雑貨屋にて
可愛いぬいぐるみを見ている鶴見先輩は棚にあるぬいぐるみを時折、手にとっては抱きしめたりしてずっと愛でている。
「どうする?声かける?」
「邪魔するのも悪いし戻ろうか」
「え?うん」
このまま見られているのは可哀想かなと思い、戻ろうと踵を返そうとした時、
「…日野くんと、片瀬さんか?」
声をかけられた。
「先輩、こんにちは!」
「こんにちは」
「えっと、見てたか…?」
「その…はい」
「そうか…」
先輩はぬいぐるみを腕に抱えながら遠い目をしていた。
しばらくの間、俺たちは静寂につつまれると思っていたがその予想を裏切ったのは七海だった。
「先輩!その子可愛いですね!」
「え?」
七海は先輩の腕に抱えられている犬のぬいぐるみを見ながらそう言った。先輩は一瞬何を言っているのか分からない様子で固まっていたがすぐに、
「変だと思わないのか?」
「…?なんでですか?」
「いや、自分で言うのもなんだがぬいぐるみを愛でてる、なんてキャラじゃないじゃないか」
「そうですか?私は女の子ってみんな可愛いもの好きでもおかしくないと思いますけど」
そんな七海の言葉に、先輩は少しキョトンとするとクスクスと笑い。
「すまない、先程のは忘れてくれ。この子はな、あるシリーズの子で昔からすごく好きなんだ」
「あ!そのシリーズ知ってます!可愛いですよね」
「お!そうか、ならこの子は知っているか?」
そう言い2人は大盛り上がりでぬいぐるみコーナーの方へ行ってしまった。仲良いことは良いことなのだが。置いていかれて少し複雑な気分である。そんな俺は一人で置き物のコーナーへ行き観賞用サボテンを見ていた。
少し時が経ち七海が戻ってくると、その彼女の腕には猫のぬいぐるみが抱えられていた。
「ごめんね!一人にしちゃって…」
「そんな長い時間でもなかったから大丈夫だよ。というか、そのぬいぐるみ買ったの?」
「うん!なんか可愛くてね〜。つい買っちゃった」
「良いじゃん。あれ?先輩は?」
「なんか、この後に急ぎの用事があるって帰っちゃった。明人によろしく伝えてくれだって」
「なるほど。まぁそろそろ暗くなるし俺たちも帰るか」
「えー、まだ大丈夫だよ」
「今度また来ようよ、ね?」
「むー、絶対だよ?」
「もちろん」
そうして俺たちに行きよりも1匹?仲間が増えて帰るのだった。
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