第11話 ただいま航行中

 修理ついでのメンテも済んだ船は快調に進み。メインエンジンを最低出力のアイドルに設定した状態で航行を続けていた。

 航行モードはフルオート。ユイのテストも兼ねていたが、今のところ問題はなかった。

「…光りの結界」

 広げた私の右手に光り輝く結界が生まれ、ボール状のそれは隣のテレーザの頭に乗った。

「だから…なんだそれは」

 テレーザがチョコバーを囓りながら、ボケ~と呟いた。

「新魔法!」

 私は笑った。

「そうか…」

 テレーザは頭にあった結界の玉を取り、そのまま床に投げ捨てた。

 その足下には数十個同じ光球が転がっていたが、すぐに消えてしまうので特に問題はなかった。

 それはともかく、通常航法であと二日。レグレストは、ちょっとピクニックに行くようなものだった。

「そうだ、連絡入れておかないと…」

 私は無線のチャンネルをいつものものに切り替えた。

「オッチャン、聞こえる?」

 コンソール上に小さなウィンドウが開き、いつもレグレストで仕事をくれるオッチャンが映し出された。

『聞こえている。どうした?』

 オッチャンが笑みを浮かべた。

「船が直ったから向かっている最中だよ。仕事ある?」

『それはよかった。仕事は山ほどある。早くきてくれ』

 オッチャンが笑った。

「今回は慣らし運転も兼ねて速力を出していないよ。二日はかかる」

『分かった。荷造りして待っている。気をつけろよ』

 オッチャンとの通話を終え、私はシートの背もたれに身を預けた。

「…テレーザ、臭いよ」

 私は鼻を摘まんだ。

「いいだろ、屁くらい。死にはしない」

 テレーザが笑った。

「あのね、なに食べたんだか知らないけど…まあ、いいや。今のところ異常はないね」

『はい、問題ありません。ついでにご報告ですが、空気清浄機能を最大にしました』

 ユイが大笑いした。

「ほら…」

「うるさいな。もう一発かますぞ」

 テレーザが笑った。

「トイレでやって。さてと…」

 私はコンソールパネルのキーを叩き、メインエンジンの個別システムがロック状態になっている事を確認した。

『メインエンジンは個別システムで稼働しています。操作を私に委譲しますか?』

「ユイ、ちょっと待って」

 私はコミュニケーターでカボに連絡を取った。

『はい、どうしました?』

「うん、そろそろメインエンジンを通常ラインナップに戻そうと思うんだけど、大丈夫?」

 私はカボの笑みに答えた。

『はい、大丈夫です。常に非常停止ボタンに手を掛けていますので、こちらでロックを解除する事も可能です』

「そっか、その方がいいね。ユイ、備えて!」

 ロックの解除はカボに任せる事にして、私はユイに声をかけた。

『承知しました。待機中です』

 ユイが答えてきた。

「それじゃ、カボ。よろしく頼むよ」

『分かりました。ロック解除、メインプロセスに接続。異常なし』

 カボが見えないところにあるコンソールパネルのキーを叩き、笑みを浮かべた。

「ユイ、どう?」

『はい、異常はありません。次は火器管制システムです。すでにテストモードで試行していますが、問題はありません』

 ユイの声に私は頷いた。

 火器管制システムは、この船の主砲や副砲など武装を制御するもので、安全なところでないと、万一の場合というものがある。

「分かった。ちょっと待って」

 私はコミュニケーターでロジーナを呼び出した。

『はい、ロジーナです。ローザ、どうしました?』

「うん、火器管制システムをメインプロセスに接続しようと思うんだけど、大丈夫?」

『はい、問題ありません。主砲格納状態でテストモードに設定してあります』

 ロジーナが笑みを浮かべた。

「分かった。繋ぐからセーフティをかけた状態で、試運転してみて。ユイ、やって!」

『はい、火器管制システムに接続しました。異常はありません。砲手室でテストを行っています』

 ユイが小さく笑った。

 ちなみに、この船の主砲が載った砲台は180度しか旋回できない。構造物にぶつかってしまうからだ。

 だから、前部と後部で二基必要になったのだ。

「よし、あとは任せよう。これで、全部だね。カーゴベイのチェックは終わっているし」

 私は笑みを浮かべた。

「やっと通常に戻ったな。いいことだ」

 テレーザが笑みを浮かべた。

「そうだね。はぁ、避けられなかった事故とはいえ、ずいぶん高くついたな」

 私は笑った。

「保険でなんとかなるだろ。今頃、オヤジが保険会社に請求書を送っているはずだ」

 テレーザが笑みを浮かべた。

「そうだね。なにせ、億単位だもん。無保険で航行するバカはいないだろうけど、契約していなかったら破産していたよ」

 私は苦笑した。

 そう、今回の修理費は億単位の額に及んでいる。

 しかし、保険だけは手厚くかけてあるので、持ち出しはゼロディナールだった。

「そうだな。さて、私は休むぞ。暇だしな」

 テレーザがシートを簡易ベッドにして、スヤスヤと寝息を立てはじめた。

「相変わらず寝付きがいいこと」

 私は笑って、結界ボールをテレーザのおへその上に置いた。


「ローザ、緊急警報を受信しました。一イリ先でちょうど到達します。無線交信の結果、アクラに向かっていた小型船のようです。エンジントラブルで身動きが取れないそうです」

