ふたりでの登校にて

 俺の風邪が治った次の日。

 俺と七海は一緒に登校していた。昨日、七海が帰ってすぐにベットに入り今日、目が覚めたらもうダルさすらも無くなっていた。かくして俺は宣言通りに1日で風邪を治したのだった。


「本当に明人が治ってこうやって二人で学校に行けて良かった!昨日は本当に寂しかったんだから…」

「心細い思いさせてごめんな」

「大丈夫だよ!私も成長しているのです!」

「それは心強いな」


 そう言う七海は両手で拳を握り、ふんっとドヤ顔をする。そのいじらしさについ反射的に頭に手を置いてしまう。


「…んっ」


 七海は頭に手を置かれると、撫でられるのを待って目を閉じる。俺はそれに応じるように頭を撫でた。


「んふー」


 七海は撫でられると、気持ちよさそうに軽く頭を揺らしている。しかしここは通学路で、ずっとこの道の往来にいるわけにもいかないので少し撫でるとすぐに前に進もうとする。


「あっ…」


 撫でるのをやめると七海は残念そうな声をあげながらこちらを見つめる。


「続きは帰ったらね」

「えーー…」


 七海は不満そうな声をあげると、ジト目をこちらに向けてくる。


「私頑張ったよ」

「うん」

「ご褒美があってもいいんじゃないかなって私は思うのです」

「そうだなぁ…」

「でもまぁ確かにずっとここにいるわけにもいかないのも分かるので…」


 七海は一歩こちらに近づいて直ぐ側に来ると腕を広げる。


「ぎゅっとして?」

「こ…ここで?」

「うん」


 俺が少し躊躇っていると、


「はやくー」


急かしてくる。ええい、ままよと彼女を抱きしめる。


「んぅ〜…」


 抱きしめると七海はこちらの胸に顔をグリグリとしてくる。しばらくそれを続けてひと通り満足すると顔を上げる。


「私の我儘聞いてくれてありがとうね」


 そう言うと七海は、俺の唇にキスをして微笑む。その時の七海の表情はとても大人びていて俺はその場で固まってしまった。


「ほら、行こ!」


 そんな俺を七海はいつものように手を引っ張って学校に向かって走り出した。


「そんな急ぐと転ぶぞー」

「転ばないよ!」

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