第26話 変貌
電話で下に呼んだ六瀬の案内に従って、41階へ。
ここまで高いと、さぞ素晴らしい夜景が展望できるだろう。
部屋への通路までも、高級そうな素材で
「バスルームがガラス張りになってたら最高ですね!」
「俺はキッチンが気になるぞ。大理石のカウンタートップとかディスポーザーとかついてないかなぁ」
「マンションの
浮かれ気味の俺たちに六瀬が皮肉を込めて小言を言う。
かれこれしている内に部屋に到着。
靴を脱いで部屋にあがる。まず目についたのは、やたらデカい靴箱に並んだ大量のバスケットシューズ。どれも履いた形跡がないので、おそらく清滝のコレクションだろう。
そういやバスケ部だったな。
玄関を抜けリビングへ。そこに清滝はいなかったが、
「おおー!」
やはり大理石のカウンタートップ、そしてオープンキッチンだ。
パーティーが開催できそうな広さのリビングダイニングキッチン。
夕食を待つ
ふむ、住むのは気乗りしないと以前言ったが、こうしてみると悪くないかも。
「スゴイ! 東京湾が一望できますよ」
九里は、全面に張られたガラスに駆け寄って景色を楽しんでいる。
「話を聞け、この貧乏人共が……」
「悪い悪い。中々お目にかかれるものじゃないし、ついな……。それで清滝は今どこに?」
「……こちらです。事前に説明したことは記憶していますよね?」
「わかってるって」
清滝はかなり荒れているので、慎重に接するようにと事前に伺っている。まあ、聞く前から予想できていたことだが。
『きっと血走った目でエロゲーギャルゲーをひたすらやってるんですよ。でゅふふ……僕には○○ちゃんがついてるぅ……。三次元女はクソッ! 僕は二次元に生きる! って感じで』
これは、それを聞いたときの九里の
ふざけた話……と切り捨てることは出来ない。
何のためにエロゲーを手に入れたのかを加味したら、一度は思い浮かべる図だろう。実際ありえる。
六瀬がたくさんある扉のひとつに手をかける。
ここに清滝が……。
一度、
成績優秀、スポーツマン、イケメン。P4という奇跡的なカリスマ集団の一員で
同じくP4の
『ほら、数年前にあったじゃないか、県内で。ある高校の生徒が同級生を突然バットで殴った事件。加害者はインドア派で体型も大きかったと聞いたし、ほら、盆田くんにそっくりじゃないか。理梨が何か悪いことに巻き込まれないかみんな心配なんだ』
一年生終わりの直前、そんな悪態(といっても日常茶飯事ではあったが)をついたと思ったら、
『最低……! もう――二度と私に近寄らないでください!』
白雪にビンタされ、それ以来学校に来ていない。その余波でクラスは滅茶苦茶に。
俺との関わりはまったくといえるほど無かったが、一つだけ印象深い記憶がある。
ある日の体育、ペアを作って準備運動と練習をすることになったが、その日は盆田が休みで組む相手が居なかった。
俺はクラス内で遠ざけられている存在なので、組む相手が他におらず、狼狽していたら。
『僕と組もうよ。南条君』
清滝はキラキラと眩しい笑顔で俺に言った。
その表情には陰りや打算が一切なく、それまでイケメンだからと無条件でケチをつけていた俺が一発で反転しそうになるほど、温情に溢れていた。
俺のことを『風紀委員』『例のあいつ』でなく、名前で呼んでくれる希少な存在でもある。
そう、清滝は人望が厚いし普通に良いやつなのだ。ただし、白雪が絡まなければ。
その清滝が今どうなっているかと言えば……。
――ドドドドドドドッ。
六瀬がドアを開けた瞬間、室内にアサルトライフルの発砲音が響く。
ガラスが飛散する音と共に、眼前が真っ赤に染まる。
それは、特大モニターの中の出来事で――。
「あー、マジでクソ!! 死ねよあいつ、シネシネシネッッ!! カバーが遅いんだよ雑魚が!!」
ボサボサの金髪でやさぐれた目つきの男が床にコントローラーを投げつける。
バスケットボールみたいに叩きつけられたコントローラーがバウンドし、ボタンが弾け飛んだ。
「あ、あれがまさか……」
「ええ、そのまさかです」
直前までちらついていた爽やかなイメージが霧散する。
みたくなかった……。ゲームで味方にガチギレしてコントローラを投げる清滝なんて……。
クラスの女子が見たら卒倒ものだろう。
清滝とは思えない男は一通り逆上しきったあと、鋭利な眼光をこちらに向けた。
「おい
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