第2話 嫌なことがある前日ってちょっとしんどい
来ちゃった♡
ウワァァ!!!
ガキ時代共に野猿ってた女子が追いかけ回してくる夢を見た。
うちの学校の制服を着た顔の隠れた生徒だったが、それが“彼女”だと分かっていた。
普通に悪夢だ。
「バスってつい寝ちゃうよねぇ」
「……」
「あれ、まだ寝てる?」
「精神統一」
「なにそれ」
交流合宿当日。一週間悪夢に魘されマトモに寝られていない。
二日目のことを思うと地獄だが、もちろん一日目も同級生と関わらないといけないので疲れるだろう。今のうちに精神統一をして心を揺さぶられすぎないようにしないと。
……
「グボァッ!」
「ッスーー……」
交流合宿一日目の最初は四人グループで
俺と白坂は火と米担当であとの女子二人はカレー担当だったんだけど……わぁ不思議! 見た目はカレーの毒が皿に盛られているよ!
「ひぃん、すみません本当にすみません……!」
「なんでこんなに美味しくないのぉ……!?」
作った本人たちは泣きながら謝り嘆いている。
そういえば、この学校料理という言葉すら知らなさそうなお金持ちの子供が多いんだった……。
ちゃんとレシピは配布されてたんだけどな。
「し、白坂さんが白目向いてる……!」
白坂逝くな! 俺をこの状況で一人にするな!
なんで俺は無駄に毒耐性があるんだ。
交流合宿一日目から胃も腸も味覚も揺さぶられた。
そして夜。
それぞれの部屋で寝るだけだ。一クラス二名づつで一部屋計八名だ。
もちろん白坂も一緒なのだがあいつは今いない。
なぜなら昼の飯盒炊爨のショックでそのまま倒れたからだ。
泣きながら謝り倒していた女子の親が医者らしく、そのコネを使い責任取って白坂を健康体にすると意志を固くしていた。
こんなので若くして絶えるのはさすがにかわいそうなので頑張ってほしい。
つまり白坂は病院に送られて安静にしている。思わぬ方へ事が大きくなっている。恐ろしいカレーだ……
「Cクラスの
「俺飯山。トランプしようぜ」
ぼっちの俺にフレンドリーに来てくれたのはCクラスのやつだった。
釜田と飯山は他のクラスの面々も呼んだ。今一人(白坂を除く)がどこか行っていていないから六人だ。
そうすると、大富豪しようぜと言い出した。
金持ち率の高い空間でさらにS(金持ち)クラスのやつが二人いるというのに堂々とよく言えるなと感心した。
いや感心しちゃだめだろ。
Sクラスの三条くんも苦笑いだ。
「そういや、あと今いないのって白坂くんやろ? なんかあったん?」
方言で少し訛っている久保くんがハートの7を出しながら訊いてきた。
「7渡しありだっけ」
「アリアリ」
「飯盒炊爨で倒れて」
「火傷? 煙とか?」
三条くんが驚いたように訊く。
「うーん、カレーが凄くて」
「凄いって何だよ」
「毒、みたいなカレーで」
釜田を中心にみんなが不審そうな顔をする。
女子がせっかく作ってくれたものを毒と言うのは気が引けるがそれ以外の表現のしようがなかった。
「ふざけとるわけじゃなさそうやな」
「マジでカレー食って倒れたってコト?」
それぞれが顔を合わせて少し顔色を悪くする。その中で釜田と飯山が沈んだ表情であることを打ち明ける。
「俺ら、米全部炭にしちまったんだよな」
「女子ができる人らでホントに助かったんだよな〜」
一歩間違えてたら、と二人はぶるりと体を震わせる。
「他のグループでも事故は起きていたから気にすることはないだろう……人ひとり倒れるまではさすがに深刻だが」
そんな中初めて口を開いたのはSクラスのもう一人、
眼鏡を掛けた真面目そうな人。話し方も真面目そう。
「ウチのは美味しかったわ。僕なんもしてへんけど。
「緑が仕切ってくれたから何も起きなかったね」
美味しかったよ、と三条くんは笑う。
「緑?」
「あぁ、中緑くんのこと。ごめんね分かりにくい言い方だった」
「あだ名ってコト!? 俺も緑って呼んでイイ!?」
「やめろ」
ケチ! と飯山は膨れてみせる。
「久保はなんかあだ名とかあんの?」
「みんなからは“くぼやす”って呼ばれとるよ」
「それただのフルネームじゃね?」
「“し”消えとるやろ?」
“
「矢野センみたいなカンジ?」
「じゃあ康って役職名なの??」
英語科の矢野先生の呼び方でくぼやすを語るのは少し間違ってないか、矢野センはあだ名とはちょっと違うんじゃないか、というツッコミは浮かんで消えた。
「あがりだね」
「はぁああ!?」
「早すぎだろ」
のんびり話している間に颯爽とあがっていく三条に俺も驚きを隠せない。
俺は一切話に加わってないけど。
釜田と飯山は拗ねてふて寝した。
おい、風呂まだだろ。
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