ひとりでの登校にて

 10月も終わり、11月に入ったある日。

 季節の変わり目であるこの時期で、いきなり寒くなった日々に油断していた俺は風邪をひいてしまった。しかも運悪く、その日は平日で学校を休みざるを得なかった。登校の時にいつも迎えにきてくれている七海には、


「ゴホッ、ごめん七海。風邪ひいて今日は学校行けなさそう」

「え…、じゃあ私も休む」

「いやいや、学校はきちんと行ってね」

「でも…」

「七海にうつしたくないんだ」

「…」

「明日には治すから」

「…分かった。がんばる」

「じゃあ、気をつけてね」

「うん…」


そう言った。

 さぁ、明日までにはしっかり治さなければ。七海は大丈夫だろうか…。


―――――――――――――――――――――――――


 いつも通り明人の家に明人を迎えに行った時だった。


「ゴホッ、ごめん七海。風邪ひいて今日は学校行けなさそう」


 明人にそう告げられた時、私の頭は真っ白になった。今までも明人がいない時はあった。しかし、そのどれもが友達と二人など狭いコミュニティであった。だが、今回は学校という大きなコミュニティで、仲良くない人とも関わらないといけないわけで。


「どうしよう…」


 前の状態に戻ったと言えばそうなのだが、もう前とは違う。周りの私への印象も180°変わっていると思う。私は今、どうすればいいか分からない。そんな不安に汚染された胸中のまま私は学校へ足を進めるのだった。

 距離も時間もいつもの何倍にも感じられる通学路をしばらく歩いて学校へ近づくと、ちらほらとうちの学校の生徒を見かけるようになる。すれ違う人たちがこちらを見ている気がして、落ち着かない。あれ?こんなに人の視線感じてたっけ。


「七海、おはようございます」

「ひゃ!」


 周りに気を張っていた私は後ろから突然話しかけられ、驚いて腰を抜かしてしまった。


「えっと…、ごめんなさい。大丈夫ですか?」


 そう言って手を差し伸べてくれた人を見て、私はほっと安堵した。


「円香ちゃ~ん!」

「えっ?なんかありました?」

「明人が今日風邪ひいて来れないって…」

「そっか…、それで1人だったの。取り敢えず一緒に学校行きながら話しましょうか」

「うん…」

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