 広域高性能レーダースクリーンをみていたジルケが声をかけてきて、パウラが当該ポイントをマークして正面スクリーンに表示させた。

『船籍コード確認。アリメダのテレビ局所有です』

 ユイが情報を補足してくれた。

「近くに船影は?」

 私はジルケに問いかけた。

「ありません。海賊の罠とは考えにくいので、孤立無援状態です」

 ジルケが短く答えてきた。

「よし、人助けするか。ユイ、カーゴベイに収容出来る?」

『はい、パトラ級小型船です。十分収容可能です』

 ユイが短く答えてきた。

「分かった。それじゃ、相手にその旨伝えて。生命維持装置以外の動力を切って待てって!」

『分かりました。オートで対処します』

 ユイが答えてきて、サブエンジンが逆噴射する音が聞こえた。

 私はコミュニケーターでカボを呼び出した。

『はい、どうしました?』

「一仕事あるよ。これから、エンジンがぶっ壊れた難破船の救助に向かうから!」

 私は笑みを浮かべた。

 要するに、この船を簡易ドッグ船として使おうというわけだ。

 ドッグ船を呼んであげる事も可能だったが、どんな事情か分からないので、まずは仮に収容しようと考えたのだ。

 しばらくすると、正面スクリーンに魚のような船形をした小型船が映し出された

『相対速度合わせ完了。カーゴハッチ、オープン』

 これがかなり危険な作業なので、私はしっかりモニターしながら作業の進捗を見守った。

 カーゴルームの天井に設置してあるクレーンで相手の船をそっと掴み、カーゴベイに吊り上げると、ハッチが閉じて自動的に与圧がはじまった。

『収容作業完了。船体を固定しました。与圧完了まで二十秒』

「ユイ、お疲れ。パトラ級なんて系内艇じゃん。それで、ここまでくるとは…」

 私は苦笑した。

 系内艇とは、一つの星系内を移動するために作られた、短距離専用の小型船だ。

 これは、いわばゴムボートで嵐の海にこぎ出すようなもの。ぶっ壊れて当然だった。

「さて、どんな面々やら」

 私が席を立つと、テレーザも立った。

『与圧完了。問題ありません』

 ユイの声に満足して、私とテレーザは操縦室を出てトラムでカーゴベイに向かった。


 船体の大半を占めているカーゴベイは大きく三つに分割されている。

 必要とあらば、この隔壁は収納可能だったが、今回はその必要がなかった。

 トラムでカーゴベイに移動して、常に密閉してある私物庫の重たいハンドルを回して扉を開き、ハシゴを下りてカーゴベイ専用の移動用トラムに乗った。

 ユイは相手の船をカーゴベイ中央に収容したようで、移動には数分かかった。

「こりゃ、だいぶ無茶したね」

 救助した船の船体はかなり痛んでいて、よくここまでたどり着いたという感じだった。

 私たちがトラムから降りると、船のハッチが開いてなにやら機材を抱えたおじさんやお姉さんが五人降りてきた。

「ギャラクシー・エクスプレス、ジュノーへようこそ」

 私は笑い、近寄ってたおじさんと握手した。

「助かったよ。アルテ星系からきたんだ。取材で隣の星に行く途中で船が壊れてしまってね。そのまま漂流するハメになってしまったんだ。現在地も分からず、救助を呼ぼうにも無線の調子が悪くてうまくいかなかったんだ」

