第13話  唇に触れた

頭蓋の奥まで 冷夜が届き

意識が微かに 明るくなる

それでも昨日は 霧散して

虫食い記憶は 帰らない


視界の先の 白明るさに

引き攣る乾きが ぶり返す

壁伝いに 左右踏み出し

人工光に 目を眩む


虫の集らない 自販機が

夜闇を照らす 白いオアシス

静寂に落ちる 打撃を響かせ

生命線を 手に入れた


ようやくの力を 両手に込め

蓋を開け

ボトルを傾け

生命線が 唇に触れた


仰いだ水の 揺らぎの向こう


また夜が終わる

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