやで。」


「ありがとう」


三は、そう言って行こうとする。


「三、これは、返すよ。それと、三の話もいつか話せたら聞かせてよ。好きな人いるんやろ?」


「うん、いつか九に話せる日がきたら話すわ。じゃあな」


「うん。気ぃつけて」


「ありがとう、またな。」


「うん」


僕は、三が見えなくなるまで手を振っていた。


僕が、部屋に戻ると八が服を着替えていた。


「もうすぐ、帰るな。九も、ご両親のとこに帰るやろ?」


「八、兄ちゃん。許してくれてた。」


「ホンマか。さっきの子が教えてくれたん?」


「うん。さっきのは、幼なじみの三。いつか、三におうてくれる?」


「うん、ええよ」


八は、手を広げて僕を抱き締めてくれた。


「八、僕のどこが好きなん?」


「嘘つかれへんとこ」


「それだけ?」


「笑顔がかわいいとこ」


「なんか、恥ずかしいわ」


「全部好きやで。で、もっともっと好きになりたい。いつか、ちゃんと一つになろな。」


八は、頭をポンポンと撫でてくれた。


「ホンマに、ゆっくりでいいの?」


「ええよ。駆け足したくないねん。ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、そこに辿り着きたい。」


「それで、ガッカリしたらどうするん?」


「その頃には、もうそんなん関係ないぐらいの気持ちになってるよ。だから、九はなんも心配せんでええよ」


「わかった」 


八は、暫く僕を抱き締めてくれた。


「ほんなら、帰るわな」


「八、映画見に行かん?」


「いつ?」


「今日…」


「今すぐ?」


「ううん。実家にちょっと荷物持ってってから…。そやから、昼過ぎかな?」


「映画館近くの駅前に?11時半にしよか?」


「うん、そうしよう」


「ほんなら、また後でな」


「うん、気ぃつけて」


八は、僕のおでこにチュッとして出ていった。


僕は、荷物を積める。


確か、今日は父が休みだった。



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