夏祭りにて

 あれから1週間後、俺は夏祭りの待ち合わせで隣町の駅に訪れていた。

 駅に着くと、そこにはもう浴衣を着た二人がいた。青葉さんの浴衣は、オレンジ色で椿が所々に散りばめられているデザインで、一方、七海の浴衣は白地に青系の牡丹が描かれていたデザインだった。彼女たちが笑い合いながら話しているところを見ると本当に仲が良さそうだ。


「お待たせ」


 俺は二人に声をかけると、青葉さんはペコっと頭を下げて七海は目を輝かせてこちらに駆け寄ってくる。


「ねね!浴衣どうかな?」

「すごく七海のイメージに合ってるよ、似合ってる」

「えへへ」

「青葉さんも似合ってるよ」

「あ、ありがとうございます」


 七海は顔を緩ませながら、青葉さんは少し恐縮したように返事をした。


「あれ?翔太は?」

「和泉くんなら飲み物を買いに行きましたよ」


 そんな話をしていると飲み物を持って翔太がやってきた。


「お!明人来たのか。よっす」

「おう」

「じゃあ、みんな揃ったし行くか」


 祭りの会場である河川敷の方へ向かうと、まだ早い時間というのにもう人で溢れかえっていた。


「うへー。人がいっぱいだねー」

「七海は人混み得意じゃないもんな。ほれ」


 そう言って片方の手を差し出す。


「うん!得意じゃない!」


 飛びつくように両手で俺の手を握ってくる。その様子に俺は可愛くてつい笑ってしまう。


「両手だと歩けないでしょ?」

「あぁ…、そうだった。嬉しくてつい」


 そう言って彼女は手を繋ぎ直す。


「じゃあ行こうか」

「うん!」


 俺たちは少し前にいる翔太と青葉さんに追いつくべく歩き出した。


「ねぇ、焼きそばあるよ!」

「美味しそうだね、食べよっか」

「ほら、あーん」

「あーん!」


 通り掛けの出店のご飯を食べてみたり、


「おっ!射的あるじゃん!」

「やりますか?」

「やろうぜ!」


射的などをやってみたりして周りが祭りで盛り上がっている中、俺たちもまた祭りを楽しんでいた。

 ひと通り屋台を楽しむと、


「ねぇ。そろそろ、花火の場所取りに行かない?」

「もうそんな時間か」

「そしたら早めに行きましょうか」

「人多いしな〜」


俺たちは人をかき分けて花火が良く見える場所を探し、移動した。

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