 おじさんが笑った。

「それは災難で。すぐにここの機関士がくるけど、エンジンは直せる可能性があっても痛んだ船体までは直せないから、ドッグ船を呼ぶしかないよ。それでいい?」

 私は笑みを浮かべた。

「ああ、頼む。世話になって申し訳ないね」

 おじさんが笑みを浮かべた。

「この程度は…。おっ、きたきた」

 トラムに乗って、機関士チームがやってきた。

「この船ですか。さっそく掛かりましょう」

 四人が船の後部にあるエンジンの修理をはじめた。

 その間、私はコミュニケーターでユイを呼びだし、オヤジのドッグ船を呼ぶように伝えた。

「おっと、これは謝礼だ。額は少ないが、受け取ってくれ」

 おじさんがクレジットカードを取り出すと、私は携帯端末を取りだした。

 それにおじさんがカードを押し当て、金額を入力すると決済成功の電子音が鳴った。

 入金額を確認すると、多すぎず少なすぎず絶妙な数字だった。

「ありがとう。もうドッグ船を呼んだよ。すぐにくるから」

 私は笑みを浮かべた。

 エンジン修理はオヤジの船に任せればいいのだが、最低限作動してくれないと、ここから出せなくなる可能性があるので、いわば応急処置だった。

「あーあ、完全に焼き付いちゃって。ぶん殴って外して…」

 テアとカボが巨大ハンマーでカウルを開けたエンジンを思い切り叩き、なにかの部品がすっ飛んだ。

「よし、これで直せる。えっと…」

「そこは違います。こうです」

 テアとカボがゴチャゴチャやっている間、テレーゼとティアナはスラスタの整備という、神経を使う作業をおこなっていた。

『なんだおい、もうぶっ壊したのか?』

 操縦室の無線経由でコミュニケーターのウインドウが開き、オヤジが笑った。

「違うよ。難破船を救助したんだけど、もう航行不能なほどボロボロでね。直してあげて!」

『そういう事か。分かった、そっちのポイントは分かっている。三十分もかからんさ』

「今は可能な限りエンジン整備をしてる。推力が出せた方がいいでしょ?」

『ああ、そうだな。さらにぶっ壊すなよ!』

 オヤジの方から無線を切り、私は笑みを浮かべた。

「三十分くらいでドッグ船が到着するよ。エンジンの応急処置だけやるから、あとは相談して!」

「分かった。いや、生きた心地がしなかったよ」

 おじさんが笑った。


「ふぅ、これで最低限は動くと思います」

 油とスス塗れのカボが、笑みを浮かべた。

 オヤジのドッグ船は到着していて、機関士組は手早く工具を片付けはじめた。

「終わったよ。ロックしてあると思うけど、エンジンはかけないでね。あとはドッグ船が操作するから」

「分かった、ありがとう」

 おじさんは頭を下げ、他のメンバーと共に船に乗り込んでいった。

「さて、戻るよ!」

 機関士組と列を組んでトラムで移動し、私物庫に入ると私は気密扉を閉めてハンドルを強く回した。

 扉の上にある気密確保の緑ランプがつくと、私はハンドルから手を離した。

「私たちはお風呂に行きます。久々に普通のエンジンを弄りました」

 カボが笑って、機関士組を引き連れてトラムに乗っていった。

「よし、私たちは操縦室だね。戻ろう」

