冬休みの終わりにて 2
「結構長居しちゃったね」
「だな。でもこれで少しでも緊張がほぐれてくれてたらいいな」
「うん!」
俺の隣でそう頷く七海。
「この後どうしよっか」
「うん。どうしよっか…」
京に会いに来たので二人ともこの後の予定は立てていなかった。結局、それというものは思い浮かばず、二人で当てもなく町をぶらつくことになった。
それから暫し町を歩いていると、見知った顔が目に入った。
「ねぇ明人、あの人達って」
「うん。翔太と青葉さんだね」
そう言うと七海は何か閃いた顔をして俺の袖を引っ張る。何か嫌な予感がする。
「ミッション第二弾だね!」
彼女はワクワクした様子でそう言った。
今、俺たちは二人の後を探偵の様に付けて、ショッピングモールまで来ていた。
「二人、なんか気持ち距離感近いよね?」
「んー、昔からの付き合いって前に言ってたからあれが普通なのかも」
二人はもう少しで手がくっついてしまう程に距離が近かった。長い付き合いからくるものなのか、それとも…。
「あ!二人がお店の中に入って行ったよ!」
「…本屋?」
そう、二人が入って行ったのは最近モール内にできた広めの本屋だった。俺たちは二人を見失わないように急いで店内に入る。店に入った後二人が迷いなく向かっていったのは参考書の並んでいるコーナーだった。二人は参考書の前でどれが良いとか悪いとか本を手に取りながら話している。
俺は二人を尻目に七海の方に視線を向ける。
「ただ参考書探しに来ただけっぽいな」
「ちぇ~、何か怪しいって思ったんだけどな~」
「ほら見つかる前に戻るぞ」
「誰にですか?」
なんだかデジャブを感じる。正面を向くと先ほど二人がいた場所は見えず、ただ視界一杯に青葉さんがいた。
「あー、青葉さん奇遇だね」
青葉さんは何も喋らず、ただジト目を向けて来る。
「「すみませんでした」」
青葉さんは深く息をついて口を開いた。
「結局、一体何のために後をつけてたんですか?」
「それは…」
「えっと…」
俺たちは二人揃って目線を彷徨わせて青葉さんの圧力に狼狽えていた。
「まぁ友達の男女が二人で歩いてたから気になったんじゃないか?」
そこに参考書を片手に持った翔太がやってきた。
「あぁ、なるほど」
「…この反応の通り俺たちは明人達みたいな関係じゃないからな。ただの腐れ縁だ」
片手に持った参考書をヒラヒラとさせながら翔太はそう言った。
「はい、これであってるか?言ってたやつ」
「合ってますよ。ありがとうございます」
自然な様子で翔太は青葉さんに手に持っていた参考書を渡した。
「それって数学の参考書か?」
「はい。もう大学受験も近いので、日野君も必要ならおすすめの参考書を教えますよ。勿論、七海も」
そう言って俺たちを見回す。にしても受験か…。進路もそろそろ考えていかないとな。
そうして俺たちの秘密のお出かけは幕を閉じた。
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「七海はもう進路とか決めてるのか?」
帰宅後、俺は七海と部屋で話をしていた。
「今日の円香ちゃんの話?」
「うん、そう。そろそろ考えないといけないなと思って」
少し真剣な様子の俺を見てうーんと、七海は少し考える様子を見せると口を開いた。
「私もまだしっかり考えてないなー」
「そっか」
「でも将来は絶対に明人のお嫁さんになるよ!」
明るく笑う彼女につられて俺もつい笑ってしまった。
「もー、なに笑ってるのー?」
そう言いながらも彼女の笑いが絶えることは無かった。
「いや、ごめん。そうだね。そこだけは絶対だ」
「うん!」
「よっしゃ、じゃあ一緒にご飯でも作ろうか。もう京も帰って来るし、お腹も減ったしね。何か食べたいのある?」
「えっとね、グラタン食べたい!」
「グラタンか、了解」
そして俺たちは二人で料理を作りながら、冬休み最後の日を過ごした。
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