第23話

 男の子だもんね……仕方ないよね……。

 私が視たのは優介が薬局で商品棚をジッと見つめ、立っている姿だった。

 考えてみたら今日、優介は避けているように見える時があった……これを悟られたくないため?


 もしかして今日誘ってくれたのも、プレゼントを買ってくれたのもその為だったの?

 ――うぅん、そんな事無いよね。何を考えているんだろ私。


 私は賑やかな演奏に合わせ気持ちを保とうとパレードを見つめる。

 優介……私が求めているのはそれじゃないんだよ。


 ※※※


 ――その日の夜を迎える。

 私達はテーマパークの近くにあるビジネスホテルを訪れチェックインを済ませると、部屋に向かった。


 部屋の中はブラウンを基調にした大人の雰囲気漂う部屋で、広くてテレビも大きい高級感が溢れる部屋だ。

 ツインルームなのでベッドは二つある。

 私はとりあえず歩き疲れたので、ベッドの上に座り、旅行用のバッグを地面に置いた。


「疲れたね……」

「そうだな」

 

 優介は返事をしながら旅行用のバッグを地面に置く。

 チャックを開けながら「美穂、先に風呂入っていい?」

 珍しいな……いつもは後なのに。


「別にいいよ。御先にどうぞ」

「ありがとう」


 優介は鞄から下着が入っていると思われるビニール袋を取り出すと、ホテルの紺色をしたガウンを手に取り、風呂場へと向かった。

 私は黙って見送ると、靴を脱ぐ。


「ふぅー……」

 と、息を吐きながら、ベッドに横になり、ボォー……っと、見なれない天井を見つめる。

 私たち、このままで良いのかな?


 優介はもうすぐと言っていた。

 でももう直ぐっていつの事? 一年? 二年?

 私もそんなに若くはない。

 どうしても焦ってしまう。


 いっそのこと意地を張ってないで私から告白してみようか?

 ――うん、そうしよう。

 半年経って何も無ければ私から、それでも駄目なら、それから先は――。

 ちょっと気が早いわね。

 このまま考えていたら気が滅入りそうだし、テレビでも観て気分転換をしよう。


「よいしょ」

 

 私は立ち上がると、テーブルの上にあるテレビのチャンネルを手に取り、テレビを点けた。

 それから数十分後、カチャッと風呂場のドアが開き、優介が出てくる。

 ガウンが薄くて露出が高いので、少しドキッとしてしまった。

 私は平静を装い、なるべく見ない様にして「あら、早いね」


「うん、シャワーだけにした。美穂は湯船に浸かるの?」


「え? あ、どうしようかな……私もシャワーだけにしようかな」

「分かった」


 なぜそんな事を聞くのだろ?

 そう疑問を抱くけど、シャワーを浴びる準備をして風呂場へと向かう――。

 風呂場に入るとまず、躊躇いながらも、優介に音で気付かれない様にゆっくり鍵を閉めた。

 

 優介のことを信頼していない訳ではない。

 だけど高校の時にあったあの事件のせいで、私はそういうことに対して臆病になっていた。


 ――とりあえずザッとシャワーを浴び、ホテルの白いガウンに着替えるとメイクを落とす。

 続いて歯を磨き終えると、髪の毛を乾かし始めた。


 部屋が妙に静かだ。

 優介はテレビを消して、寝てしまったのだろうか?

 ――数十分掛けて、乾かし終わるとドライヤーを置く。

 お風呂セットを抱えて、風呂場から出ると、部屋は薄暗くなっていた。


 雰囲気作り? 優介……あなたもう、そういう気分なのね。

 私は覚悟を決め、ゆっくり奥の部屋へと進んだ。

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