試験後の夜の一幕にて

 目を覚ますとそこは自分のベットの上だった。寝ぼけ眼を擦りながら上体を起こす。リビングの方からトントンと何かを切る音がする。何やらご飯を作ってくれているらしい。俺はそのままベットから降りてリビングに向かった。そこには予想通りの人物がいた。彼女はこちらに気付くと包丁を置いてこちらを見る。


「お!あきと、おはよー。今、勝手に夜ご飯作ってるけどお腹減ってる?」

「うん。おはよ。ありがとね、お腹はぺこぺこだよ」

「えへへ、ならもっと頑張って美味しい料理を作るよ!待ってて!」


 彼女は気合を入れるためなのか、可愛く両手をぐっと握った。


「何か手伝うことある?」

「ん?今のところは大丈夫かな。ありがとね!」

「何かあったら言ってね」

「うん!」


「はい!できたよー!唐揚げです!」


 そこからしばらく、彼女は唐揚げを食卓に持ってきた。


「お、美味そう。配膳手伝うよ」


 そう言って俺は七海と一緒に、ご飯や味噌汁などを食卓まで運ぶ。

 そのまま美味しく唐揚げを頂いた。


「片付けは俺がやるよ」


 夕ご飯を食べ終わると俺はそう申し出た。流石にご飯を作ってもらって片付けまでも彼女にやってもらうのは心苦しかった。


「私がやるよ?」

「いや、いいよ。ご飯作ってもらってるし、テレビでも見て休んでて」


 俺はそのまま手早く洗い物を終えると、ソファに座っている七海の頬に後ろから冷えた手で触れる。


「あきとー?洗い物を終わっ…ひゃ!」


七海はびっくりした様子を見せると、


「もー!何するの?」


なんて言いながらも少し嬉しそうにこちらを振り返る。


「いや、最近触れ合えていなかったからね」


 俺は七海の頬をふにふにしながら話す。


「ふふっ、まったくしょーがないなー。あきとくんはさっきの膝枕じゃ足りなかったのかにゃー?」


 七海は全く振り払う様子もなく、左右にゆらゆら揺れながらニヤニヤしている。


「まぁ…そんなところ…」


 俺は少し照れくさくて少し赤くなった顔を見られないように七海の顔をテレビ側に向けた。七海はしばらくじっとしていたがある時、何を思い立ったかいきなり立ち上がり俺の目の前まで来て俺の胸に顔を埋めた。


「私も…充電、させて…?」


 俺は彼女をそっと抱きしめると、彼女もまた背中に腕を回した。

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