カフェにて

 彼女に手を引かれて辿り着いたのは、駅から少し外れた場所にあるカフェだった。最近オープンしたのだろうか、見た感じ店は新しく、落ち着いた雰囲気があった。


「入ろ!」


 そう言う彼女につられてカフェに入る。

 中に入ると店内は落ち着いた雰囲気だった。しかし、店内のお客さんは皆とても若く、尚且つカップルが多かった。多いというよりお客の殆どがカップルであった。


「すごっ」

「えへ〜。すごいでしょ!今カップル割っていうのがあるらしくて、今すごい話題なの!」

「それにしても、カップルしかいないな」

「なんでも、カップルでここの限定ドリンクを一緒に飲み干すとずっと一緒にいられるんだって!」

「一緒に飲み干すってどうするんだ?」

「えっとね…。わかんない!まぁ、頼めば分かるでしょ」


 そうこうしていると若い大学生だろうか、おねえさんが席に案内してくれる。席に着くと机の上のメニュー表を開く。


「何にするー?」

「んー。俺はこのナポリタンにしよっかな」

「ナポリタン!後で一口ちょうだい!」

「七海は何にするんだ?」

「私はこのサンドイッチと…。あとこれ!カップル限定、甘々ラブラブジュース!」

「すごい名前だな」


 注文を終えて、すぐに飲み物が届く。カップル限定、甘々ラブラブジュースと称されたその飲み物は、小さい金魚鉢みたいな容器に、薄ピンク色のジュースにハートや星に形取られた果物などがアクセントととして入っていた。極め付けには、飲み口であるストローは二つのストローを合わせてハート型に形取られて二人で飲めるようになっていた。

 続いてナポリタン、サンドイッチと間髪入れずに届いた。


「これ、思ったよりすごいね…」

「そうだな…」


 そこからは、食べさせ合いながら食事を進めてお互い飲み物が欲しくなった時だった。七海が口を開く。


「じゃあ、ちょっと恥ずかしいけど…飲もっか!」

「そ、そうだな」


 この容器は真ん中が大きく膨らんでいて、そこと比べて上の方が絞られている。そのためお互い一緒に飲むには顔をかなり近づけなければならない。お互いに、まるで初めてキスするようにゆっくりと顔を近づけていってやがて唇がストローに達する。そこからは早かった。二人とも雰囲気がそうしたのか顔を真っ赤にして、ただジュースを飲む事に必死になってしまった。そして気づいた頃にはジュースは無くなってしまっていた。


「えへっ!飲み終わっちゃった…ね?このままずっと一緒にいられるかな?」

「うん…。ずっと一緒にいよう」


 そうして二人とも赤くなったお互いの顔を見やり、笑い合うのだった。

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