年明けにて

 クリスマスから数日。それからというものの、彼女は会うたびに俺がプレゼントしたスヌードを着けてきてくれ、俺も七海がくれたマフラーを着けて会いに行っていた。

 そんな俺たちは今、一緒に年越しをするべく、俺の家のリビングにいた。

 夕刻、俺と七海はソファーに座り、テレビを見て過ごしていた。京はまだ勉強から帰ってきていない。いい時間なので、もうそろそろ帰って来ると思う。


「なぁ、七海?」

「ん、なに~?」


 俺は先ほどからソファーでダラダラしている彼女に話しかける。


「いやさ、大事にしてくれているのは嬉しいんだけどさ」

「うん?」

「流石に家にいる時はスヌード、外さない?」


 そう、彼女は家に入ってからもずっとスヌードを着けたままなのである。


「えへへ」

「いや、えへへじゃなくて…」

「明人から貰ったものはずっと持ってるよ!ほら!」


 そう言って俺があげた指輪がチェーンに通されているネックレスを首元から取り出す。


「まぁ、それは俺も持ってるけど」

「着けてはくれてないんですかー?」


 俺の膝を枕に、ソファーにだらけながら顔をこちらに向けて、ジト目で見てくる。


「家では流石に着けてないよ。外出る時はいつも着けてるけどね」

「えー」


 文句を言いながらも口許は緩んでいて、手を伸ばして俺の髪の毛を触る。


「んふふ。少しごわごわするね」


 彼女は眼を細めてそう言う。そして上機嫌なようで、頭を左右に揺らしてゴロゴロしている。


「なんか今日はテンション高いね」

「今日は年明けもずっと一緒にいれるからねー」


 そう言いながらまだ、彼女は手を伸ばして俺の髪の毛を触っている。


「ねね」

「ん?」


 彼女は手を少し先ほどの位置からずらし、俺の両頬にあてる。丁度両手で顔を固定している感じだ。


「ちゅー、して?」

「へ?」

「ね?しよーよ」


 そう言って彼女は眼を閉じる。俺はそのまま彼女と唇を合わせる。


「ん…えへへ…」


 唇を離して彼女の顔を見ると、にへらと彼女は笑う。


「もういっかい」

「もう一回?」

「うん。もういっかい。だめ?」


 俺はまた彼女の唇に自分の唇をおとす。


「ねね、もういっかい」


 そんなことを2、3度繰り返している内に、玄関の扉が開く音がする。


「ただいま~」


 少ししてリビングに京が入ってくる。


「京、おかえり」

「ただいま、おにぃ。あれ?おねぇは?」

「ここにいるよ~、おかえり~」


 そう言ってソファーの背もたれの部分からはみ出るように手を振る。


「ただいま、おねぇ。またいちゃついてるの?」

「うん。あたりまえだよ~」

「あ、おにぃ。頼まれたもの買ってきたよ」

「ありがとね」


 京はこう言って買い物袋の中からそばを取り出す。


「これで年越しそばができるね!」

「ぼちぼち準備し始めるか」

「うん。一緒につくろ!」


 そう言って俺たちは台所に向かった。

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