ベットにて
扉の前に腕に枕を抱きながら一緒に寝にきたと言う彼女は風呂上がりなのか普段よりも色っぽく見えた。取り敢えずそのままにするのもあれなので、彼女を部屋に案内する。
七海は部屋に入ると大人しくベットの縁にちょこんと座る。
「えっと…。一緒に寝るって京と何かあったのか?」
「…京ちゃんが夜まで勉強してるから。私が邪魔するといけないかなって…」
「そ、そうか」
彼女はそう言うもまだ俯いたままである。少しの沈黙の後、七海がパタッとベットに倒れる。
「ねぇ、眠いから早く寝よ?」
「いや、寝るなら京の部屋から布団持ってくるよ。俺が布団で寝るからさ」
「…京ちゃん集中してるから部屋に入るのは悪いよ」
「少しぐらいなら大丈夫じゃないか?」
そう言うとまた沈黙が流れる。
「ごめん…。嘘ついた」
「え?」
またも沈黙を破ったのは彼女だった。
「本当は私が明人と一緒に寝たかったの…。京ちゃんは私の背中を押してくれただけ」
「布団持ってきて別々じゃ嫌か?」
「ベットで一緒がいい」
そう言う彼女は、ベットに寝そべりながら俺の枕に顔を埋めている。自分の枕は腕に抱えたまま。
「ねぇ、ねよ…?」
彼女はベットの奥につめると、隣に自分の枕を置くと手でポフポフと叩く。
俺はまだ呆然と立ち尽くしていた。
「明人は一緒…、いや?」
「いや、嫌じゃないよ。でも、いいのか?」
「うん」
彼女にここまで言わせてしまった。
俺は部屋の電気を消して、ベットの中に入る。中に入ると途端に彼女は俺の体に抱きついて、俺の背中に額をグリグリしてくる。暗い、静かな部屋に布の擦れる音とお互いの息と鼓動だけが聞こえる。背中には女の子特有の柔らかい感触が伝わってきて、それを感じるたびに俺の心臓は鼓動を激しくする。きっとこの鼓動は彼女にも聞こえているのだろう、彼女の鼓動も激しくなるのも分かる。
「こっち向いて?」
「うん」
俺は彼女の方を向くと、彼女は俺の胸元あたりから俺を見上げる。彼女のシャンプーだろうか、ボディーソープだろうか風呂上りのいい匂いが俺の鼻孔をくすぐる。そんな彼女の顔は赤くて、目は潤んでいる。そこからはお互いに抱き合い、顔を近づけていつも通りの唇が触れるだけのキスをする。
「ねぇ、もっと…」
そんな彼女の我儘に俺の抱きしめる力が強くなる。彼女もそれに応えるように抱きしめる力を強くする。
そうして二人っきりの夜はどんどん更けていくのだった。
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