年越しにて
台所には二人で行ったものの、七海の方が料理が得意なので、俺はそばを茹でて、彼女がつゆを作っていた。
「できたよー」
「こっちもあと少しで茹で終わるよ」
午前中に少し仕込んでおいてあったこともあり、スムーズに料理は終わった。
「おー、美味しそう」
京が匂いにつられて台所にやって来る。
「おにぃは冬なのになんか暑そうだね」
汗をかいてる俺を覗き込みながら、にひひと笑う。
「ほっとけ」
「あう」
京の頭に軽くチョップする。
「よし、できたぞ」
時刻は20時30分。夕飯としては遅いが、年越しとしては早い時間帯。
俺たちは食卓を囲んでいた。テレビには年越しの恒例の音楽番組が流れている。
「ん~。美味しい!」
「うん、出汁も利いてて美味いな」
「よかったー」
みんなお腹がすいていたのか、割と多めに準備していたご飯は、ペロッと平らげてしまった。
「ふぅ…お腹いっぱいだー」
「食べて直ぐ横になると牛になるらしいぞ」
「牛になってもお世話してね」
彼女がソファーに寝っ転がっているところを注意するもそう返されてしまう。
「まぁまぁ、年末だし」
そう言って七海もソファーに腰を落とす。
「ほら、あきともこっちおいで」
彼女は自分の隣のスペースをポンポンと手で軽く叩く。京が横になっているせいで少し狭いのだが。俺が座ると、彼女は俺の肩に頭をのせる。俺は七海の肩に自身の腕を回し、より密着した体勢になる。
「なんか疎外感感じるんですけどー」
そう言って京は寝っ転がったままどんどん体をずらして七海の膝の上に頭をのせる。膝枕の状態に移った京は満足した笑みを浮かべる。
「ふふふ…」
そんな京に七海は笑いながら頭を撫でる。
時刻は23時57分。
「おにぃ達は初詣とか行くの?」
「んー、どうしよっか」
「私は行きたい!」
「じゃあ行くか」
「京はどうする?」
「んー、今回はいいかな。人混み得意じゃないし。風邪とかインフルとかもらったら怖い。ほら、あそこ混むからさ」
そう俺たちの地元の神社はこの辺りでは有名な神社で、毎年初詣の時期になると人であふれかえっている。
「じゃあ、京ちゃんの分もしっかりお願いしてくるね!」
「うん。よろしくね。おねぇ」
そう言って彼女らは顔を合わせて笑顔を浮かべる。
時刻はもう24時に迫ってきていて、テレビではカウントダウンが始まるところであった。
「もうカウントダウン始まるね」
「お、もうそんな時間か」
みんなテレビの方に視線を向ける。丁度その時、カウントダウンが始まり、テレビは最高に盛り上がっていた。カウントダウンは10から始まり次々と数を数えおろしていく。カウントダウンの数字が3になった頃。
「あきと、京ちゃん。今年すごく楽しかった!ありがとね!」
「こちらこそ、すごく楽しかったよ」
「うんうん」
俺に同意するように京もドヤ顔で頷く。
カウントダウンはもう間もなく終わろうとしている。
『0!』
テレビの中で紙吹雪やらなにやらが出てきて、年が変わったことを知らせる。
「みんな、明けましておめでとう。今年もよろしくね!」
「うん。明けましておめでとう。今年もよろしくお願いします」
「あけおめ、ことよろー」
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