第3話 目も合わせられない再会


「やっぱ一緒やったんやね」


 二日目ウォークラリー。グループごとに集合していると久保くんがやって来た。それに俺は軽く手を挙げて応える。


「白坂くんまだなん?」

「分からない」

「そうなんや。さみしーね」

「久保くんの方も昨日からいないみたいだけど」

「どうなんやろね。どっか行くって言ってどっか行ったんよね」


 白坂はさすがに一晩で戻ってこれはしなかった。朝御飯はかろうじて相部屋のみんなと食べさせてもらった。

 しかしさみしいものはさみしい。

 久保くんと同じクラスの男子は、昨日から姿を現していない。話を聞くだけだと不良にしか思えない。恐い。


「ま、よろしくな〜」

「よろしく」


 俺と話しているということで分かるだろうが、久保くんはウォークラリーで同じグループだ。

 久保くんが良い人っぽくて良かった。ほとんど無言を突き通していた俺にも話しかけてくれる。


「あら。二人しかいませんの?」


 背後から聞こえた高めの女子の声に、咄嗟に振り向く。


 そこにはガッチガチに巻いた赤い髪を持つ背が高めの女子と、ポニーテールでサイズ小さめの女子が立っていた。


 俺はその赤を見た途端、もちろん心臓が縮んだ。

 同じグループで赤髪って言えば一人しかいない。


 あいつだ。 


「そうなんよごめんなぁ」

「一紅衣様に気安い言葉で話すんじゃない!」


 久保くんが申し訳無さそうにすると、赤髪の隣のポニーテールが噛み付いてきた。

 背の大きさも相まって、赤髪の飼い犬のようだ。


 というか、あの赤髪、様付けで呼ばれていたような。

 ポニーテールは下僕かなにかか?


「そうなん? ごめんなさい?」

「誠意がない!」

「難しいなぁ」


 久保くんとポニーテールが話している間、視線を正面からビシビシと感じるが、すごく圧があって顔が向けられない。


「一紅衣様! このわからず屋な平民とは会話なされないでください!」


 なかなかに過激派だな。このポニーテール。

 久保くんも戸惑ってる感じだ。


「それにこちらの男とも! 一紅衣様がいらっしゃったというのに一言も喋らないのは失礼というもの!」


 えぇ……

 こっちにも弾飛ばしてきた。

 どう考えても俺という存在は無視でいいだろ。どこからどう見ても陰キャ野郎じゃん。触れないでくれよ。今友達いないんだから。(白坂を勝手に友達にしていいのか?)


「言い過ぎですわよ。わたくしは気にしてませんわ」


 ですわ!?!?!?

 現実でめったに聞かない言葉を耳にして、危うく赤髪の彼女へ顔を向けるところだった。


「なんて母なる海のように広い心……!」


 詩人かこいつは。


 早くこの時間が終わってほしいのでもう出発しませんか?


 こんなことが軽く言えたら俺はこんなに黙ってないんだ。



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