冬休みの終わりにて

 クリスマス、年越し、初詣を終えると、もう冬休みも終わりに近づいてきていた。

 今日もいつもと変わらず、七海と二人で家にいた。


「はぁ、明日から学校かー。冬休みって本当に短いよねー」

「だな。七海は冬休みの宿題やったのか?」

「うん、やったよ!前の私とは違うのです!冬休みに入る前に終わらせたんだっ」


 ふふん!と自慢げに胸を張る。少し目のやり場に困るのでやめてほしい。

 

「明人は?」

「つい昨日終わらせたかな」

「私の方が早いね!」

「はいはい。偉い偉い」


 そのまま両手でわしゃわしゃ撫でる。


「きゃー!やーめーろー!」


 彼女はそう言いながらも目をつむって頭をなされるがままにしている。


「じゃあ冬休み最後の日だしどっか行くか?」

「んー、じゃあさ。図書館に少し京ちゃんの様子見に行かない?」

「京の?」

「うん!だってそろそろ試験始まるし、ちょっと気になるのです!」

「でも邪魔したら悪いしな」

「ちょっとだけ!勉強してる姿見たらすぐに戻るからさ。ねね!それならいいでしょ?」

「…ほんとにちょっとだけだぞ」

「うん!任せて!準備してくるー!」


 そう言うとそそくさと京の部屋に向かう。


「準備ってなんの準備をするんだ?」


 体感5分くらいか経った後、彼女は戻ってきた。それも妙な恰好で。


「何の恰好だ?」

「ふっふっふ。私、変装スタイルです!」


 彼女の恰好は黒いズボンに黒コートに黒いキャップ、サングラスと全身黒ずくめであった。七海は俺の前に来てサングラスをかっこよく下げてやたらポージングをしてくる。


「それ逆に目立たないか?」

「ッ!確かに…」


 衝撃を受けた様子を見せると、ゆっくりとコートを脱いで、帽子やサングラスも取って机に置いた。


「ど、どうしよう」

「まぁ普通でいいんじゃないか?」

「えー、でもばれちゃうよ」

「じゃあ帽子だけでもつけていくか」

 

 そう言って机に置いてある帽子を取って彼女の頭にのせる。


「…うん!」


 その後、何故か俺も一緒に帽子をかぶって二人で家を出た。


 図書館に着くと割と直ぐに京と光ちゃんを見つけることが出来た。二人は本棚から少し離れている自由スペースのような所にいた。二人とも集中していて、黙々と机に向かっている。


「すごい集中してるね」

「だな、結構模試とかの結果も良かったらしいからもっとゆったりと勉強してると思ってた」


 俺たちは本棚の裏に隠れながら二人を見ていた。


「ねぇねぇ、二人に差し入れとかしない?」

「したい気持ちは分かるけどさ。邪魔しない約束でしょ」

「でもさー…」


 そんなことを二人で話していると、


「…何してるの?」

  

後ろから声を掛けられる。ゆっくりと振り返るとそこには無表情な京が立っていた。


「あ…」

「み、京ちゃん…」

「何してるの?おにぃ、おねぇ」


 京は腕を胸の前に組み直して、そう問い直す。


「い、いやー…」


 七海は目を彷徨わせながら狼狽えている。


「はぁ、いいよ…。どうせ試験が近いし、少し気になってきたんでしょ?」

「「はい…」」


 京は微笑みを浮かべる。


「別に怒ってないよ。私を気にしてくれてるんでしょ?」

「うん」

「それで何話してたの?」

「京ちゃん達が頑張ってたから少し差し入れしようかなって」

「でも、邪魔するのもなんだしって思ってどうしようか話してたんだ。でもばれちゃったからな」

「だね。まぁそろそろ休憩しようと思ってたし、差し入れは歓迎だよ!」


 そう言って京は光ちゃんのとこへ向かった。光ちゃんは話を聞いたのかこちらを見て驚いた表情を浮かべている。それから京はこちらに向くと俺たちに向かって手招きした。

 俺たちは合流すると、別の階にある本棚などから区切られているスペースに移動した。ここのスペースでは他と区切られていることもあり、飲食したり普通に話すことができる。その代わり本は持ち込めないスペースになっていた。


「ごめんね、光ちゃん。邪魔しちゃって」

「いえ、大丈夫ですよ。丁度きりも良かったので」

「ちょっと俺は差し入れ買ってくるよ。二人とも欲しいものとかある?」

「いやいや、大丈夫ですよ」

「まぁまぁ、邪魔しちゃったし、二人とも頑張ってるからさ。遠慮しないでいいよ」

「じゃあ、何かチョコ系のお菓子で」

「私はプリン!」

「了解」


 俺と七海は二人に欲しいものを聞くと下に併設されてあるコンビニに向かった。

 俺たちは話し合ってチョコのお菓子とプリンをそれぞれ二つずつと適当な飲み物を買って先ほどのスペースに戻る。


「買ってきたよー!」

「ありがとうございます」

「ありがとー」

 

 二人はそう言ってコンビニの袋を見つめる。


「はい、どうぞ」


 俺が袋から買ってきたものを取り出す。取り出すと、二人はキラキラと顔を輝かせてそれを見ていた。こんな所を見るとやっぱりまだ中学生なんだなって微笑ましくなった。


「プリン、私も良いんですか?」

「うん。大丈夫だよ」

「ありがとうございます。では、いただきます…!」

「いただきまーす」


 この後は、みんなでお菓子をつまみながら雑談して楽しく過ごした。これで少しでも二人の緊張とかがほぐれてくれたのなら良いのだが。


「じゃあ私たちはもう行くね!」


 結局、俺たちがそこを去ったのは差し入れをしてから1時間後だった。

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