花火にて
俺たちは花火が良く見える場所を求めて、河川敷の上の道外れの周りがよく見渡せる広場へ辿り着いた。
「ここなんかよく見えないか?少し人はいるけど」
「良いですねここ。確かによく見えそうです」
そして、俺と七海は広場の芝生に腰をおろす。
「せっかくなので、何か食べながら見ましょうか。翔太、行きましょう」
「おう。明人達はなにか食べたいものあるか?」
翔太と青葉さんだけは座らずにそう言った。
「いいのか?」
「任せとけ!二人はゆっくり待っていてくれ」
「じゃあ、たこ焼きをお願い」
「あいよ、片瀬さんは何にする?」
「えっと…、じゃあ焼き鳥のももを塩でお願いします」
「了解」
「では、行きましょうか」
「ちょっと待ってくれよ」
そう言って翔太は少し早く行った青葉さんに早足で追いつき、二人は歩いていった。
「あの二人の距離感って何か違うよね?」
「そうだな。というか、青葉さんの態度が遠慮がない感じだよね」
「円香ちゃんも私と同じで人見知りだからね。ずっと付き合いがあった和泉くんとはとっても仲がいいんじゃないかな」
「確かに、勉強界の時とか打ち上げの時もそうだったよな」
「二人は付き合ったりしてないのかなぁ?」
「んー、だったら最初の時に彼女だって言うと思うからまだなんじゃないか」
「そっか。友達以上恋人未満って感じかもね」
「そうかもね」
「私たちも負けちゃいられないねー?」
そう言って彼女は俺の肩に頭を預けてくる。
「別に勝負はしてないでしょ?」
「そうだけど…。負けちゃいけないの!」
「そうですか」
「そうなのです」
「じゃあ負けないようにしよっか」
「え?」
肩に乗っている彼女の頭を俺の膝の上に乗せて、そのまま彼女の唇にキスを落とす。彼女は最初は驚いたように目をぱっちりと開いていたが、やがて目を閉じてもう一回キスを要求する。そんな彼女にもう一度キスをする。すると彼女はにへらっと破顔して、俺の腹の辺りに顔を埋める。
彼女が落ち着いて膝枕の体勢に戻ると、そのタイミングで翔太達が戻ってくる。
「七海、膝枕ですか。二人とも相変わらず甘々ですね」
「明人、見せつけてくれるな」
俺たちは少し恥ずかしくなって、笑い合って元の体勢に戻る。
「ほいこれ、頼まれてたもの」
「ありがとな」
翔太達は俺たちに食べ物を渡すと腰をおろす。
「いやー、花火に間に合ってよかったぜ」
「そうですね」
「時間的にもう始まってもおかしくないけどね」
そんなことを話していると、
ひゅ〜〜…、ドンッ
と大きな音がして、空に花が咲いた。
「わぁ、きれい…」
最初の花火を皮切りに、次々と花火が打ち上げられる。
「すごいですね」
「本当にすごいな…」
「ねぇ!来年もまたみんなで来よ?」
「それ、いいね!」
「いいですね。絶対に行きましょう」
「また、行きたいな」
俺たちは延々と打ち上がる花火に食べるのを忘れて、ただ目を奪われていた。
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