 私とテレーザはトラムに乗って操縦席に移動し、ユイにカーゴベイの状況を確認した。『難破船の乗員は全員船に乗りました。信号灯確認。出発準備が整ったようです』

 ユイが小さく笑った。

 信号灯での合図は希だが、無線を使うほどではない場合などに行う。

 これで問題ない事を確認し、私はユイにハッチを開けるように伝えた。

『承知しました。カーゴベイ減圧中、あと十秒で終わります』

 ユイの答えに満足して、私はカーゴベイの様子を正面スクリーンに映した。

 カーゴベイの減圧が終わると、船を吊っていたクレーンが稼働して、カーゴベイから外にだした。

『待ちくたびれたぜ。あとは回収するから待ってろ!』

 無線のウィンドウに表示されたオヤジの笑顔が消え、クレーンのロックを外すと、宙に浮いた小型船のエンジンが作動し、武骨で巨大なドッグ船に吸い込まれていく様子が正面スクリーンに表示された。

『あとは任せろ。またな!』

「ありがと!」

 無線でオヤジと交信して、ドッグ船が待避していくのを見て、私はサブエンジンの出力を上げ、再びマイペースな航行をはじめた。

「最新の航行データが届きました。特にありませんが、念のため確認をお願いします」

 仮眠休憩中のジルケに代わり、パウラが笑みを浮かべた。

「了解。さて…」

 私はコンソールパネルのキーを叩き、コンソールの画面に表示された文字データを読んだ。

「…そうだね、特に異常はないか」

 私は笑みを浮かべた。

「私も確認した。問題ない」

 テレーザがチョコバーを囓りながら呟いた。

「ところで、ずっと気になっていたんだけど、そのチョコバーって何本あるの?」

 テレーザに問いかけて、私は笑った。

「常時一万本は保存してあるぞ。食うか?」

 テレーザが笑い、チョコバーを一本私に放ってきた。

「あ、あのね、そんなに食べると体に悪いよ!」

 私は苦笑した。


 船はローカル航路をマイペースで進み、私は大丈夫そうだと思いはじめた。

「もう大丈夫そうだね。手応えはどう?」

 私はテレーザに問いかけた。

「そうだな。少しだけ、メインエンジンの様子をみるか…」

 テレーザが頷いた。

「分かった。ユイ、メインエンジンの出力を10%刻みで段階的に上げて」

『承知しました。10%…』

 速力計の表示が跳ね上がり、私はじっと様子を覗った。

『問題ありません。20%…』

 とまあ、この調子で緊急用の120%まで上げて、一気に逆噴射をかけて速力をそれなりに落とした。

「うん、大丈夫だね。前よりレスポンスがよくなった」

 私は笑みを浮かべた。

「まあ、修理直後だしな。無理しないでいこう」

 テレーザが笑みを浮かべた。

 とまあ、こんな調子で航海一日目は過ぎていった。


 航海二日目。操縦室内はそれぞれ仮眠を交代で取りながら、目的地のレグレストに向かって接近していた。

 レグレストがあるフォルスト星系に入ると、ユイがサブエンジンの稼働も止め、メインエンジンも停止した。

 あとは慣性で進むだけだが、速力が出ないのでちょっとした休憩タイムになった。

 正面スクリーンを使って映画を見たり、ゲームをやったり…まあ、操縦士二人組はのどかなもので、厳しいはずの航法士のジルケやパウラも眠そうに欠伸をしては、編み物をしていた。

