第2話

「紡木」と紹介されたその教育実習生は、海外留学の経験があるとかで流暢な英語を披露してみせ、本場の英語だからと水野が早々と授業をさせた。

直斗が頬杖をつきながら、何気なく紡木を見つめる…。


──キレイな顔してんな……。


真っ白い肌に大きな印象的な瞳。

真っ直ぐ通った鼻筋と赤い唇……。


───女みてぇ…………。


何処か遠くの血が混ざっている様にも見える。

直斗がぼんやり考えていると、紡木がこちらを見て目が合った。


─────「クスっ」─────


また笑った……。

カッと頭に血が上る…。


──さっきから人のことバカにしやがって……


直斗が立ち上がり教室を出ようとすると


『なにかありましたか?』


紡木が英語で質問する。

教室がザワつく……。


「藤井!席につけ!」


後ろで見ていた水野が怒鳴った。

全て無視して入口に向かう直斗に


『私の授業が気に入りませんか?』


再び紡木が英語で問いかける。

出る直前直斗は立ち止まり


『俺が気に入らないのはあんただよ』


流暢な英語で答えると水野の制止も聞かず教室を出ていった。




昼休みになると裏庭で昼寝をしていた直斗の顔に影か掛かり、目を開けようとした途端額に強い衝撃が走った。


「痛ったっっ!!」


直斗が起き上がり振り返ると、彼女の莉央が立っている。

莉央の後には呆れ顔の康平もいる。


「またやったって!?」


莉央が直斗を睨みつけると、直斗は康平を睨みつけ


「…言いつけたな……」


と、言った途端…また額を叩かれた。

しかもさっきの衝撃よりまだ強い……。


「───!……」


直斗は額を無言で押さえた。


「……莉央ちゃん……マジで痛いから…」


手を離すと額が痛々しい程真っ赤になっている。


「本気でぶってるんだから痛くなきゃ困るでしょ!」


怒りながら莉央が直斗の後ろに座り込んだ。


「一緒に卒業しようって約束したよね!?」


「莉央、大袈裟」


笑いながら莉央の膝に寝転がる。


「大袈裟じゃないよ!もう!」


口では怒っているが、自分の膝の上で目を瞑る直斗の髪を莉央が優しく撫でる……。


「直斗は気が短か過ぎなんだよ」


そう言いながら康平も芝生に座り込んだ。


──そんなこと言われなくても解ってる…

………バスケを辞めてから何をしていても


─────イライラする……。


「直斗……一緒に卒業しようね……」


莉央が寂しげに呟いた。

直斗は目を開けしばらく莉央を見つめると、フッと笑い


「じゃあ……キスしてよ……」


起き上がり莉央の頬に手を当てそっとキスをした。


「…………お前ら…そういうのは俺がいないトコでやってくんねぇ?」


康平が呆れながら「やってらんねぇわ」と寝転がった。




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読んで下さりありがとうございます。

土日のみの更新になります。

宜しければまた遊びに来てくださいね。


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