ひとりだった教室にて
「なるほど、そうなんですね」
私は円香ちゃんに事の顛末を話した。私が考えている事を含めて。
「別にいつも通りでいいんじゃないですか?」
「え?」
「仲良くない人には今までやっていた通りの対応でもいいんじゃないですかってことです」
「でも、みんなはもう明人の前での私も知ってるから…」
「別に人によって態度が変わるなんて普通ですよ」
円香ちゃんは微笑みながら俯いているこちらの顔を覗き込む。
「だって、そこら辺にいる知らない人と家族で話す時の態度って同じじゃないですよね?」
「うん…」
「そこまでにはいかないまでも、少なからず皆んなにもそう言う事はあると思います。なので別にいいと思いますよ。それが自分を守るものであればさらに」
「そう…かな。そうだよね。うん」
「もう大丈夫ですか?七海は気負う事が多いですからね。もっと気楽にいきましょう」
「うん!ありがと!」
「どういたしまして」
問題が解決した頃には二人はもう学校に着いていた。
「ではまたお昼に」
「うん。またね!」
円香ちゃんと別れて教室に向かう。
「すーー、はーー。よし!」
教室の前に着くと私は大きく深呼吸すると、ドアに手をかけて教室に入る。入ると教室の中にいる人からの視線が集まる。私はその視線に一瞬緊張してしまう。しかし、私はもう大丈夫だ。机の間を縫うように進み、窓側の端っこである自分の席に座る。座ると直ぐにホームルームが始まり、驚くほどにあっさりと時は過ぎた。気がつくと午前の授業は終わり、時は昼休みになっていた。
「ねぇねぇ、片瀬さん。今日は日野くんいないんだね。」
「はい。それで用事は何ですか?」
席の近い見覚えのあるクラスメイトに話しかけられる。私はそれに一杯一杯になりながらも何とか返事をする。
「えっとさ、私たちとご飯一緒に食べない?もちろん良ければ、だけど」
そう誘われた時。ふと正面、教室のドアに円香ちゃんが見えた。また深呼吸をすると、私は話しかけてくれたクラスメイトに向き合う。
「すいません…。ご一緒したいのは山々なのですが、今日はお友達と食べる約束があるので。また機会があったら一緒に食べましょうね」
そう言って私は教室を後にした。
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一方その後の教室では。
「ねーねー、やっぱり断られた?」
「……」
「どしたの?」
そう言って話しかけているのは先ほどのクラスメイトの友人。先ほどの彼女は暫く惚けていると、はっと気がつく。
「片瀬さんやっぱり、日野くんが居ないと少し気まずいよね〜」
「…そうでもないかもよ」
「え〜?そうかな?」
「うん。間違いない」
「なんで?教えてよー」
「んー?やだ」
「えー!」
そう言った彼女は見たのだ。人見知りながらも頑張ってクラスメイトと関わろうとした少し不器用な彼女の笑顔を。
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