「はぁ、また負けた…」

「うん、お前のテクじゃ実車なんて乗れないぞ。下手くそ」

 私がゲーム機のコントローラを投げると、テレーザが笑った。

「ったく、手加減って言葉知らないの?」

「やるなら本気だ。生ぬるい事をいうな」

 テレーザが笑った。

「へいへい…。さて、そろそろか」

 私は正面スクリーンの表示をいつも通りに戻し、程なく見えてきた緑の惑星レグレストに接近していった。

「レグレスト管制、こちらBBJX-488ヘヴィ。寄港の許可を求める」

『レグレスト管制よりBBJX-488ヘヴィ。寄港を許可します。十二番スポットを使用して下さい。間もなく、誘導圏内に入ります』

 明瞭な管制の答えが返ってきて、私は笑みを浮かべた。

 コンソールパネルの精密航法レーダに港が映し出された頃になって、牽引中を示す黄色いランプが点滅した。

「点滅って…。トラブルかな」

 これは、正常に牽引できない事を示すサインだった。

「まあ、もう少し様子をみよう。私が引き継ぐから、待っている客に連絡しろ」

 テレーザが笑みを浮かべた。

「そうだね。えっと…」

 私はサブの無線を使い、オッチャンを呼び出した。

『無事に着いたようだな。調子はどうだ?』

 オッチャンが笑みを浮かべた。

「今は港からの牽引待ちだよ。調子が悪そうでね」

 私は笑みを浮かべた。

『そうか、無理はするなよ。スポット番号は?』

「十二番だよ。重量物用だね」

 私は笑みを浮かべた。

『まあ、確かに重いからな。十二番だな。さっそく荷を運ぶから、積み込み開始まで二時間くらい待ってくれ』

 オッチャンとの交信を終えると、今度はコンソール上の黄色いランプが点灯していた。

「おっ、無事に牽引してくれそうだね」

「そうだな。ここの機器はボロいからな。よし、これでなんとかなるだろう」

 テレーザが笑みを浮かべ、数十分で船はスポットに収まった。

 どこでも同じようにスポットのシャッターが閉じて、与圧がはじまった。

「さてと、ここは船を降りて地上に行かないとね。ランチを手配しよう」

 私は無線で小型艇の手配を管制に依頼した。

「よし、準備完了。ユイ、スポットの与圧が終わったら、カーゴベイのハッチを全開に開いて!」

『承知しました。お任せ下さい』

 ユイが笑った。


 スポットの与圧も終わり、船外に出られるようになると、私とテレーザはいつものエアロックからタラップを使ってスポットの床に降りた。

 すると、港側からの出入り口が開き、グレーのスーツを着たオッチャンが入ってきた。

 そのまま歩いて私たちの方に近づいてくると、オッチャンは笑みを浮かべた。

「待っていたよ。お疲れさま」

 オッチャンと握手を交わし、私は笑みを浮かべた。

「今回はオリハルコンだ。珍しく大当たりしてね」

 オッチャンが笑った。

「へぇ、そりゃまた豪勢な荷物だね。積み込みにどれだけかかる?」

「そうだな…。結構な量だから二日は掛かるだろう。その間、この星を楽しむといい。では、これが代金だ」

 オッチャンが、大きなトランクを四つ引いて持ってきていた。

「こりゃ豪儀で。まあ、運ぶものが運ぶものだしね」

 私は笑みを浮かべた。

「うむ、すでにこの情報は星中に広がっているとみていい。海賊も狙うだろう。だから、この船じゃないとダメなんだ。頼んだよ」

 オッチャンが笑みを浮かべてスポットから出ていくと、私たちはトランクを持って船内に戻った。

「よし、そのうちランチが到着するだろう。私は一度操縦室に戻る。お前は金の保管をやれ」

 テレーザが笑った。

「そうだね。あっ、そろそろ給料日だね。用意しないと」

 私は笑って、トラムにトランクを載せて、居住区に移動した。

 いつも通りの部屋にいき、赤色のカードキーをスリットに通して扉を開けると、四つのトランクを中に入れて、扉を閉じてから開けた。

「ざっと見積もって一億って、もらい過ぎな気がするけど、オリハルコンとなれば稼げるしね。この程度は安いもんか」

 私は笑みを浮かべトランクを床に置くと、部屋から出て扉をロックした。

「さて、地上に降りて遊ぶぞ!」

 私は大きく伸びをしたのだった。

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