1章
第7話
「へぇー。そりゃあまぁ……あらあらまあまぁな事で」
と、私――六出梨は
なんの感想か? それは勿論、入院中での私が知らない出来事だ。おおよそ約二か月間、夏休みは丸々消し飛びまして今は秋。9月の半ばです。
「ふむ……」
四季先生の話を私なりに簡潔にまとめると――。
その1。
事件の発端となった私個人への私刑はその主犯格である、霧島先輩を含めた3年生は退学処分。2年生は一部が退学処分を言い渡され、運良く退学を免れた残りは1年生と同様に停学処分とボランティア活動の判決を受けた。
私――御咎めなし。それどころか
その2。
学校は今回の事件をイジメの末の私刑ではなく不良共の乱闘騒ぎにする為に一般生徒達を脅迫or誘惑。部活動の生徒には顧問を通しての脅迫をし、それでも無理そうなら推薦の取り消しや大会・コンクールの出場停止にすると最後忠告。そして学校側はその最後忠告を生徒達に本気だと知らしめる為に一番反発が大きかった野球部の夏大会の出場を辞退した。(あと二勝で甲子園だったとか)
そんな事をして大丈夫か? ――はい、大丈夫ではありませんでした。が、顧問による女子マネージャーへのセクハラ行為と一部の部員による喫煙飲酒というガセ情報を人権軽視がモットーの
その3。
人権軽視がモットーの
そんな事をされて学校および生徒達は大丈夫だったか? ――はい、生徒達の方は大丈夫ではありません。数十人の生徒達が鬱病になり不登校or入院or――自殺未遂者1名という惨事。その結果、生徒達による痛々しい叫びの声と一部の金の亡者および人権侵害エンジョイ勢が行った卑怯卑劣で非常識な取材光景をネットに挙げられてしまい大炎上。それ好機だと言わんばかりに学校側が被害にあった生徒達を利用して人権軽視がモットーのお役職様方を追撃し、ごく一部の除いて撃退に成功した。
その4。
私を呼び出した奈々氏景隆は――なんかです。なんかはなんかです。なんか島之南帆と姫島瑞乃とはなんか変な距離感になってる上に、二人のご主人様である転校生ともなんか変な距離感なんだそうな。
――はい。なんかはなんかです。なんせ興味ないのです。正直、四季先生から話を聞いた上で頭を数回叩かれてようやく思い出さされたレベルなのです。
以上。
「本当にまぁ……あらあらまあまぁなんという遠回りで面倒な事を」
「おいおい少しは労って欲しいもんだね。――先生結構動き回ったのよ?」
四季先生は自身で入れた角砂糖2つ入りのコーヒーに追加の角砂糖を4つ投入する。特に甘党ではないらしいのだが、四季先生は辛い思い出なんかを思い出すと今みたく糖分を過剰にとってしまう傾向がある。
追加の角砂糖で計6つ――お父さんの話では患者を死なせまくった時は9つ入れていたそうなので相当のお疲れ様だったようだ。
「あらあらまあまぁ、なにをしたか聞いても?」
「ん? まず現役時代に貸しを作ってた知り合いのマスメディアに同業を煽って貰ったり、不純恋愛を嗜んでいた教師達を使って他の教師にお口チャックの圧力を掛けて貰ったりしたかな?」
「あぁやっぱり……しかしまぁそれにしたって手間暇かけすぎでは? 今回は運よく自殺未遂者まで現れてくれたから労働に見合ったんで良かったですけど……」
「手厳しいねぇ。ならそうゆう梨君はどうする?」
「私? 私なら霧島先輩に全責任を被ってもらいますけど? 都合良く霧島先輩ヤクザとのラインも持ってますんで、ある事ない事言って貰ってそれでマスコミを釣る」
「ほう? どうやって言う事を聞かせる?」
「そんなの簡単ですよ? まず乱闘ではなくありのままの私刑に。そしてあの人が関わらせたくないと言ってた奈々氏景隆を巻き込んで、ついでに例の大乱交写真でお話合いをすればいい。一つ目はその方が罪が重くなるでしょう? なんせ見方を変えれば計画殺人なわけですし。2つ目に関しては私を呼び出したのを口実にすれば良い。それだけでも計画殺人に関わってますんで。最後のはオマケの認識なので割愛で」
特に悩む事なくスラスラと言葉が続く。最後に関しては本当にオマケ程度の認識で言った。
「酷いねぇ。それだと霧島君はヤクザから凄く恨まれるだろうね。――でも仮にそれで言う事を聞いたとしても今度は学校側が茶々を入れるぞ? 結果はどうあれイジメの末に集団リンチの殺人未遂とか学校側にとっては最悪過ぎる。なにがなんでも乱闘による不運にしようと躍起になるね……結果はどうあれ!」
「あらあらまあまぁ、そこまで腐ってるんですかこの学校。あと二回も言わんでよろしい」
「あぁ腐ってる。それを外に見せないように飴細工でコーティングしてるのだよこの学校様は」
「あらあらまあまぁ」
なんともまぁ見苦しくて浅ましくて涙ぐましい努力なのか。まさに化粧で化ける女さんのような見苦しさ、承認欲求を満たそうとエロイコスプレでエロポーズをするコスプレイヤーのような涙ぐましい努力ですこと。
「とりあえずはこんな所かな? それでそっちは? 家の方でなんかあったんだろ?」
「家ですか? ――! あーなんでしたっけ? ええっと……あーいいや! 一応なんですが、今は向こうのお兄様とお姉様が用意してくれたマンションで一人暮らしをしていまして――」
「向こう? あぁ淳と麻紗緋か」
「そです。淳兄さんと麻紗姉さん」
本名。
兄――
姉――
なんともまぁ――ただでは転ばない兄妹です事。実際、真似事でもそれなりに結果を出しているらしい。
で、この2人との関係は母親違いの間柄。そして私個人とでは
「へー……ん? 淳兄さんと麻紗姉さん? 兄さん姉さんを付けるようになったのか?」
「……えぇまぁ」
ちょっと痛いところを突かれて視線が横に泳ぐ。
「流石に3LDK……の家賃とか社長さんがつけているような時計とか……諸々をですね? 出したり貰ったりしているのでぇ……まぁ私なりにできることをしてます」
「マジで!? ずるいっ!」
「ずるくないっ! わ、私だってまさかこうなるとは思わなかったんですっ!! 退院した日に弟の冬と妹の春へのお仕置きをしたら何故か母と子の縁を一方的に切られて家を追い出されて! ……追い出されたと思ったら淳兄さんと麻紗姉さんに『話は知ってる。安心しろ。家は兄ちゃん達が用意してある』と、今住んでいる場所に連行されて……あ、あらあらまあまぁ……ですよ」
「――いやっ!? 普通にずるいわッ!」
「うるさいっ! それにしょうがないでしょう!? 強引なんですもんあの二人。その癖、本気で嫌がると滅茶苦茶悲しそうな顔しますし……」
思い出すと胸が痛いレベル。正直もうこの時点であの2人には逆らえなくなってる。これが兄と姉の威厳って奴ですか。
「――んっ!? 追い出された? え、絶縁っ? な、なにをしでかしたのよあなた……?」
と、四季先生は食い気味で聞いてきて、私も会話の中で思い出せた事をありのまま伝えた。
「ぅん? 妹の春の髪の毛と弟の冬の歯を引っこ抜いただけですのよ。たったそれだけでお母さんから『私達家族から消えてください』と、涙を流されて言われちゃいました。あらあらまあまぁ……って奴です」
本当にィ――あらあらまあまぁです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます