第22話

 デート当日を迎え、私は少しでも気持ちを上げたくて、メイクにいつも以上の時間を使い、待ち合わせ場所に向かう――。

 待ち合わせ場所に到着すると、私達は駅へと向かい目的地であるテーマパークを目指した。

 パーク内に着くと、まずはロッカールームに向かい、旅行用バッグをしまう。


「――これでよし。まずはどこから行こうか?」

 と、優介は歩きながらガイドマップを広げてそう言った。


「そうね……時間はあるし、右から順に行けば良いんじゃない?」

「そうだな」


 優介は返事をすると、ガイドマップを折り畳み、黒いズボンにしまおうとする。

 男の人の特徴なのか、優介はいつもハンドバッグを持ち歩かない。

 まったく、それじゃシワクチャになっちゃうじゃない。


「優介。ガイドマップ、貸して。私のバッグにしまっておく」

「あぁ、ありがとう」


 優介からガイドマップを受け取ると、立ち止まりバッグの中にしまう。


「さて、行こう」

 と、声をかけ、また歩き出した。


 ※※※


 私達は右側から順々にアトラクションに乗って行き、移動販売で軽食を取りながら、楽しい時間を過ごしていく――。

 

「なんかチラホラ地面に座ってる人いるけど、なんだ?」

「パレードでもあるんじゃない? ちょっと待って」

 と、私は言って立ち止まり、ガイドマップを広げる。


「――やっぱり、一時半からパレードがあるみたいよ」

「へぇー……、見てみる?」

「そうね。せっかくだから見てみようよ」

「分かった」

 と、優介は返事をして腕時計を見る。


「いま1時だから少し時間あるね。近くの御土産屋でも行ってみる?」

「うん!」


 ――私達は近くのキャラクターグッズを売っている店に入る。

 わぁ……可愛い。

 店内には、目移りしてしまうほど、可愛い縫いぐるみやアクセサリーが沢山並んでいて、その空間にいるだけで、欲しい気持ちが高まった。

 逸る気持ちが抑えきれず私は優介より先に歩きだす。


「欲しいものあったら、良いなよ」

「え?」

 

 私は後ろを振り返り立ち止まる。

 優介も立ち止まると、「今日は美穂の誕生日だろ? 一つぐらい何か買ってあげるよ」


「ありがとう!」

 と、私は御礼を言って歩きながら「じゃあ、何にしようかな」


 ――数分見て回り、これが良いと思ったネックレスを見つける。

 ネックレスは青を基調としたもので、私が好きなキャラクターをモチーフにしたデザインをしていた。

 さて……欲しいものは見つけたけど、他も見て回るか。

 もっと良いのがあるかもしれないしね。


 ――グルッと一通り店内を見て回ると私は結局、良いと思ったネックレスの所へ戻る。

 優介は振り回されているのに、何も言わずに黙って付いてきてくれた。

 私はネックレスを取ろうと手を伸ばす。


「それにするの?」

「うん、これにする」


 私がそう答えると、優介はスッと腕を伸ばし私が選んだネックレスを手に取った。


「それじゃ、買ってくるね」

「うん、ありがとう」


 ――優介は買い物を済ませると、私の前で立ち止まり「後ろ向いて、付けてあげる」

 私は「うん」

 と、返事をして後ろを向く。

 優介はこういうのに慣れていないようで、少し苦戦しながらもネックレスを付けてくれた。


「えへへ、ありがとう」

「そろそろパレードの方、行ってみようか」

「そうね」


 私達は肩を並べて歩き出し、店の外へ出た。

 パレードが通ると思われる道は、チラホラと人がいるけど、まだ十分に空いていた。


「あそこが空いているから座ろうか?」

「うん」

 

 優介が指差した方に向かい、白線を踏まない様に、空いている所に座る。

 

「意外に少ないな」

「アトラクションの方が人気だからじゃない?」

「そうかもな。まぁそのおかげで、前列で見れそうだ」

 と、優介はそう言いながら地面に両手を付いた。

 優介の手が私の手の直ぐ側にある……。


 私はネックレスを買ってもらったからか、それともパレードが楽しみだからか、どちらか分からないけど、ドキドキと胸を高鳴らしていた。

 優介の手に触りたい……でも、そうすると楽しみな事まで視てしまうかもしれない。

 どうしよう……。


「美穂。ほら、先頭が見えてきたぞ」

 と、子供みたいに無邪気な笑顔を浮かべ、指差す優介の横顔を見て決意する。

 少しくらいなら良いよね。


 私は「あ、本当だ」

 と、言いながら優介の手に上に、自分の手を重ねた。

 優介はビックリしたのか、サッと直ぐに手を引っ込める。


「あ、ごめん邪魔だった?」

「うぅん、大丈夫」

「そう、良かった」


 優介は腕を組みながら、パレードを見始めた。

 ――視るんじゃなかった。

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