初詣にて
七海から連絡がきたのはそこから1時間と少し経った後だった。俺は連絡が来てから直ぐに家を出た。
彼女の家の前に着き、七海に着いたと連絡する。メッセージを送ると直ぐに玄関が開き、七海が出てきた。と思ったら出てきたのは七海ではなく、彼女によく似た女性。七海と比べて背が大きく、スレンダーで七海を大人っぽくさせたような人だった。
「明人くん、いらっしゃい」
「ご無沙汰しています、明菜(あきな)さん」
「お義母さんでいいのよ」
そう言う彼女は七海のお母さんだ。
「七海ならリビングで待ってるわよ」
明菜さんはそう言うとそのまま手を振ってそそくさと行ってしまった。どこかつかめない人だ。
僕は玄関を通ってリビングへのドアを開けると、そこには綺麗な着物を身に纏った七海がいた。
リビングで佇む彼女は高嶺の花のような、モデルの様なそんな雰囲気があった。
七海の着物は青がベースで、そこに華やかな花などがちりばめられているデザインであった。それに加えて普段はそんなにしない化粧もされていて、髪には花の髪飾りをつけていた。彼女の佇む姿は可愛いよりも綺麗という言葉が適切だった。
きっと明菜さんはこの七海を見せたくて玄関を開けてくれたのだろう。
「明人!いらっしゃい。早かったね!」
「お邪魔します。七海、着物すごく似合ってるよ。綺麗だよ」
「ありがと!」
俺が話しかけると、先ほどの少し近寄り難いようなそんな雰囲気は霧散していって、いつもの彼女に戻った。
「じゃあ行こっか!」
七海はいつもの笑顔で俺の手を引いて玄関を目指し歩き出した。
家を出て、神社の近くまでやって来ると、そこには初詣に来たであろう人でごった返していた。
「やっぱり人多いねー」
「そうだね、はぐれないように気を付けてね」
「うん!」
そう言って彼女は手を一度離して、腕を組んでからまた手を繋いだ。
「えへへ」
そうして俺たちは神社へ続く階段を上り始めた。
階段を登り切り、神社に到着すると神社には先ほどよりもたくさんの人がいた。
「取り敢えず参拝するか」
「だねー」
手水舎で手水を終えて、拝殿へ向かった。
賽銭箱の前に出来ている列に並んで少し待った後、俺たちの番が回ってくる。
七海と一緒に賽銭箱に十円玉と五円玉を入れて鈴を鳴らし、お詣りを済ませた。
「明人は何お願いしたのー?」
「んー?」
俺たちはお詣りを済ませた後、おみくじを買いに来ていた。その並びの待ち時間。そう七海が聞いてくる。
「内緒」
「えー、なんでー?」
「願い事を言うと叶わないってよく聞くからさ」
「確かに…。じゃあ私も内緒!」
そんなことを話している内におみくじの前までたどり着いた。おみくじには通常のものに始まり、恋みくじなどいくつかの種類があった。七海にどれを引くかを聞いたところ、明人がいるから恋愛運はマックスなのです!といって大きなポップがあるおみくじを引きに行っていた。最近のおみくじにはこんなポップがあるものなのか。そんなことを考えながら俺も七海に次いで同じおみくじを引いた。
「どうだった?」
「大吉!」
ニコニコとした笑顔でこちらに見せてくる。
「明人は?」
俺は何も答えずにおみくじを見せる。
「ひら?」
「たいらだそうだ」
おみくじには平の文字とその上に振り仮名として、たいらと書いていった。調べたら特定の神社で入っていて、この神社は最近、新しく平がでるおみくじを追加したらしい。
「これはいいのか悪いのか分からないね…」
「うーん、まぁ悪いことは書かれてないからいいか」
「悪くても大丈夫だよ!大吉の私が傍にいるんだから!」
そう言ってまたも腕に抱き着いてくる。俺は彼女の頭を撫でると、
「んぅ~」
声を出して手に頭を押し付けて来る。そんな彼女にドキッとして顔をつい逸らしてしまう。何度経験してもドキドキしてしまう。
「…あきと?」
彼女は薄目で俺を見上げてくる。
「いや、何でもないよ。そろそろ帰ろうか」
「うん!」
俺たちはそのまま帰路に着いた。
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